逮捕情報の事前漏洩【遠隔操作ウイルス事件】

 逮捕情報の事前漏洩【遠隔操作ウイルス事件】

今回は弁護士矢部善朗さんのブログ『ヤベラボ(モトケンブログ3rd)』からご寄稿頂きました。

逮捕情報の事前漏洩【遠隔操作ウイルス事件】

 遠隔操作ウイルス事件では、4人が誤認逮捕され、そのうち2人は虚偽自白までさせられていたのであり、警察・検察の捜査に対する信頼は地の底にまで落ちていたのですから、信頼回復のためには真犯人検挙が絶対に必要だったはずです。
 しかし、単に検挙しただけでは足らず、虚偽自白の経緯に照らして自白を得ただけでも十分でない。誰が見ても真犯人であることが明らかな強固な証拠に基づいて有罪判決を得なければなりません。
 そのためには、自白以外の客観証拠、例えば被疑者の使用しているPC内の全データなどが収集されなければならないのは捜査関係者にとっては常識中の常識。
 ところが、今朝、7時ころに目を覚ましてiPhoneでツイッターのTLを見たところ、眼に飛び込んできたのが、被疑者が特定され逮捕状が発付されたというニュース。つまり、まだ逮捕されていないのに逮捕状が出たことが明らかにされていました。
 最初に頭に浮かんだのが、被疑者がこのニュースを見たらどうするだろうか、ということ。言うまでもない。私なら直ちにPCのHDDを物理フォーマットするかPCをハンマーか何かでたたき壊します。つまり徹底的な証拠隠滅を図ります。
 報道される前に被疑者の自宅に捜索が入っていればいいな、と思いつつ、証拠隠滅の恐れを指摘するツイートを書き込みましたが、その後、 @yassi___ さんのツイートで、

2月10日。捜査員が男の自宅に入ったのは午前6時20分ころ。 NHK「遠隔操作ウイルス 都内の30歳男に逮捕状」のタイムスタンプは「4時7分」、共同通信「PC遠隔操作事件、都内の男に逮捕状」は「04:44」。

ということを知って、唖然愕然。
 被疑者が、NHKのニュースを直ちに知れば、2時間以上証拠隠滅の時間があったことになり、直ちに知る方法はいくらでもあります。
 
 実際に証拠隠滅されたかどうかは、今後の捜査で判明すると思いますが、されなかったらいいというものではありません。

 2月10日午前4時7分のNHKのニュースには

遠隔操作ウイルスに感染したパソコンから犯行予告が書き込まれた一連の事件で、警視庁などは都内に住む30歳の男が関わった疑いが強まったとして、威力業務妨害の疑いで逮捕状を取りました。
10日にも取り調べ、男を逮捕する方針です。

とあります。
 ここまで具体的に記事に書けるということは、警察関係者による情報リークがあったとしか考えられません。
 その警察関係者はいったい何を意図してリークしたのでしょう。
 可能な限り証拠収集をすること以上に重要な目的があったのでしょうか?
 
 要するに、警察は、何も反省していないのです。何も真剣に考えていないのです。

 もし、証拠隠滅がなされていたら、それは警察とマスコミの共犯事件とみなすべきです。

 検事当時から、警察幹部の事前情報漏洩に何度も苦々しい思いをしてきましたが、今回ほど腹が立ったのは初めてです。

執筆:この記事は弁護士矢部善朗さんのブログ『ヤベラボ(モトケンブログ3rd)』からご寄稿いただきました。

  1. HOME
  2. 政治・経済・社会
  3. 逮捕情報の事前漏洩【遠隔操作ウイルス事件】

寄稿

ガジェット通信はデジタルガジェット情報・ライフスタイル提案等を提供するウェブ媒体です。シリアスさを排除し、ジョークを交えながら肩の力を抜いて楽しんでいただけるやわらかニュースサイトを目指しています。 こちらのアカウントから記事の寄稿依頼をさせていただいております。

TwitterID: getnews_kiko

  • ガジェット通信編集部への情報提供はこちら
  • 記事内の筆者見解は明示のない限りガジェット通信を代表するものではありません。