温泉と銀世界…福島交通飯坂線は冬のローカル線のすばらしさが詰まっていた
南田裕介です。雪があまり降らない奈良県で生まれ育った私は、冬になると雪を見に東北に行きたくなります。
今回は東北新幹線で福島県へ雪見列車旅。目指す路線は福島駅と飯坂温泉をつなぐ福島交通飯坂線。実は私、乗るのは初めて。初乗車はワクワクしますね。
ローカル線の車窓からはどんな風景が広がるでしょうか。さあ冬の福島に出発です。
JR東京駅
東北新幹線ベテランE2系で福島へ
JR東京駅から東北新幹線やまびこでJR福島駅に向かいます。
乗った車両はE2系です。デビューして25年ほど。ずっと長い間お客さんを運び続けています。
JR大宮駅を過ぎるとどんどんスピードが出てきます。今日はいい天気で、埼玉平野がとても広く見えます。東京駅から約50分のJR宇都宮駅で3分停車。後から来る新幹線に道を譲ります。そんな列車旅も格別です。
福島駅手前のトンネルを出ると一面の雪。テンションがめちゃくちゃ上がりました。
東京駅を出て約90分で福島駅に到着。
ホームに残り少し新幹線を撮影しました。私の他に親子が1組、新幹線を見学していました。大人になっても新幹線を好きでいてね。
雪の中、颯爽と通過する新幹線はめちゃくちゃかっこよかったです。
福島駅
初乗車にワクワク。福島交通飯坂線
福島駅からは福島交通飯坂線に乗り換えです。始発駅である福島駅は、1つのホームの一方を福島交通飯坂線、もう一方を阿武隈急行線が使っています。私は、このようなホームをこれまで見たことがなく、めずらしい光景です。
昔ながらの改札口があり、懐かしい気持ちになります。福島交通のICカード「NORUCA」のカードリーダーもあり、現代と一昔前が共存する面白い改札です。
飯坂線の車両は、もともと関東の東急電鉄で走っていた列車を改造したもの。シートの色など、車内はどことなく東急時代の雰囲気が残ります。
福島駅から約3分、美術館図書館前駅で下車します。
甘食・茶屋 結
絶品スイーツと絶景トレインビュー
駅から徒歩4分ほどの「甘食・茶屋 結」で甘食をいただきます。甘食は小麦粉、卵などで作られたほんのりと甘い焼き菓子。
「甘食・茶屋 結」は甘食の専門店で、かつ、焼きたてを食べることのできるとても珍しいお店です。
そして、こちらのお店の2階からは絶景トレインビューが臨めます。
窓の外すぐ近くに線路があるので、窓側のカウンター席からは走る列車を間近に見ることができます。
看板メニューの甘食をアレンジした「あんバター甘食」(税込220円)は、さくっという歯ごたえに濃密な甘さのあんことマイルドな香りのバターとが絡み、絶品です。
店内の暖炉は、しずかに燃えていて、座り心地が良さそうな低いチェアのテーブル席ではそれぞれのお客さんがゆっくりと時間を過ごしていました。
美術館図書館前駅
趣のある小さな駅から飯坂温泉へ
美術館図書館前駅から旅を再開です。
ホームの支柱には1912年製造の古レールが使われています。
昼下がりの飯坂線はのんびりしていました。車内を車掌さんが行ったり来たり。車掌カバンも現役です。ドアが開いたらすぐホームに降りて定期券の確認や乗車券の回収をします。私が乗ったことのあるローカル私鉄の中では、とても珍しい光景です。
美術館図書館前駅を出ると列車は右手に福島市のシンボル・信夫山(しのぶやま)を見ながら進みます。もともと路面電車だった飯坂線、その名残でしょうか。小さな駅にも丁寧に停まっていきます。
美術館図書館前駅から約20分で、いかにも終着駅という風情の飯坂温泉駅に到着です。
駅前広場では、雪をかぶった松尾芭蕉像が出迎えてくれました。
飯坂線を思う存分満喫したところで、宿へ移動します。
吉川屋
老舗旅館「吉川屋」で温泉三昧
今回お世話になるのは、穴原温泉「匠のこころ 吉川屋」。
電話でお願いすると、飯坂温泉駅までお迎えの車が来てくれます(迎えは18時まで)。
「匠のこころ 吉川屋」は1841年創業の大きな老舗旅館です。検温と消毒を済ませチェックインの後、部屋に向かいます。
部屋についたらさっそくお風呂へ。とても広くて開放的な大浴場。お湯は自家源泉の弱アルカリ性単純泉。サラサラで真水のような湯ざわりです。大きな窓の外には、ライトアップされた裏の雪山が絵画のように広がっています。露天風呂「かもしかの湯」では、顔だけはひんやりしましたが、温泉があったかいので体中ポカポカになりました。
さて、楽しみにしていた夕食の時間になりました。
どれも手がこんでいておいしいです。珍しかったのが牛肉せり鍋。
とろけるお肉の食感と、せりの野性味のある食感と香り。これが不思議なほどにマッチして絶妙です。
甘鯛の白柚子庵焼きもとろける柔らかさ。
ごちそうさまでした。
せっかくなので、就寝前にもう一度お風呂に入ってから寝ます。おやすみなさい。
気持ちのいい朝です。おはようございます、銀世界が目の前に広がります。
温泉旅館といえば朝風呂も楽しみです。朝食の前に、朝日を浴びた雪山を見ながら、露天風呂「さるあみの湯」につかります。積もった雪を手で触りながらお湯につかる、ぜいたくな時間。心も体も温まりました。
ちなみに貸切風呂「女神の貸切風呂 湯野~YUNO~」もあります。(詳細は公式HPをご確認ください)
家族での利用などにピッタリですね。
飯坂温泉 鯖湖湯
共同浴場で心も体もポッカポカに
2日目は、飯坂温泉の共同浴場巡りをします。宿の送迎で飯坂温泉駅へ戻り、まずは徒歩5分ほどの「鯖湖湯(さばこゆ)」へ。
「鯖湖湯」は 日本最古の木造建築共同浴場として親しまれてきましたが、老朽化により1993年に当時の姿を再現し改築されました。改築しても荘厳なオーラが出ていて、歴史を感じます。
入浴料は200円(税込)。造りはとてもシンプルで、更衣室と浴室に間仕切りがなく、中央にどーんと浴槽があるのみ。
びっくりしたのはお湯の温度です。めちゃくちゃ熱いのです。あらかじめ聞いてはいましたが、こんなに熱いのかと。最初は足だけでも10秒ももちませんでしたが、徐々になれて約20秒は肩まで浸かれるようになりました。地元のお客さんの方言が高い天井に反響する感じが、とても心地よかったです。
長くは浸かれませんでしたがポカポカになり、外に出る頃にはもう一度入りたい気持ちになっています。激辛坦々麺をまた食べたくなるような感覚に似ていますね。
次に向かうのは、鯖湖湯から徒歩約4分の「波来湯(はこゆ)」です。
2011年に改築されたレトロ風の建物は近代的な印象です。入浴料は300円(税込)。適温に調整された温い湯と源泉かけ流しの熱い湯の湯船2つのほか、シャワーも完備されています。
温い湯から入ってみると、ちょうどよい温度です。そして熱い湯に浸かります。やっぱり熱いです。鯖湖湯よりは温度が低めですが、それでも充分熱いです。肌から体の芯にじんわり熱が伝わってくる感じがとても気持ちよく独特です。
スタッフの方に熱いお湯が苦手な方でも浴場を楽しむ方法について聞いてみました。
「まずは足にかけ湯を30杯ほど。その後、肩から30杯ほど。その後頭を洗うなら頭から30杯ほど。そうすればかけ湯だけで血行が良くなりますよ。」
もう一つ教えてくださったのは、地元の方々にとって共同浴場は自分たちの大切なお風呂場だということ。床が濡れているなと思えば自分でモップをかけるし、自然と譲り合ってみんなが快適に入浴していらっしゃると。地元の方々の大切なお風呂に入浴させてもらえることに感謝しながら楽しみたいですね。
ポカポカした体で飯坂温泉駅に戻ります。
飯坂温泉駅
雪と太陽が列車に映って輝きます
すっかり天気も良くなりました。再び飯坂線で福島駅に戻ります。
列車が近づくと改札が開き、ホームに入って列車を待ちます。やってきた列車は、到着後すぐに折り返し発車。
改めて列車の中を見てみると、窓に貼られている沿線の四季を描いたステッカーに、先ほど巡った共同浴場のイラストもありましたよ。
昨日は雪景色でしたが、晴れた車窓もまた格別。
桜水駅で途中下車しました。たくさんの列車がお日様の光を浴びつつお昼寝中。ラッシュまでの時間はこのように車庫でゆっくりと休んでいます。
列車を眺めていると時間があっという間に経ってしまいます。再び飯坂線に乗車し、車内に流れる地元企業の放送広告などを味わいながら揺られていきます。終点福島駅に到着すると、乗ってきた車両は間髪いれず飯坂温泉駅に向けて出発。働き者の列車だなと思いました。
福島駅
おみやげ選びは旅の醍醐味
福島駅直結の駅ビル「S-PAL福島」の1階にはたくさんの福島名物が売られています。
今回は、JR東日本お土産グランプリ2019特別賞にも選ばれた、太陽堂むぎせんべい本舗の「太陽堂のむぎせんべい」を購入。
箱入り2枚組13パック、1,188円(税込)。作っているお菓子はこの「むぎせんべい」のみという太陽堂は、1927年創業の老舗です。落花生を小麦に練りこんで焼く素朴なおせんべいは、パリッと香ばしいシンプルな味。
そろそろ帰京の時間。次は暖かい季節に行きたいなぁ、などとリピート計画を思案しながら東北新幹線に揺られ、あっという間に東京駅に到着です。寒く凍える季節でも、ローカル線と温泉を満喫して、心も体もあったまった旅になりました。
東京駅
掲載情報は2021年2月25日配信時のものです。現在の内容と異なる場合がありますので、あらかじめご了承ください。
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