第90回 『21ブリッジ』『ラスト・フル・メジャー 知られざる英雄の真実』アメコミ映画好きに観て欲しい、 非アメコミ映画
アメコミ映画好きには気なる映画が3月、4月に連続公開されます。『ラスト・フル・メジャー 知られざる英雄の真実』(3月5日公開)、『21ブリッジ』(4月9日公開)。前者はベトナム戦争で活躍しながらなぜか名誉勲章を授与されなかった兵士の真相をさぐっていくドラマ、後者はNYを舞台にしたサスペンス・アクションです。どちらも見応えある作品ですが、アメコミ原作ではありません。
けれど『ラスト・フル・メジャー 知られざる英雄の真実』の主役を演じるのはセバスチャン・スタン、『21ブリッジ』はチャドウィック・ボーズマン主演作です。セバスチャン・スタンはマーベル・シネマティック・ユニバース(MCU)のウィンター・ソルジャーことバッキ―役でブレイク。そしてチャドウィック・ボーズマンはMCUのブラックパンサー、ティ・チャラで人気を博しました。さらに『ラスト・フル・メジャー 知られざる英雄の真実』では同じくMCUで重役なキャラを演じているウィリアム・ハート、サミュエル・L・ジャクソン。そして『ゴーストライダー』(『イージー・ライダー』の”キャプテン・アメリカ”、『だいじょうぶマイ・フレンド』のゴンジー)のピーター・フォンダが共演。『21ブリッジ』はJ.K.シモンズ(『スパイダーマン』シリーズ、『ジャスティス・リーグ』)、テイラー・キッチュ(『ウルヴァリン X-MEN ZERO』)、シエナ・ミラー(『G.I.ジョー』)も登場し、製作が『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』『アベンジャーズ/エンドゲーム』のルッソ兄弟です。
映画『21ブリッジ』よりこうしたキャストをプロモーションで打ち出すことでアメコミ映画ファンにもアピールすることができます。今回の映画で彼らが演じるのはヒーローや超人ではなく、普通の人間です。もちろんどの役者さんも”ヒーロー物専門”ではないし素晴らしい才能の持ち主ですからアメコミ映画以外に出るのは当たり前なのですが、かつてアメリカのヒーロードラマで人気を博していた俳優さんがそのイメージから抜けられず悲劇にみまわれたとか、初期007のジェームズ・ボンドを演じたショーン・コネリーもその後のキャリアづくりに苦労したという話を聞くと隔世の感があります。
いまやヒーロー映画に出るということは役者さんにとってブレイクのきっかけとなる大きなチャンスでしょう。日本でも特撮ヒーロードラマはいまや若手スターの登竜門になっています。ある監督さんもおっしゃっていたのですが、いまの俳優さんは子どもの頃からヒーロー物や特撮、アニメになれしたしんでいるので、こういうジャンル映画のオファーに対しても抵抗感がないのだそうです。
加えて、昨今のヒーロー映画は役者さんにとっても”演じがいがある”ものなのでしょう。というのもヒットするアメコミ映画は、ヒーローの活躍も楽しいですが、ヒーローではない時の人物描写がしっかりしています。以前MCUの仕掛人でマーベル・スタジオの社長であるケヴィン・ファイギ氏にインタビューしたことがあるのですが、MCUで大切にしていることはなにか?との問いに「コスチュームを着ていない時の主人公たちをどう描くか、です」と即答されたんですね。役者さんにとって”派手な見せ場はあるし、その一方でじっくりとした人間ドラマにチャレンジできる、しかも多くの人に顔を覚えてもらえる”等、とてもメリットがある。そしてアメコミ映画という大イベントに出ているからこそ、それとは真逆の小粒だけどピリっとした映画に出ることで役者としての幅も広がるのでしょう。自分が好きなヒーロー役者さんたちの違った一面が楽しめる『ラスト・フル・メジャー 知られざる英雄の真実』、『21ブリッジ』をご覧になってはいかがでしょうか。
『ラスト・フル・メジャー 知られざる英雄の真実』はピーター・フォンダ氏、クリストファー・プラマー氏の遺作、そして『21ブリッジ』はチャドウィック・ボーズマン氏の最後の劇場公開映画です。
ご冥福をお祈りいたします。ありがとうございました!
(文/杉山すぴ豊)
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映画『21ブリッジ』
4月9日(金)公開
公式サイト:http://www.21bridges.jp/
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