ハンドメイドバイシクル展2013に遊びに行ってきた!
【マツダ自転車工場】
荒川区に工房を構え、LEVELのブランドとして知られるマツダ自転車工場。
どのフレームも一見シンプルでありながら、シンプル故に装飾での誤魔化しが効かず、
「ピッチリカッチリ」と音が聞こえてきそうな精密さが見て伝わってきます。
溶接時に生じる熱変形によるわずかな歪みも許さず、全体のバランスを整える芯取り作業こそ最も重要な作業と位置づけ、
その緻密さに対する熱意には「職人」という肩書きが実に相応しいです!
今回LEVELが展示したロードレーサーにはシンプルなのに、遊び心とも言うべきこだわりを垣間見る事が出来ました。
輝くポリッシュなフレームにピンクという大胆ながら主張し過ぎないデザイン。
しかし繋ぎ目部分をよくよく見てみると遊び心も静かに自己主張していることが分かります。
まずはヘッドチューブ。
ロウ付け跡をわざとそのままに、研磨し美しく仕上げています。
丁寧な仕事ぶりが文字通り目に見えます。
おつぎのシートチューブはラグレス。 横から見ると目立つ部分なのでシンプルな雰囲気を損なわない主張しないデザイン。
そしてBB周り。
ここはラグで繋いでいます。
3点すべて別々の繋ぎの見せ方をするという「技術に絶対の自信」を持っている事を感じさせます。
【細山製作所】
神奈川県に工房を構え、細山氏が脱サラして誕生した脱サラビルダーによる工房です。
レースよりもツーリングやスポルティーフ車のような速さよりも自転車の楽しさを
重視した作品が多く目が惹かれます。
今回はこの中でもっともハァハァ度が高かったのはこの一台!
どうよ!
なんて男心をくすぐる一台なのでしょう!
クラシカルでありながら、現代の機材をローカライズして取り入れ全くそれを感じさせません!
足回りを取り上げてみればまずはディスクブレーキ。
実用車がコンセプトという事もあり制動力が重視されており、特にツーリング時に雨天になったとしても、
変わらぬ制動力で安心に走る事ができます。
さらにハブについているのはシマノのアルフィーネ!
11段の内装変速のコンポーネントですが、前輪にもついているということは・・・そう! ハブダイナモ!!
このハブダイナモを使い走りながら発電し、この自転車の特徴的とも言えるこの砲弾ライトにて夜道を照らします。
革サドルにタイムスリップしたかのようなレトロさを感じさせる銀のフェンダーとその雰囲気と調和したリアの赤色灯。
ぱふぱふと情けなくも特徴的な音を出してくれそうなラッパホーン。
黒と銀と茶をバランスよく散らす事でクラシカルで美しい一台に仕上がっています。
荷台に荷物をくくりつけてこれに乗って旅に出れたら・・・なんて考えるだけで男心がくすぐられるじゃあーりませんか!
パーツのチョイスに脱帽のこの一台、お値段たったの98万円!
【アマンダスポーツ】
田端にあるひっそりとした工房でありながら、カーボンフレーム制作の先駆け的な存在と呼ばれる千葉氏が経営する工房です。
海外のプロチームからも技術支援を依頼されるほどの技術者であり、今回はそれを証明するかのような一台がありました。
なんと38年前の1975年製造のカーボンフレームです。
1975年といえば言わずもがなクロモリフレーム全盛期!
メルクス ジモンディ オカーニャ プリドール モゼール ズートメルク。
黄金時代と呼んでも過言ではない選手たちが活躍していた時代です!
カーボンフレームの元祖はルックやアランというメーカーが「うちだから!うちが元祖だから!」と言っていますが真相は不明です。
しかしどちらも1980年頃を主張しており、もしその通りであればこのカーボンフレームは5年も前に誕生していた事になります。
制作を依頼したのはかつて教授と呼ばれたローラン・フィニヨンが駆ったジタンというメーカーだとのこと。
もしかしたら最古のカーボンフレームかも! と思うと歴史を、始祖を見ているような、そんな気分になります。
【cicli KATSUO】
2012年4月開業。 まだ一年未満の新進気鋭のブランド「チクリカツオ」です。
今サザエさんが頭をよぎった人は正座ね。
この自転車の対象は「急ぎたくない人へ!」とキッパリ言い切っています。
その潔く明確なコンセプトを体現したのがこのビーチクルーザーです。
楽な姿勢で乗車出来るアップなハンドルに乗り心地がよく、パンク知らずで走破性の高い太く大きいタイヤ。
重すぎないギア比に使えば使うほど愛着の湧いてくる革サドルをアッセンブル。
青と白のカラーリングがとても綺麗で海岸線を走りたくなるそんな一台です。
たぶんこいつがカツオ。
さらにもう一台紹介!
フレームのダイヤモンドに斜めに渡るパイプは果たして必要なのか突っ込みたくなるこのデザインに突っ込んだら負けだと思う。
安定性のよいBB下の2本スタンドにバランス大丈夫なのかと不安になるこの右側だけの台付きキャリア!
さらになんでもどんとこい!と言わんばかりのこのフロントの巨大なキャリア!
油性ペンで書いたような遊び心溢れすぎてるペイント!
これもまた自転車の楽しさを追求しているそんな一台な気がします。
「乗っていろいろ遊べるそんな自転車を一台どこまで遊んで作れるか」と言わんばかりのこのデザイン性には
とても惹かれるものがありました。 このうまくまとまった危うさはユーモラスですらありますね。
公式ホームページにて掲載されていたロードレーサーもなかなか面白い形をしていました。
こういう自転車好きよ!
【OGRE -WELD ONE-】
近年雑誌やイベントで見かける事が多くなってきたチタン専門のフレームメーカーです。
OGREはオーガなのであってスチュワート・オグレディことオグレさんではありませんしオクレ兄さんでもないのです(がっかり)
ロード MTB ミニベロ スタンドの4種のチタン製品を展示していましたが、今回惹かれたのはこのミニベロ!
カッコイイ!!
美しく波を描くトップチューブ! トリプルトライアングルことクロスドシートスティ!
フォークまでクロモリや既存のカーボンフォークで誤魔化さず、ガッツリチタン製というのもポイントが高い!
チタン特有の焼き色に、浮かび上がるようなOGREのロゴにはしびれます!
αチタン βチタン α-βチタンと主に3種類あるチタンの中でαとβの両方の特性をもったα−βチタンを使っており、
使用されているチタンは日本国内では製造していない特殊なチタンなんだとか。
ちなみにαチタン βチタン α-βチタンの特性ってなんなのと聞かれると俺もよく把握してないので自分で調べてください!(丸投げ)
ついでにロードも結構好みでした。 2013年モデルのコスミックカーボンがよく似合う。 ごん太のヘッドチューブが印象的。
【TESS】
スポーツ車ばかりを紹介してきましたが、もっと人の生活を助けてくれる自転車だってたくさん展示されています。
その中でも一際感心し、乗ってみて驚いたのがこの一台!
車椅子? 否! チェアサイクルです!
リカンベントと車椅子を組み合わせたような自転車ですが、半身麻痺の人や腰や膝など関節を痛めた人、自力での歩行が困難な人でも
走る喜びを感じさせてくれる一台です。
実際に乗せて頂きましたが、ペダルがとにかく軽い! そして走る!
近すぎるんじゃないかと思うペダル位置ですが、この位置が誰でも無理なく漕ぎ続ける事ができ、半身麻痺の人でも片足だけでくるくると
ペダルを回して走る事が出来るのだそうです。
左右どちらにも取付可能な手元のハンドルを回して曲がる事ができますが、ほんのすこし回すだけでクイッと方向が転換でき、
さらにグッ!と回せばその場で旋回する事も可能! 乗っていて凄い楽しい!
スピードが出てもしっかりとした制動力があるディスクブレーキですぐに止まることができます。
車椅子の移動は「進む」と形容するべきでしょうが、これには関しては「走る」と言っても過言ではないと思います。
7000番アルミを使った一台30万円と良い値段がしますが、自分で走れなくなった人がもう一度走る感覚を味わうことが出来る。
あの楽しさと喜びを考えれば30万円という価格はあながち高いとは単純には言い切れないと思います。
むしろこれで生じる生活の変化を考えれば安いのではないでしょうか。
この一台はもっともっと多くの人に知ってもらい、実際に乗ってみてもらうべきものだと強く思います!
【伝説の名品 コルサB】
今回は博物館側からも多くの自転車職人に影響を与えた工房の自転車が展示されていました。
これも見ていて損はない。 今でもお馴染みチネリにて1959年に作られたコルサBです。
傷だらけで錆だらけ。 タイヤも劣化しており、文字通り「当時のまま」の姿で展示されていました。
しかしこれはかつて世界選手権を制したモデルであり、オリンピックでは世界中の選手がコルサBで走ったという逸話を持っています。
もちろん日本選手団の例に漏れず使用し、多くの日本の職人達がコルサBを研究し参考にしてフレーム作りをしてきました。
これもまた日本に最初に入ってきた競技用自転車「ルネ・エルス」同様に多大な影響を与えた事は想像に難しくありません。
ちなみに日本人で最初にこの名車をオーダーしてのはなんと力道山なんだとか。 思わぬ所でビッグネームが。
【美しきサブリエール】
綺麗なグラデーションを描いたメタリックレッドとシルバーのウロコ柄をあしらわれた一台。
とにかく言えることは美しい!
丁寧に処理されたことがわかる美しいラグレスフレームはまるで繋いで作ったのではなく始めからこの形だったと言わんばかりです。
またパーツのアッセンブルにも注目。
今ではホイールメーカーとしておなじみにマヴィックが出していたコンポーネントが新品同様の状態で組み付けられています。
これで1987年製なんてビックリします。
さらにこの時代のクロモリなのに重量7.5キロ! 今でもクロモリでこの重量なら驚異的な軽さです。
完成された一台とはまさにこの事なんでしょうね。
【終わってみて】
小さい会場ながらもあっと言う間に2時間も経過するほどに数々の展示に実に心踊りました!
自転車の歴史と、そして人の役に立つ為の自転車のこれからの在り方。
自転車とは人の力を最大限に増幅し、強大な力にしてくれる乗り物です。
スポーツで使えば楽しいし、生活で使えば便利だし、介護で使えばささやかな自由が手に入る。
形は違えど原理は同じ。 使い方次第でここまで多様な力を発揮してくれる自転車にさらにガツンとメロメロになってしまいました。
もうこれはあれです。 病気です。 もう治る見込みもなさそうです。
こういう物があるということをもっと多くの人に知ってもらいたい。 そんな思いにさせられるハンドメイドバイシクル展でした。
【ひょっとしてそれはギャグでやっているのか?大賞】
【以下紹介しきれないのも写真だけ掲載!】
※この記事はGAGAZINEさんよりご寄稿いただいたものです
ウェブサイト: http://gaagle.jp/gagazine/
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