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機械との競争: 技術革新による失業の第3波を人類は乗り越えられるか

機械との競争: 技術革新による失業の第3波を人類は乗り越えられるか

今回は『基礎科学研究所(NPO法人 知的人材ネットワーク・あいんしゅたいん)』からご寄稿いただきました。
※すべての画像が表示されない場合は、https://getnews.jp/archives/286612をごらんください。

機械との競争: 技術革新による失業の第3波を人類は乗り越えられるか

最近の人工知能とロボットの目覚ましい進歩は、普通のオフィス労働者やサービス従事者から仕事を奪っていくであろう。これは産業革命により、多くの農民が失業したこと、60年代以降のオートメーションの発達で、多くの工場労働者が失業したことに次ぐ、第三の失業の波である。この第三の失業の波は、高等教育を受けた知的労働者の多くが失業する可能性を秘めている。はたして、この第三の失業の波を人類社会は乗り越えられるだろうか。

機械との競争

最近Facebookの友人を通して興味ある議論を知った。「ITは雇用を生まずに所得格差だけを広げるのか? 米国の失業率が回復しない本当の理由」*1安藤茂彌、DIAMOND IT&ビジネス、という記事である。 内容はMITのスローン経営学大学院デジタル・ビジネス・センターのエリック・ブラインジョルフソンとアンドリュー・マカフィーの講演のまとめである。

*1:「ITは雇用を生まずに所得格差だけを広げるのか? 米国の失業率が回復しない本当の理由」 2012年08月23日 『DIAMOND IT&ビジネス』
http://diamond.jp/articles/-/23612

彼らはRace Against the Machine (機械との競争)*2 by Eric Brynjolfsson and Andrew McAfeeという著書があり、講演はその本の内容にそっている。

*2:「Race Against The Machine: How the Digital Revolution is Accelerating Innovation, Driving Productivity, and Irreversibly Transforming Employment and the Economy [Kindle Edition]」 Erik Brynjolfsson(Author), Andrew McAfee(Author) 『amazon』
http://www.amazon.com/Race-Against-The-Machine-ebook/dp/B005WTR4ZI

その本の日本語の書評はここ*3にある。英文のエコノミストの書評はここ*4を参照のこと。

*3:「【書評】機械は敵か味方か――’Race Against the Machine’」 2012年08月22日 『シロクマ日報』
http://blogs.itmedia.co.jp/akihito/2012/08/race-against-th-9972.html

*4:「Race against the machine 」 2011年11月09日 『The Economist』
http://www.economist.com/blogs/freeexchange/2011/11/technological-unemployment

著者の主張の要点は上記の記事に要領よくまとめられているが、ここではさらに本を元に、私なりにまとめてみよう。

まず第1章についてである。 米国ではリーマンショック以降、失業が深刻化していて、回復のめどが立っていない。その理由として3つの説がある。1)景気循環説、2)景気停滞説、3)仕事の終焉説。1の景気循環説にたてば、失業率が高いことは取り立てて珍しいことではなく、景気が回復しさえすれば解決する問題だとしている。ノーベル賞学者のポール・クルーグマンがこの立場である。

2の景気停滞説は、現在の景気停滞は、たんなる景気循環ではなく、構造的なものだという。ところがその理由は、技術革新の停滞によるものだという。そのために生産性が向上せず、失業率が高止まりしているのだという。この説の変形として、グローバリゼーション説がある。グローバリゼーションの結果、先進国の仕事が中国やインドなどの発展途上国に流れたので、米国での失業率があがったのだとする。

3番目の立場は、2とは逆に技術革新はありすぎて、人間がする仕事がなくなってきたのだという主張である。ジェレミイ・リフキンの1995年の本で有名になった考えである。この立場はすでにケインズ、ドラッカー、レオンチェフたちによっても唱えられてきたものである。現在はコンピュータの発達により、工場労働者ばかりでなく、平均的なオフィス労働者の仕事もどんどんなくなってきている。このことは銀行のATMや空港の自動改札などを見れば明らかに思える。それは産業革命で、馬が必要なくなったのと同じことだという。しかしこの説、とくにコンピュータの重要性については、米国の経済学界では主流にはなっていない。この点を著者はついているのである。

最近の統計によれば、米国の景気は回復している。(実際、豪邸、ヨット、クルーズなどの贅沢産業は大盛況であることが、ニューヨークタイムズの記事にある。松田注)。それにもかかわらず、失業率が高止まりしているのである。 だから今回の失業率の高止まりに関して、従来成立した景気循環説が成り立たないことは、明らかであろう。

景気停滞説に対しては、著者の主張は「景気停滞論者は技術革新が遅くなったのが原因だとしている。しかし我々は逆に技術革新が速すぎて、多くの人々が取り残されているのだ。要するに、多くの労働者は、機械との競争に敗れたのである」というものだ。実際、最近のコンピュータのハードウェア、ソフトウェア、ネットワークの進歩は驚くべきものであるが、個人、組織、政策、人々の考え方がそれについて行けていないのだという。

その点では著者は仕事の終焉論者に同意するが、著者は彼らほどには悲観的ではなく、もっと楽観的である。著者の主張のポイントは、失業問題の議論にコンピュータの進歩を考慮に入れるべきだという点だ。「問題の根源は人類が大恐慌や大停滞状態にあるのではなく、大変革の時代の始まりにいるということだ」。

第2章ではコンピュータ、特に人工知能の進歩の具体的な例が語られる。私はこのブログにおいて、それらの例をたくさん紹介してきた。ここでは一つだけ、Googleによる自動車の自動運転システム*5を紹介しよう。

*5:「Sebastian Thrun: Google’s driverless car」 2011年03月 『TED』
http://www.ted.com/talks/lang/en/sebastian_thrun_google_s_driverless_car.html

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