今だからこそ愛する人と観たい 時代の荒波や現代社会の中で生きる夫婦を描いた、この秋必見の3作品

コロナ禍により、リモートワークや外出自粛など、家族と過ごす時間が増えたことにより、改めてお互いについて向き合う時間が増えたはず。そんななか、夫婦の愛や絆、パートナーについて考えるきっかけとなる3作品が公開されます。この機会にぜひ愛する人と劇場へ足を運び、改めてお互いを思いやることの大切さや、関係性を振り返るきっかけにしてみてはいかがでしょうか。

◆『キーパー ある兵士の奇跡』10/23(金)公開

1945年、ナチスの兵士だったトラウトマン(デヴィッド・クロス)は戦地で捕虜となり、イギリスの収容所でサッカーをしていた時、地元チームの監督の目に留まり、ゴールキーパーとしてスカウトされる。やがてトラウトマンは、監督の娘マーガレット(フレイア・メーバー)と結婚し、名門サッカークラブ「マンチェスター・シティFC」の入団テストに合格する。だが、ユダヤ人が多く住む街で、トラウトマン夫妻は想像を絶する誹謗中傷を浴びる。それでも、トラウトマンはゴールを守り抜き、マーガレットは夫を信じ続けた。やがて彼の活躍によって、世界で最も歴史ある大会でチームは優勝、トラウトマンは国民的英雄となる。だが、トラウトマンは誰にも打ち明けられない〈秘密の過去〉を抱えていた。そしてその秘密が、思わぬ運命を引き寄せてしまう─。

はじめは元ナチス兵であることから、敵としてトラウトマンを拒絶していたマーガレット。しかし、彼の誠実な人柄を知ることで、想いが愛へと変わり、共に歩むことを決意する。戦争のトラウマや傷を乗り越え、やがて結ばれたふたりの姿からは、ひとりの人間として向き合うことの大切さを教えてくれるはず。大勢からの誹謗中傷を浴びるなか、トラウトマンを守るために、立ち向かうマーガレットの姿は、映画史に残る、夫婦の愛を超えた絆を強く感じる必見のシーンだ。

(C)2018 Lieblingsfilm & Zephyr Films Trautmann

◆『82年生まれ、キム・ジヨン』10/9(金)公開

結婚・出産を機に仕事を辞め、育児と家事に追われるジヨン。常に誰かの母であり妻である彼女は、時に閉じ込められているような感覚に陥ることがあった。そんな彼女を夫のデヒョンは心配するが、本人は「ちょっと疲れているだけ」と深刻には受け止めない。しかしデヒョンの悩みは深刻だった。妻は、最近まるで他人が乗り移ったような言動をとるのだ。ある日は夫の実家で自身の母親になり文句を言う。「正月くらいジヨンを私の元に帰してくださいよ」。ある日はすでに亡くなっている夫と共通の友人になり、夫にアドバイスをする。「体が楽になっても気持ちが焦る時期よ。お疲れ様って言ってあげて」。ある日は祖母になり母親に語りかける。「ジヨンは大丈夫。お前が強い娘に育てただろう」――その時の記憶はすっぽりと抜け落ちている妻に、デヒョンは傷つけるのが怖くて真実を告げられず、ひとり精神科医に相談に行くが……。

女性としての生きづらさを初めて知る少女時代、必死に勉強して入った大学から就職への壁。結婚・出産で会社を辞め、社会から切り離されていくような気持ちを抱える日々、そして再就職への困難な道――。今、夫婦と過ごす時間が増えたからこそ、夫婦の関係性を新ためて見つめ直すことや、対話することの大切さを感じさせる一本。

(C)2019 LOTTE ENTERTAINMENT All Rights Reserved.

◆『スパイの妻』10/16(金)公開

一九四〇年。少しずつ、戦争の足音が日本に近づいてきた頃。聡子(蒼井優)は貿易会社を営む福原優作(高橋一生)とともに、神戸で洒脱な洋館で暮らしていた。身の回りの世話をするのは駒子(恒松祐里)と執事の金村(みのすけ)。愛する夫とともに生きる、何不自由ない満ち足りた生活。ある日、優作は物資を求めて満州へ渡航する。満州では野崎医師(笹野高史)から依頼された薬品も入手する予定だった。そのために赴いた先で偶然、衝撃的な国家機密を目にしてしまった優作と福原物産で働く優作の甥・竹下文雄(坂東龍汰)。二人は現地で得た証拠と共にその事実を世界に知らしめる準備を秘密裏に進めていた。一方で、何も知らない聡子は、幼馴染でもある神戸憲兵分隊本部の分隊長・津森泰治(東出昌大)に呼び出される。「優作さんが満州から連れ帰ってきた草壁弘子(玄理)という女性が先日亡くなりました。ご存知ですか?」今まで通りの穏やかで幸福な生活が崩れていく不安。存在すら知らない女をめぐって渦巻く嫉妬。優作が隠していることとは――?聡子はある決意を胸に、行動に出る……。

満州で偶然、恐ろしい国家機密を知ってしまった優作は、正義のため、事の顛末を世に知らしめようとする。聡子は反逆者と疑われる夫を信じ、スパイの妻と罵られようとも、その身が破滅することも厭わず、ただ愛する夫とともに生きることを心に誓う。太平洋戦争開戦間近の日本で、時代の波に翻弄される夫婦の姿を描き、第77回ベネチア国際映画祭で銀獅子賞(監督賞)を受賞し、世界から高い評価を得た話題作。

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藤本エリ

映画・アニメ・美容が好きなライターです。

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