自殺よりも生きることを選んだホームレス 彼が死に場所に選んだ街とは

棺を抱える人たちが歩いているのは、イングランド・デヴォン州のトトネス地区。棺の中で眠るのは、マイケル・ゲッチングという名のホームレスだ。42歳で亡くなった彼はロックスターやサッカー選手だったわけではない。しかしながら、街は有名人が亡くなったかのように、大きな悲しみに包まれた。

ゲッチングが度々訪れていた喫茶店のマスターは以下のように語る。「ゲッチングさんは1年半前にここ(トトネス)へやってきた。所持金が底をつくと、リサイクルセンターに廃棄物を持ち込んで、わずかの収入を得ていた。妻も娘も彼と話すのが大好きだったよ。穏やかな性格で、人として素晴らしかった。娘にこんな話をしていたのが印象に残っているよ」

「僕(ゲッチング)は死んでしまおうと考えたことがある。走っているバスに飛び込んでね。だけど、思いとどまったよ。運転手や乗客にトラウマが残るかもしれないからね。もし、小さな子どもが目撃してしまったらと思うと……」

最後は教会の前で息を引き取ったゲッチング。検死によると、死因は低体温とのこと。現地の12月の平均最低気温は5℃で、亡くなった晩は-2℃まで冷え込んでいた。生前の彼は厳しい冬を乗り切れられないだろうと告げていたそうだ。少し離れたダートマス地区のアパートに入居できるように斡旋を受けていたが、彼はトトネスに留まることを選んだ。

ホームレスになったゲッチングがバスに乗った時、用を足しにいったん降りたのがトトネスだった。少し歩いただけで、この街が好きになったそうだ。財政的な問題から簡易宿泊所もないが、貧しい人にあたたかく接する雰囲気があった、という理由から。そんな彼の死は、寛容な街に「悲劇を繰り返してはならない(地区で亡くなったホームレスは2010年以来4人目)」という思いを強くさせた。関係者によると、今まで以上に(可能な範囲で)支援策を打ち出していくとのこと。

画像: ゲッチングの死を知らせるニュース動画のキャプチャー
http://www.youtube.com/watch?v=o0Re0fhHpIQ

※この記事はガジェ通ウェブライターの「香椎みるめ」が執筆しました。あなたもウェブライターになって一緒に執筆しませんか?

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