2020年秋アート旅の決定版!箱根&小田原の美術館めぐり
このところお家時間が増えた、ライターの角佑宇子です。家にいるのは気楽な反面、かわり映えのしない日常が続くので、気怠いモードが抜けません……。
これは困ったぞ……。そうだ、私に足りないのは、芸術に触れて新しいインスピレーションを受ける時間かもしれない!
気軽にアートに触れられる場所ということで、まず思い付いたのが箱根! できれば温泉も楽しみたい! ということで、箱根でアートと温泉を堪能する1泊2日の旅へ出ることにしました。
品川駅
特急踊り子で移り変わる景色を堪能
JR品川駅から出発! 伊豆急下田行の特急「踊り子」に乗車して、列車に揺れること約50分。JR小田原駅で下車して、箱根登山電車に乗り換えです。
2019年秋の台風によって9カ月ほど運休していた箱根登山電車でしたが、2020年7月23日に満を持して運転再開! 甚大な被害を乗り越えて、また美しい景色の中を走り抜ける箱根登山電車にお目にかかれて幸せです。
はつ花 本店
箱根名物、自然薯蕎麦の優しさに包まれる
小田原駅から約15分の箱根湯本駅で下車し、まずは腹ごしらえ。箱根名物ともいわれる自然薯蕎麦をいただきに、「はつ花 本店」へ。駅から徒歩約6分、湯本橋を渡って見える風情のある古民家です。
名物の「山かけそば」をいただきました。こちらの山かけそばは、蕎麦粉と山芋、全卵のみで打ったお蕎麦だそうです。素材の味が活かされているんだろうなぁとヨダレが滴りそうな頃に、タイミングよくお蕎麦がやってきました。
ん! んん! や、優しい〜〜! あー、ほっこりする(涙)
私、今とろろと卵の優しさに包まれてる。
お蕎麦は細いのにコシが程よくあって、食べ応えも抜群! 卵を崩して、とろろとお蕎麦をしっかり絡めると味わいがさらにまろやかになります。
岡田美術館
名作の絵画や陶磁器にじっくり向き合う
お蕎麦を味わった後は、アートを堪能しに「岡田美術館」へ向かいます。箱根湯本駅に戻り、箱根登山電車に乗って約34分の小涌谷駅へ。活気づいた街、自然豊かな木々のトンネル、少し紅葉づいた小高い山々と秋晴れの抜けるような快晴。車窓に移り変わる景色がとても美しくて、もはや移動中の景色すら芸術です。
景色に見惚れているうちに到着しました、小涌谷駅。素朴な駅舎と真っ赤な箱根登山電車が……か、可愛い〜! そして空気が美味しい。ここから、なだらかな上り坂を登って歩くこと約18分、岡田美術館を目指します。(小涌谷駅から路線バスだと約2分。「小涌園」下車)
日頃の運動不足がたたったのか、ジワジワと汗ばむ道のりでしたが時折吹く風がとても気持ちよくて、食後の運動にはうってつけ!
岡田美術館には、日本・中国・韓国の古代から現代までの絵画や陶磁器など約450点の美術品が展示されています。館内は非常に厳かな雰囲気。ひとつひとつの作品にゆっくりと向き合える、そんな贅沢な時間を味わえます。
尾形乾山(けんざん)作の重要文化財「色絵竜田川文透彫反鉢(いろえたつたがわもんすかしぼりそりばち)」も間近で見られます。器の内側に描かれた流水模様はぜひ、皆さまご自身の目で見ていただきたい!
個人的に惚れ惚れしたのは、大きな金屏風の展示コーナー。金屏風がここまでズラリと並ぶ美術館はそうそうあるものではありません。
絵画のコレクションとしては、葛飾北斎の「夏の朝」、喜多川歌麿の「深川の雪」、伊藤若冲の「孔雀鳳凰図」など名だたる作家の作品が収蔵されています。
「孔雀鳳凰図」は、江戸時代を代表する人気絵師であった伊藤若冲の作品。2016年1月に83年ぶりの発見が話題となり、幻の名品ともいわれています。優雅な孔雀の姿に見惚れてしまいます。(2021年3月28日まで開催中の「没後220年 画遊人・若冲」展に展示中)
彫刻の森美術館
五感でアートを満喫!
次は「彫刻の森美術館」へ! 岡田美術館から道なりに坂を下ること徒歩約20分で到着!
彫刻作品はもちろん、手編みのネット作品の中で子どもたちが自由に遊べる体験型アート作品「ネットの森」やパブロ・ピカソの作品を集めたピカソ館、美しいステンドグラスの塔「幸せをよぶシンフォニー彫刻」と、多岐に渡ったアート作品を展示。見て、体感できる美術館です。
ピカソ館では、陶芸作品188点を中心に、絵画や彫刻などピカソ・コレクション319点を所蔵。順次公開しています。カタチあるもの全てを芸術に変えるピカソの探究心と情熱を存分に感じられますよ。
ひと通りまわったら「The Hakone Open-Air Museum Café」でブリオッシュにジェラートが挟まった「ジェラート・コン・パーネ」と「小田原みかんジュース」をいただきました。一般的なパンよりほんのり甘みのあるブリオッシュと、口の中で溶ける冷たいジェラートが美味しいったらない……! 歩き疲れたカラダに沁みます。
箱根湯本温泉 天成園
天然温泉で体の芯からほぐれる
時代も技法もさまざまな芸術作品に触れて感じたことは、いかに自分は固定観念にとらわれていたかということ。特に、ピカソが晩年に制作した陶芸作品によって、絵はキャンバスに描くものという私の固定観念が見事に壊されました。ルールの枠を飛び越えた新しい価値観を目の当たりにして、なんだか良い記事ネタ思い浮かびそうです。
……と、ちょうど日も傾いてきたのでそろそろお宿へ向かうとします。彫刻の森駅から箱根登山電車で箱根湯本駅まで戻り、駅から徒歩約12分で、「箱根湯本温泉 天成園」に到着。
入り口には体温が計れるサーモカメラ、アルコール消毒が完備され、新型コロナウイルス感染症対策を行なっていました。
中庭には、高さ約8メートルの玉簾の瀧がザァザァと流れ、さらに奥へ進むと縁結び・水の守り神である「玉簾神社」がありました。神社横にはたくさんのカップルが書いたであろうハートの絵馬も。読み進めていくうちに、ラブラブなカップルの熱に当てられて独り身の私としてはちょっと……いや、だいぶ羨ましくなりましたけどね。ふん。
夕食は和洋中のバイキング形式。新型コロナウイルス感染症対策で、簡易手袋が支給されます。
お寿司、ステーキ、天婦羅などのライブキッチンも豊富でした。
食後は温泉へ。まずは大浴場にあるジェットバスでむくんだ脚を癒します。次はミストサウナで体を芯からポカポカに。ちょっとのぼせてきたので、見晴らしの良い天空大露天風呂へ移動。外気が涼しい露天風呂をじっくり堪能しました。
翌朝は、バイキングで海鮮丼を。美味しくてガッツリいただきました! お味噌汁に納豆、サラダとデザートも忘れずに。バランスのとれた朝ごはんを食べると元気になります。
小田原文化財団 江之浦測候所
自然とアートが融合した話題のスポット
翌朝はスッキリと目覚めました。
ここで箱根湯本駅とはお別れということで、駅近辺でお土産を買うことに。駅から徒歩約5分、老舗の銘菓「ちもと 駅前通り店」へ。
「湯もち」が有名ですが、今回は鈴の形をした最中の「八里(はちり)」を購入。ころんとしたフォルムがとっても可愛らしくお土産にピッタリです。
それでは旅の最後にふさわしい「小田原文化財団 江之浦測候所」へ向かいます。箱根湯本駅から小田原駅まで向かい、東海道本線でJR根府川駅を目指します。所要30分ほど。車窓からは相模湾が一望できて開放的な気分です。
江之浦測候所は事前予約制。今回は、送迎バス付きのチケットを予約しました。
根府川駅からバスで約7分、江之浦測候所は小高い丘の上にあります。相模湾と広い空が一体化したような青い風景を堪能できますよ。
江之浦測候所は、現代美術作家・杉本博司氏が、みかん畑だった小田原市江之浦に構想から20年かけて作り上げた話題のアートスポットです。
コンセプトは「人類とアートの起源」——古代の人は、天空の変化や見える星などによって自身の位置や季節などを知ることができたそうで、アートの起源といわれています。
広大な敷地内には、夏至の日の出を観測できるよう設計されたギャラリー、光学硝子の舞台、茶室、門、化石などが点在しています。
入館は待合棟から。検温とアルコール消毒を済ませ待合棟を出ると、目の前にあるのが海抜100メートルの地点に建設された長さ100メートルの細長いギャラリー「夏至光遥拝100メートルギャラリー」です。壁側には、創設者の杉本博司氏が撮影した海の写真が並んでいます。ギャラリーを突き当たりまで進むと、夏至の日の出を目の前で拝めるように設計されているそう。
江之浦測候所はアートと人類の原点に立ち返る場所。石や木をはじめ、四季折々でみられる自然の芸術をふんだんに感じることができます。
広大な敷地に散りばめられた作品を堪能し、疲れたら腰をかけて相模湾を無心で眺める。これだけでもう命の洗濯ができます。2時間ほど滞在し、そろそろ良い時間になってきたので帰路へつくことに。行きと同じく根府川駅から小田原駅を経由し、特急踊り子で品川駅へ向かいます。
あぁ、ひとりでこんなにゆったりとした時間を過ごしたのはいつぶりだろう。美しいものを見て、心ゆくままにカラダをほぐす。こんなご時世だからこそ、そうしたゆとりが必要ですよね。
皆さんもぜひ、箱根のアートと温泉を堪能して気持ちを解放してみてはいかが?
品川駅
掲載情報は2020年11月19日配信時のものです。現在の内容と異なる場合がありますので、あらかじめご了承ください。
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