サステナブルを感じる旅@長野。話題の「リビルディングセンタージャパン」へ
世界各国を買付で飛び回るインテリアバイヤーの早川七実です。旅の中で出会う素敵な「モノ、コト、ヒト」をインテリア雑貨やコラムなどを通して、日本の皆さんにご紹介しています。
今回は、JR新宿駅から中央線特急あずさに乗って長野県上諏訪へ。諏訪湖周辺にあるサステナビリティを感じるスポットを訪ねました。※サステナビリティとは、直訳すると「持続可能性」。自然環境や社会などが、長期にわたって機能やシステムを失うことなく、良好な状態を維持させようとする考え方です。
新宿駅
特急あずさに乗って上諏訪へ
旅の出発はJR新宿駅から。中央線特急あずさに乗って長野県のJR上諏訪駅まで約2時間10分です。
東京都心を抜けて山梨に入ると、青々とした秋空と山並みが車窓いっぱいに広がります。豊かな自然を眺めつつ、旅のはじまりに胸を踊らせていると、あっと言う間にJR上諏訪駅に到着。
あゆみ食堂
地元の食材を使った楽しくておいしいランチ
ちょうどお腹も空いてきたので、上諏訪駅から徒歩約15分、野菜たっぷりのランチが美味しいと評判の「あゆみ食堂」へ向かいます。
東京で料理研究家として活躍していた店主の大塩あゆ美さんが2019年10月にオープンした「あゆみ食堂」。この後訪問する、同じく上諏訪にある建築建材のリサイクルショップ、リビルディングセンタージャパンのスタッフとの縁でこの地に移住してお店を開いたのだとか。
約80年前の古い建物をリノベーションしているそう。元々あった木材や床や建具などを活かした店内には、あちこちに店主のセンスが見られます。
野菜たっぷりのランチ「本日のプレート」は、「日常の食事」がコンセプト。地元の食材を中心に、その季節に一番美味しい食材を使い、気候に合わせて週替りでメニューを考案しているそう。
ワンプレートの中に、味、香り、食感が異なるメニューが盛り込まれ、それらがひとつひとつ丁寧に作られています。食べ進めるごとに楽しい発見がある見事な構成で、これを食べにわざわざ東京から来たくなるほど、美味しい感動たっぷりのランチでした。
リビルディングセンタージャパン
古いものを次の世代へ繋ぐ
お腹が満たされたあとは、徒歩で約7分。上諏訪エリアのランドマークになりつつある「ReBuilding Center JAPAN(リビルディングセンタージャパン/以下、リビセン)」へ。
2016年にオープンしたリビセンは、古い建物を解体した際に出る古材や道具類などを販売するリサイクルショップです。
古材や廃材は、お金を掛けてゴミとして廃棄されるのが一般的ですが、リビセンでは、再利用できるものを販売しています。同時に、古材や古道具の魅力にフォーカスし、リノベーションの資材や家具として蘇らせる活動を行っているのです。
1階には古材がずらりと陳列されています。これらは、依頼を受けて、スタッフが現場に出向き、古い建物から次の人の手に渡って使ってもらえそうなものをピックアップしてきたもの。この作業をリビセンでは「レスキュー※」と呼んでいます。
※厳密には、次の担い手さんに渡す(販売)までを含めて「レスキュー」と捉えている
レスキューされたアイテムには全て番号が振られています。個々の材料がどこでどのように使われていたのか分かるようになっているのが面白い!
古材で作られたフォトフレーム。個性あるそれぞれの木材の表情には、さまざまな歴史や思いが詰まっています。
2階、3階には食器、家具、雑貨、服飾などの暮らしの道具類が所狭しと陳列。古道具たちはどれも味わい深く魅力たっぷりです。
まだまだ現役で使えそうなものから、雰囲気のあるディスプレイ小物として活用できそうなものまで。こんな風に使えるかな、と思いを巡らせながら宝探し気分で買い物が楽しめます。
店内のあちらこちらにある全ての什器や家具類は、古材をリメイクしたものや、古道具類を活用したもの。実際に店内で使われている様子を見てお客様が真似できるように、レクチャーしたり、定期的にワークショップを行ったりしているそうです。
スタッフの金野涼子さんによると、レスキューされた古材や道具の引取は、「買取(通貨による一般的な買取)」「お礼(1階カフェで使えるコーヒーチケット)」「ギフト(引き取った古材などの一部を、フォトフレームやスツールといった製品に加工してお渡し)」の3種類から選べるそうです。
レスキューに行った先で、ゴミでしかなかった不用品を引き取ってもらえるだけで有難がってくれる人もいたそう。また、お金を受け取っていただけないときに、思い出の詰まった家の木材で作ったフォトフレームを贈ってとても喜ばれたことも。お金では決して得ることができない素敵なギフトですね。
単なる商売としてではなく、「モノを通して思いを繋ぐ」というリビセンの活動の芯の部分を知ることができ、じんわり心が温かくなりました。
1階にはカフェも併設されており、古材を再利用した内装や家具などに囲まれて、コーヒーやお茶、食事などが楽しめます。
すわ湖苑
諏訪湖畔の温泉宿で癒やし時間
リビセンで素敵なお話を聞いた後は、今夜の宿泊先、諏訪湖畔の温泉宿「すわ湖苑」に向かいます。途中、目の前に広がる諏訪湖! 秋の空気を感じながら湖岸をテクテク歩きます。
徒歩約26分、お宿に到着したら荷物を部屋に置いて早速温泉へ。上諏訪を歩き回って疲れた足と身体を癒やします。
泉質は弱アルカリ性単純泉で、冷え性や美肌などに効果があるとのこと。
澄んだ諏訪の秋の空気を感じながら入る露天風呂は格別。熱すぎずぬるすぎず、長湯できてしまう心地よい湯加減。何も考えずぼんやりと湯に浸かれば、疲れた身体と脳がじんわりほぐれていきます。
温泉でたっぷり癒やされたあとは、お楽しみの夕食です。信州そば、山菜、きのこ、ワカサギ、鯉、味噌など、豊かな旬の食材を使った郷土料理がずらり。どれから食べようか迷ってしまうほどの品数です。
諏訪湖で捕れたワカサギの天ぷらは、外はカリっと中はふわふわ。そば粉の風味豊かな信州そばは歯ごたえがたまりません! 鯉の洗いはさっぱりと酢味噌でいただきます。
普段食べることのない珍しい食材や地元のお料理を楽しめるのも旅ならではですね。夜の静寂に包まれた諏訪湖を眺めながらの、楽しい夕食でした。
朝食後に見た諏訪湖の絶景。朝は空気がますます澄んで本当にきれいでした。
すわ湖苑では、チェックインの際の検温、消毒液設置に加えて、浴室、食事処でも万全の新型コロナウイルス感染症対策が取られていて、安心して滞在することができました。
CLASUWA本店
諏訪湖を望む展望ガーデンでランチタイム
温泉と美味しい食事でたっぷり癒やされた「すわ湖苑」をチェックアウト。諏訪湖を眺めながら湖岸を歩くこと約9分で「CLASUWA(くらすわ)本店」に到着。
1階は信州の名産品を販売するショップ。美味しいものから工芸品まで揃っており、洗練されたお土産を探すのにぴったりです。
1階の奥はベーカリーになっていて、信州味噌やハーブ、乳製品など、地元の食材を使った焼き立ての美味しそうなパンがずらりと並んでいます。ベーカリーで販売されているパンは全て袋詰めされていて、新型コロナウイルス感染症対策も万全です。
エレベーターで3階に上がって諏訪湖が見渡せる「RF SKY GARDEN –展望ガーデン–」へ。1階で買ったパンとコーヒーをこちらでいただきます。
バゲットに2色のズッキーニと旬野菜を乗せて焼きあげたタルティーヌや、くらすわベーカリー で 一番人気の自家製クリームが絶品のクリームパン、そして、オニオンとチーズが練り込まれたサクサクのスコーン。淹れたてのコーヒーとともに絶景を見渡しながらのランチ。
美味しいパンと諏訪湖の眺望を楽しむのんびりとした時間は、思いがけずスペシャルなひと時になりました。
カフェと暮らしの雑貨店 fumi
昭和の薬局を蘇らせた可愛い空間
くらすわから歩くこと約15分。上諏訪の商店街にある「カフェと暮らしの雑貨店 fumi」にやってきました。
入るなり可愛い空間が広がるこちらは、昭和初期に営業していた薬屋の建物をリノベーションして蘇らせた、カフェ&雑貨のお店。
店主の村上信之さんは、東京のカフェで店長を経験後、もっと地域に根ざしたお店が作りたいと諏訪に移住。リビセンでアルバイトをした後、2019年に奥様と一緒に「fumi」をオープンしました。
「地域の人が気軽に立ち寄れる場所が作りたい」と思い、商店街という立地でお店をスタート。寂しかった商店街に徐々に活気が戻ってきたことで、「昔から住む地域の方たちも喜んで応援してくれる」と村上さん。
店名の「fumi」は「文」のこと。元々の建物の店名である文化堂薬舗の「文」の字と、交流が生まれる手紙(文)の意味が込められているそう。店内には、暮らしの質が高まるであろう、店主がこだわって選んだ雑貨が並びます。
店内で使用されている家具や什器には、この建物で元々使われていた廃材を活用してリメイクしたものや、そのまま什器として活用されているものがあります。
長らく空き家だった建物の中には、薬屋時代に使われていた試験管、薬瓶、秤などがそのまま残されています。お店を作る際には、これらを捨てずに、上手く再利用し、素敵なディスプレイにしているそうです。
ふらりと立ち寄るだけで幸せな気分になれる、地域に根ざした素敵なカフェ&雑貨のお店です。
AMBIRD
常連さんに愛される、居心地の良いコーヒー店
fumiから歩いて約2分。コーヒー店「AMBIRD」へ。あゆみ食堂やfumi同様、リビセンが縁で移住したオーナーのお店です。
このエリアに浅煎りコーヒーを出すお店がなかったことから、築65年の古民家をリノベーションして2019年10月にオープンしたそうです。
古材や廃材を生かした家具を使った店内。濃い色ではなく、明るい色目の木材を使い、壁は白に近い色味にすることで、明るい空間に仕上がっています。
「地域の人に気軽に足を運んでほしい」とオーナーの黒鳥伸雄さん。明るい空間でリラックスしてコーヒーを楽しんでほしいのだとか。
香ばしいコーヒーの香りに包まれた店内は、ゆっくりとした時間が流れ、コーヒーを楽しみながらついつい長居してしまいそう。
豆は全て自家焙煎で常時8種類。1杯1杯丁寧に淹れるコーヒーは絶品。
オープンから1年ほどながら常連さんも多く、地元の方たちに愛される、毎日通いたくなるコーヒー屋さんです。
美味しいコーヒーで幸せな時間を過ごしたら、もう帰京の時間。名残惜しい気持ちで上諏訪駅へ向かい特急あずさへ乗車。車窓を見ながら今回出会った人やお店に思いを馳せていたら、あっという間に新宿駅に到着。
リビセンが拠点にもなり、古いもの、地域に価値を見出し、後世に繋げるという取り組みが活性化する上諏訪エリア。サステナビリティって最近よく聞きますが、循環する社会作りに自分らしく無理なく取り組む姿勢が素敵ですね。
帰宅後、fumiで買ったお茶を飲みながら、fumiオリジナルのスズランのイラストが描かれた絵葉書で久しぶりに手紙を書いてみました。最近メールばかりでしたが、旅をきっかけに手紙を書いて人と交流するのも良いものです。
新宿駅
掲載情報は2020年11月20日配信時のものです。現在の内容と異なる場合がありますので、あらかじめご了承ください。
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