減税すれば東京は一人勝ちできるか

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今回はメカAGさんのブログ『疑似科学ニュース』からご寄稿いただきました。

減税すれば東京は一人勝ちできるか

今回はメカAGさんのブログ『疑似科学ニュース』からご寄稿いただきました。

減税すれば東京は一人勝ちできるか

「金持ちの税金を安くするだけで東京はアジアで圧倒的に一人勝ちできる」 2012年12月12日 『アゴラ』
http://agora-web.jp/archives/1506461.html

まあ法人税や金持ちの税金を減らせというのは賛成しないでもないが、それだけで東京が今以上に栄えるもんなのだろうか。

企業が海外に出て行くから結局税収も減り、福祉や社会保障に回せる金も減って悪循環だという。でも減税したら、やっぱり税収は減ると思うが。

そもそも香港やシンガポールとかの都市国家と違って、東京は結構な経済規模を持つ日本の首都であり、日本全体を支えなければならない宿命を負っている。自分だけのことを考えていればいいという都市国家とは性質が違う。前述の福祉などの負担も東京が日本全体を養う以上しかたのないこと。

地方を切り捨てて東京だけ栄えることを重視しろというなら、ストレートにそう主張すればいい。それも一つの考え方だろう。なのに東京が栄えれば地方も栄えるみたいにごまかすのは主張の仕方がフェアでない。

   *   *   *

減税すれば多国籍企業や富裕層が東京に集まってくるものだろうか? 日本は、とくに東京は物価が高い。それもこれも藤沢数希が大好きな円高のためだ。海外の金持ちが東京に移り住んだら物価の高さに逃げ出すのではなかろうか。円高だから手持ちのドルを円に変えたら、少なくなっちゃうし。

富裕層が海外から東京に移ってきても、結局買うのが(円高による)安い輸入品では、日本の地方はなんら豊かにならない。そもそも日本にやってきて海外の輸入品を買うなら、日本やってくる意味がないだろう。

円高で輸入品が安くなって喜んでるのは我々もとから日本に住んでいる日本人だけだ。海外の富裕層は日本に住民税を払うだけのためにやってきてくれるのだろうか。ふるさと納税か(笑)。まあだから税金さえ下げれば富裕層がやってくるという主張もまんざら間違いではないが、それでは意味がない。それでは日本にとってその人物は国内にいないのと同じ。

   *   *   *

物事はひとつの面だけでなく、さまざまな面を見るべき。この人は「勝つ」というのをどういう意味で言っているのか。人口が増えることなのだろうか。GDPにしても人口が増えれば増えるだろうが、それって日本がシンガポールを合併すれば、日本の人口やGDPがその分増えると言ってるのと同じだよね。そしてちょっとだけ多くシンガポールにいままでよりも余分に課税して、それを日本の福祉に回すってことかな。彼の言っていることは実質的にそういうこと。

彼の「勝利」条件であれば、日本は(というか東京は)今もすでに勝っているのだから、何も問題ない。これ以上何も努力する必要はないし解決すべき問題もない。現状の日本が抱えている(とされている)問題はそういう問題ではないわけで。彼の主張がそういうものなら、いっそ「日本には何も問題はなかった!」と宣言するほうがシンプルでわかりやすいのではなかろうか。

都市国家というのは外交や防衛を周辺国に事実上委ねているわけで、東京も(日本の他の地方を切り捨てて)都市国家として生きていくなら、外交や防衛を(東京を除く)日本に依存することになる。おそらく日本は東京に対していろいろ条件を出してくると思うのだよね。東京を防衛してやってるんだから、その金を負担しろとか。ようするに東京が日本の地方を養っているのはそういうことだ。

執筆: この記事はメカAGさんのブログ『疑似科学ニュース』からご寄稿いただきました。

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