ソムリエの田崎真也さんが1964年から熟成させた日本酒をデキャンタージュ
熟成酒8本セットが202万円!!日本酒をワインのようにアッサンブラージュ!デキャンタージュ!――11月16日に帝国ホテル東京で開催された「刻SAKE協会」の記者会見は、普段の日本酒イベントではあまり聞き慣れない驚きのキーワードがたくさん飛び出した前代未聞の会見でした。
“刻SAKE(ときさけ)”とは一言で言うと日本酒の熟成酒のこと。「これまで蔵ごとに古酒や熟成酒などと呼称も定義もバラバラだったのですが、新たに共通の価値基準を設けて定義をし直し、条件を満たした特別な熟成酒だけを“刻SAKE”と呼んでいきます。そうすることで熟成酒の価値を創造し、世界に向けて日本酒全体の価値向上を図るために協会は活動していきます」と説明したのは同協会の代表理事で、「月の桂」の銘柄で知られる増田徳兵衛商店(京都)の増田徳兵衛さん。
日本文化に造詣の深いロバート キャンベルさん(中央)もご挨拶
協会メンバーは他に、黒龍酒造(福井)、出羽桜酒造(山形)、南部美人(岩手)、「東力士」の銘柄で知られる島崎酒造(栃木)、「水芭蕉」の銘柄で知られる永井酒造(群馬)、木戸泉酒造(千葉)と日本を代表する7つの有名蔵元。
これら7蔵が特別に1本ずつプレミアムな熟成日本酒を商品化し、さらにこれら7酒(1984年~2003年)を世界的に有名なソムリエ田崎真也さんがアッサンブラージュ(ブレンド)した1本を加え、全8本セットで「刻SAKE協会発足記念 刻の調べ」を発売しました。そのお値段はなんと202万円!20セット限定発売です。2020年にちなんで、命名したのだとか。
8本セット「刻SAKE協会発足記念 刻の調べ」
日本酒史上初ともなる3ケタの高額商品に驚く一方で、さらにその内容にとても感動しました。会見では田崎真也さんが「シャンパンやマデラ酒などはアッサンブラージュ(ブレンド)により仕上げられることで有名なお酒。音楽で言えば、オーケストラとソロの楽曲の違いのようなもの。(日本酒の熟成酒の中でも)低温熟成のものは透明感を維持しながら熟成していきます。一方、常温熟成は琥珀色に変化しながら個性的な味わいを深めていきます」と説明されていました。熟成酒にもいろいろあるようで興味津々。
今回の7酒もただ同量ずつブレンドしていくと、どうしても味わいの強い常温熟成の個性ばかりが目だってしまうので、田崎さんはまず7種を低温熟成タイプと常温熟成タイプに分け、タイプごとに味のバランスを整えながらブレンドして2種の酒を作り、次にこのブレンド2酒をさらに調合して見事に1つに調和させたものだそう。2段階に分けて緻密に計算しながら味わいを設計されたようです。
田崎真也さんによるアッサンブラージュ風景
会場では嬉しいことに、田崎さんのブレンド酒をテイスティングできました(とっても貴重で高価なものなのに!!)。まるで宝石のように驚くほどキラキラと輝いていて、味わいはまろやかながら幾重にも広がる複雑な味わい。熟成酒だけれども重くはなくて、スルリと飲めてしまう美味しいお酒でびっくり。熟成酒の概念が自分の中で瓦解した瞬間でした。
「7本全ての要素を感じることができるようなバランスを目指しました」と田崎さん。次々にやってくるいくつもの芳醇な香り、まろやかな味わいが美しく流れていく重層感、まさにオーケストラの響きのよう!
色合いや香りが異なる熟成酒7酒をブレンドしたのが手前の「刻の調べ」
しかも会場では1964年から増田徳兵衛商店にて熟成をスタートさせたという超レアな秘蔵酒までテイスティングさせていただきました。56年もの刻(とき)を重ねた、私よりも年上の日本酒とは? 見た目は先ほどの田崎さんのブレンド酒よりもまた一層濃いトーンの美しい茶色。
この貴重なお酒を田崎さんたちがワインのようにメディアの前でデキャンタージュしてくれました(冒頭写真)。空気に触れさせることで、一層風味豊かにふんわりとやわらかい味わいになるのだそう。お酒が56年の眠りから目覚めるイメージでしょうか? 何だかとてもロマンを感じます。蜜のような濃厚な味わいながらクセがなく、あまりの美味しさに思わずため息を漏らしながらゆっくりと堪能しました。熟成酒がこんなに美味しいなんて!
一生に一度の体験かもしれない、貴重な日本酒ばかりを一度に2種もいただけるなんて!お酒のライターをやっていて本当に良かった!とそのありがたさを深く噛み締めた会見でした。
増田徳兵衛商店では1964年から熟成酒を製造。専用の磁器の甕で熟成させている
ちなみに新商品「刻SAKE協会発足記念 刻の調べ」は202万円の高額商品にもかかわらず、11月24日~12月5日までの予約期間で完売したとのこと! 協会の常任理事を務める上野伸弘さんによると「初日から予約が殺到し、あっという間に完売になりました。女性のお客様からの予約も目立ちました」とのこと。
刻SAKE協会では協会設立のお披露目第2弾として、「刻の調べ」に関係する“刻SAKE”を長期熟成日本酒バー「酒茶論」(東京・銀座)にて、案内中とのこと。
・木戸泉酒造の「afs(アフス)刻SAKEブレンド」(1984年仕込み)
・増田徳兵衛商店の「純米大吟醸古酒20年10年Assamblage」
・東力士(島崎酒造)の「大吟醸 熟露枯(うろこ)」(秘蔵20年以上)
・出羽桜酒造の「出羽桜大吟醸2008年」
・南部美人の『AllKoji(オールコージ)』(2003年)
・永井酒造の『水芭蕉 純米大吟醸2008年』
また、刻SAKEには該当しませんが熟成酒ファンの間では憧れの、黒龍酒造の「石田屋」純米大吟醸 など、全7蔵のお酒を「酒茶論」にて、なんと原価にて提供中!!12月7日(月)から提供しているようです。原価って、すごいことですね~!
今年は大勢でワイワイ忘年会は難しいかもしれませんが、年末のちょっとした自分ご褒美や年初めの景気付けに、熟成酒でしっとり乾杯!はいいかも。銀座にお出かけの際にはぜひ立ち寄ってみてはいかがでしょうか?
「刻SAKE協会発足記念 刻の調べ」商品サイト
https://shusaron-online.com/shopdetail/000000000042/