唎酒師の娘とカメラマンの父、仲良し親子が行く会津・日本酒の旅
唎酒師(ききざけし)の伊藤ひいなです。普段焼酎で晩酌をしているお父さんを連れて、福島県会津若松へ日本酒旅に出掛けたいと思います! カメラマンのお父さん(※)の前で写真を撮るのは緊張するけれど、家では話せないことも話せるかなぁ〜と思ってみたりして。列車に揺られ緊張もほぐれることを期待。それでは、行ってきます!!
※編集部注:フォトグラファーの伊藤徹也さん
JR東京駅
いざ初の東北へ!
日本酒好きを語りながら、恥ずかしいけれど、実は東北はまだ見ぬ地。新幹線の乗り場に向かう旅慣れたお父さんに、ドキドキしながら付いて行く私。
東北新幹線! 満を持して登場!
JR東京駅から揺られること約1時間20分。JR郡山駅に到着です。
郡山駅
初めての磐越西線はどこか懐かしさを感じる
郡山駅から磐越西線で約1時間20分、JR会津若松駅へ。赤と緑のラインに心を掴まれながら乗り込みます。
高い建物がない分派手な景色ではない。景色があまり変わらない。そんな磐越西線の車窓を眺めていると、せかせかしている日常から解き放たれたような感覚になります。
会津若松駅から只見線で移動すること約3分、JR七日町(なぬかまち)駅へ。
桐屋・権現亭
3種のそばを食べ比べ!
会津の地に来て初めてのお食事は、七日町駅から徒歩約20分の「桐屋・権現亭」で、名物「会津そば」を。新そばの文字に期待を膨らませながら、暖簾をくぐります。
落ち着いた店内は、1階が地元の酒蔵から譲り受けたという、酒樽のふたを利用したテーブルとカウンター。2階がテーブル席となっていて、壁にはそば殻が練り込んであるというこだわりよう。
注文したのは1番人気だという「こだわりそば 三種盛り そば三昧」。写真左から、香りが最も際立つ「会津頑固そば」、のどごしと歯応えが楽しい「飯豊権現そば」、もちっとしたコシと甘みが印象的な「会津のかおり」。色も違えば喉越しも違う! 付け合せの煮物などには、地元産のお野菜はもとより、店主さん自ら畑で育てているという無農薬野菜も使われているとのこと。至るところにこだわりを感じます。
鶴乃江酒造
お気に入りの日本酒と出会う
桐屋・権現亭から歩くこと約10分。「会津中将」「ゆり」の銘柄でお馴染みの「鶴乃江酒造」に到着。ここの蔵のお酒は東京でも好んで飲んでいた分、楽しみで仕方ありません。
お酒の銘柄にもなっている「ゆり」さんが、満面の笑みで迎えてくださいました! 近年の日本酒業界において、女性が酒造りをするのは全く珍しくありません。ゆりさんの醸すお酒は、ひと口飲めば目を瞑って息を漏らしてしまうような感じ。堪らないのです。
直売所はまるで日本酒のテーマパークのよう。「会津中将」の季節商品「会津中将 特別純米 無濾過生原酒 中汲み」もあり、迷っているとゆりさんから天の声が。「これは東京ではあまり買えないですよ」。迷わず購入! 帰宅後の楽しみが1つ増えました!
鶴ヶ城
戊辰戦争の舞台となった地に立ち寄る
鶴乃江酒造から徒歩約25分、「鶴ヶ城」へ立ち寄ってみました。紅葉が綺麗に色付く様子をお父さんが眺めていると、鳥が水面を走り抜ける! 自然溢れる会津若松を感じました。
綺麗である反面、戊辰戦争の舞台となった鶴ヶ城には少し侘しさも漂います。
錆びて崩れてしまった家もお父さんが撮れば作品に。日常の中から感情を揺さぶるものを切り取り写真に収めることが出来るのが、父を尊敬するところの1つです。
ぼろ蔵
女将さんの創り出す素敵な空間へ
鶴ヶ城から歩いて約18分。会津の地酒が豊富で有名な「ぼろ蔵」に到着。貫禄のある出で立ち。お店に入ることにビビる23歳の私。
カウンターの中にはフェイスシールド越しでも分かる、にこやかな笑顔の女将さんが。実家のような雰囲気に肩の力が抜け、次第に身体が日本酒を欲してきます。
会津の地に来て初の日本酒を飲みます! 3種飲み比べで会津の地酒を堪能。「会津中将」「風が吹く」「泉川」。同じ会津のお酒でも蔵によって個性はそれぞれ。
銀杏のほろ苦さにはコレ! 会津産の高田梅を使った山いもの梅あえにはコレ! と飲み比べを大満喫。
会津人参の天婦羅を食べながら、「大和屋善内」を1合注文。お父さんに注いでもらうお酒は特別感があります。お父さんと2人でお酒を飲む幸せ。あれ、こんなに手、大きかったっけ。
1日目は会津若松駅前のホテルに宿泊しました。
末廣酒造 嘉氷蔵
新酒の季節。会津の酒蔵見学へ!
2日目を迎えました。朝の澄んだ空気の中、二日酔いに見舞われることもなくゆっくりお散歩。会津若松駅から約18分で「末廣酒造 嘉永蔵(かえいぐら)」に到着!
酒蔵では一般的に、新酒の季節になると杉玉(酒林)を新調(※)します。
※編集部注:嘉永蔵の酒林は、飛騨高山で作った非常に大きな酒林です。シンボルとして下げているため、新酒の季節に合わせた新調はしません。
嘉永蔵には蔵ミュージアムが併設され、蔵見学も可能(※)。お酒の造り方を一から教わり、末廣酒造でも行われている少しマニアックな製法「山廃(やまはい)造り」の考案者である嘉儀(かぎ)金一郎先生のお話も聞けて大満足!
※編集部注:通常は団体のみ要予約ですが、現在は新型コロナウイルス感染症対策の為、団体見学はできません。個人のみ当日予約を受け付けています。事前にお問い合わせください。
末廣酒造では、少量であれば個人でお酒のタンク買いができるのだそう。伊藤家ドリーム。「いつかはタンク買いしてみたいな!!」と語る私と、目を背けるお父さん。お金の出所を察知したのでしょう(笑)。
こちらでは、山廃造りのお酒と新酒を購入! 会津人参入りのそばクッキーと、前掛けもゲットしました!
田季野
輪箱飯(わっぱめし)が美味!
旅の最後は、末廣酒造から徒歩約10分の「田季野」へ向かいます! こちらのお店は、輪箱飯(わっぱめし)の元祖といわれているのだそう。恥ずかしながら、輪箱飯という存在自体を知らなかった私。いきなり元祖で食べていいものかと躊躇しつつ写真撮影。写真を撮るときの姿がお父さんそっくり。
注文したのは「会津セット」。ぜんまい・茸・蟹・鮭・玉子の輪箱飯に会津そばがついたセット! 木の香りがふわっと香り、お米はもちもち。
そして末廣酒造の生酒でお父さんとちょい飲み! やはり現場を見てみると味わいも深く感じられるもの。
これから東京へ帰るという寂しさを感じつつお店を出ました。会津若松駅まで徒歩約20分。黙々と会津の地を踏みしめ、2日間の余韻に浸る。言わなくてもお父さんが何を考えているか分かる。そんな親子で居られて良かったなぁと思った瞬間でした。
会津若松駅から郡山駅までの磐越西線。列車の椅子に座るともう夕暮れ時。綺麗だけれど、どこか切ない。日常に戻っていく感覚を象徴している空だと感じました。
自宅
旅の余韻に浸りながら、会津のお酒で晩酌を
その日の晩、ゆりさんの笑顔や末廣酒造でのお話を思い出しながら晩酌! お父さん、日本酒について語り出します。「やっぱり新酒は刺激的だな〜!」「山廃、俺、好き」。
実際に会津の街に行ったことで親近感が湧き、日本酒を身近な存在に感じてもらえたようで何より。そしてひと言、「写真、上手くなったね」。
列車に揺られゆらゆら、お酒を飲んでほろほろ。旅を通じてお父さんと私は、何がという訳ではないけれど、お互いのことを分かり合えた気がするのです。
掲載情報は2021年1月19日配信時のものです。現在の内容と異なる場合がありますので、あらかじめご了承ください。
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