実は日本の未来は明るい/自信をなくしているあなたへ
今回はSeaSkyWindさんのブログ『風観羽 情報空間を羽のように舞い本質を観る』からご寄稿いただきました。
実は日本の未来は明るい/自信をなくしているあなたへ
八方ふさがり?
気がつくともう2012年も残すところ2ヶ月を切っている。そろそろ今年一年を振り返るべき時期が近づいているので、多少予行演習的に今年一年のこと、というよりまず今現在をどのように評価すればいいものか、しばし考えてみた。そして、試しに何人かに今の自分、あるいは日本をどう思うか聞いてみた。
ある程度予想した通り、残念ながらあまり景気のいい話は聞かれない。それはそうだろう。政治も経済も混迷の極みにあって解決すべき重要な問題もいっこうに片付いていかないのに、外交問題のような新たな難題のほうはどんどん増えていく。経済成長の新たな活路を中国等のアジアに求めたはずなのに、気がついてみると中国からも韓国からも返ってくるのは罵倒ばかり。しかも、ものづくり大国とおだてられて、その気になっていたのに、いつの間にか日本の家電メーカーはどん底で、将来に対する展望もないとあっては、自尊心もずたずただ。失われた20年の間にも、ソニーのような日本を代表する会社が、いつか巻き返してくれると期待していた人はけして少なくなかったと思うが、今年はその淡い残された期待が砕かれた一年になりかかっている。
皆自信をなくしている
このブログを書いている最中に、『ソニーがまさかの快挙!スマホ世界シェア第3位に浮上』という記事が飛び込んで来たが、『まさかの』というところが今のソニーの評価を象徴している。実際、ソニーの長期格付けは下がり続け、後一段階下がると『投機的』に落ちるところまで来ている。自信をなくし、八方ふさがりで、不安感に苛まされている、それが今のおじさんサラリーマンの平均的なイメージといえそうだ。
「ソニーがまさかの快挙!スマホ世界シェア第3位に浮上 ―2012Q3出荷台数で」 2012年11月10日 『ガジェット速報』
http://ggsoku.com/2012/11/sony-smartphone-share-2012-q3/
「ソニー:ムーディーズが長期格付けを下げ?投資適格で最低に」 2012年11月9日 『Bloomberg』
http://www.bloomberg.co.jp/news/123-MD7P9M6JTSEI01.html
おじさんに限らず、どうやら若者も同じようなものらしい。去る8月に、文部科学省が公表した高校生を取り巻く状況に関する調査結果を見ると(日本と、米、中、韓を比較)、日本の高校生は、他国に比べて自己肯定感が非常に低くて、将来に不安を感じ、自分の力では社会が変えられないと感じている。しかも他国との差は際立って大きい。まあ、考えてみれば、日本の強かった頃をイメージできない高校生くらいの年齢では、当然というべきか。日本は昔は強かったし、今にまた復活するんだぞ、というメッセージは本当はおじさんの側から発信してあげる必要があると思うのだが、空元気の背後に自信の裏付けがまるでなくなっていることは若者にも見透かされてしまっている気がする。
「日本の高校生、米中韓と比べ自己肯定感が低い傾向」 2012年8月22日 『リセマム』
http://resemom.jp/article/2012/08/22/9402.html
しかし、これは由々しい事態だ。失敗そのものは問題ではない。場合によっては開き直りの力強さがわいてきて、かえって頑張れることだってある。実際、太平洋戦争が終わった後の日本がそうだったわけだし、東日本大震災の直後も、現在よりむしろパワーが旺盛だった印象がある。それが、どうしたことか、今の日本は過度に自信を失っていて、活力がすっかり失われてしまっているように見える。
壮大な勘違いでは?
日本は中国や韓国のような近隣の国からも嫌われ、日本のものづくりはガラパゴスで日本人以外に通用せず、文化は好奇の対象でしかなく、性善説的で曖昧な法律判断やビジネス手法は世界の常識とはかけ離れていて通用せず(日本の常識は世界の非常識)、政治的にも経済的にも縮小した小国となってしまう運命を受け入れるしかないのか。近代主権国家としての日本があまりに他国とくらべて『普通』ではなく、未成熟でナイーブであったことは確かだろう。世界から評価されていたものづくりも、職人的な巧みな技では負けなくても、市場の変化に合わせて自らを変え、コンセプトを練り直し、それを生かすための場を作るための、経営・作戦という点ではいただけなかった。自ずと、『日本よ、性善説だけでは世界の競争は勝ち抜けない。時には、性悪説、悪の論理が支配する弱肉強食の世界を乗り切るために大人になれ。普通の国になれ。』という声ばかり強くなった。
だが、どうもしっくりこない。本当にそうなのか。もしかすると、壮大な勘違いではないのか。単に、19~20世紀的な帝国主義的近代においてはナイーブで、労働集約型大量生産にこだわると無理があり、マルクスの亡霊が生きていた頃の意味での『生産力』においては縮小を余儀なくされ、米国一国集中型のグローバリズムの世界では生きにくくなっているということではないのか。確かに今やアジアの金融の中心は日本ではないが、経済は金融だけが支配しているわけでもない。そもそも本当に日本人は嫌われ、日本は嫌がられているのか。
少し観点を変えると意外な面が沢山見えてくる。
好かれる日本
先頃、アウンコンサルティングが、アジアのGDP上位10カ国を対象に実施した「アジア10カ国の親日度調査」によると、韓国、中国を除く8カ国では80%以上(84%~97%)が日本を「大好き」「好き」と回答し、昨今関係が悪化しているとされる中国でさえ、半数以上の55%が「大好き」(14%)「好き」(41%)と回答したという。
「意外? 中国では55%が日本を「大好き」「好き」と回答–アジア10カ国親日度」 2012年11月7日 『マイナビニュース』
http://news.mynavi.jp/news/2012/11/07/089/index.html
調査の手法や時期、サンプル数等に疑義ありという人もいるかもしれないが、BBCの調査でも、日本は世界から肯定的に評価されていることが伺える。
世界へ好影響、日本がトップ=中韓では「否定的」-国際世論調査 :時事
【ロンドン6日時事】国際情勢に最も肯定的な影響を与えている国の1つは日本-。世界の多くの人々がこのような考えを持っていることが、英BBC放送が6日公表した国際世論調査の結果で明らかになった。
調査は27カ国の2万8000人が対象。列挙された12カ国について「世界に与える影響が肯定的か否定的か」を問うたところ、肯定的という回答の割合が最も高かったのが日本とカナダで、それぞれ54%。これに欧州連合(EU)53%、フランス50%、英国45%などが続いた。
日本については、25カ国で「肯定的影響」との意見が「否定的」を上回り、中でもインドネシアでは8割以上が日本を評価。ただ、中国と韓国では「否定的」とした人がいずれも約6割を占めた。
「・英BBCアンケートで世界への好影響は日本がトップ ~アンケート結果から読み取れること~」 2007年03月06日 『アジアの真実』
http://ameblo.jp/lancer1/entry-10027275823.html
アウンコンサルティングの調査結果に戻ると、さすがに、反日教育が徹底している韓国は「大嫌い」(41%)「嫌い」(23%)が64%を占めているようだが、それでも、「大好き」(8%)「好き」(28%)の合計で36%にものぼることは、評価すべき数値という気がする。
中国人でさえ
ちなみに、同じく反日教育が行われていて、尖閣諸島に関する衝突で、すっかり日本人への好感度が下がってしまったかに見える中国人は、これからどんどん日本のことを嫌いになってしまうのだろうか。正直短期的な予測は極めて難しいが、時宜を得れば必ず歩み寄れると私は信じているし、その裏付けもある。
というのも、東日本大震災後の日本の状況は、マスメディアおよびインターネットを通じて世界各地に伝わったわけだが、この時の日本人の誇りある態度、忍耐力等は世界各国から絶賛されたのは記憶に新しい。それは中国とて例外ではなかったはずだ。その一事例として、思想家の東浩紀氏編集の『日本2.0 思想地図β』*1に『ジャーナリズムと未来ー北京』と題した、中国人ジャーナリスト安替氏と、ジャーナリスト津田大介氏および東氏の対談記事が掲載されているが、ここに出てくる安替氏の発言は注目に値する。
*1: 日本2.0 思想地図β vol.3 [単行本] 東 浩紀 (著, 編集) 『amazon』
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4990524357/
安替 まず、中国の伝統メディアは、3・11の報道のために実に多くの記者を日本に送り込んだ。すると、記者たちは、取材をするうちに、まさに僕が2010年に訪問研究者として東京を訪ねたときと同じように、日本に対する考えを徹底的に変えてしまったんですね。最初は民族主義的な考えを持って乗り込んだ記者が、帰ってきたら完璧に親日的な記者になっている。ここで僕がい言いたいのは「非民族主義になって」ではありません。それどころか、「親日家になって」戻ってきたんです(笑)。
(中略)
安替 3・11の前は、日本をどこか「邪悪さのある国」「我々の敵」としていたのが、いまや日本は「仲間」「友達」、「アジアの同胞」として取り上げられています。中国人はたいてい外国に好感を持たないのですが、日本だけは、たとえば広東省や四川省を報道するときと同じように、取材した地域特有の文化に触れ、それを詳細に心を込めて紹介し、「自分たちの被災地」を描くかのように報道した。
3・11のあと、我々が目にしたのは、傷ついた人たち、そして困難に見舞われているのに力強い人たちだった。そこには我々が学べることがたくさんあった。彼らは我々と同じだと感じた。そうしてかつての恐怖と警戒心が人間としての同情に置き換わり、日本人は東アジアの同胞だとまで感じるようになったのです。 同掲書P333~334
日本人に学ぶ
震災の時の日本人に世界中が感動したというのがけして大げさではないことにも、いくつかの裏付けがある。例えば、一時期話題になった、ハリウッド、IMF(国際通貨基金)、国連、世界銀行スタッフ等の間に駆け巡ったというチェーンメールは、世界が日本を見る目線を代表していたといってもいいはずだ。ネット記事としても各所に流れているので、検索すればすぐに見つかると思うが、今回は、ハリウッドで映画プロデューサーとして活躍する、マックス桐島氏の著作、『世界が憧れる日本人という生き方』*2から引用させていただく。
*2: 世界が憧れる日本人という生き方 (日文新書) [新書] マックス 桐島(著) 『amazon』
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4537259647/
『10 things to learn from Japanese – (日本人から学ぶ10のこと)』
1. THE CALM(冷静)
Not a single visual of chest-beating or wild grief. Sorrow itself has been elevated.(大げさに騒ぐ人はなく、嘆きにくれて泣き叫ぶ人の姿もない。ただ、悲しみ自体だけがこみあげている)2.THE DIGNITY(尊厳)
Disciplined queues for water and groceries. Not a rough word or a crude gesture.(整列して水と食料の配給を待つ姿。過激な言葉をはいたり、下品な行動をとる人は誰一人いない)3.THE ABILITY(能力)
The incredible architects, for instance. Buildings swayed but didn’t fall.(信じられないほど技術力豊かな建築家たち。建物は揺れたが倒壊しなかった)4.THE GRACE(気品)
People bought only what they needed for the present, so everybody could get something.(誰もが何かを入手できるように、人々は当面必要なものだけを買った)5. THE ORDER(秩序)
No looting in shops. No honking and no overtaking on the roads. Just understanding.(店を略奪する暴徒、車のホーンを鳴らす者、無謀な追い越しをする人がいない。あるのは、相互理解のみ)6.THE SACRIFICE (犠牲)
Fifty workers stayed back to pump sea water in the N-reactors. How will they ever be repaid?(原子炉に海水を注入するために、50人の作業員が原発に居残った。彼らにこの恩をどう返せばいいのか?)7. THE TENDERNESS(優しさ)
Restaurants cut prices. An unguarded ATM is left alone. The strong cared for the weak.(レストランは値下げし、警備されていないATMが破壊されることもない。強い者が弱い者を労った)8. THE TRAINING(訓練)
The old and the children, everyone knew exactly what to do. And they did just that.(老人や子供も、皆なにをしたらいいかをちゃんと知っており、それを淡々と実践した)9. THE MEDIA(メディア)
They showed magnificent restraint in the bulletins. No sensationalizing. Only calm reportage. (メディアはニュース速報に関して最前の配慮をした。センセーショナルな報道を控え、冷静なルポに徹した)10.THE CONSCIENCE (良心)
What the power went off in a store, people put things back on the shelves and left quietly.(店が停電になったとき、買い物客は品物を棚に戻し、静かに店を立ち去った)同掲書P184~187
Me文化からFou You文化へ
マスコミの部分等、褒め過ぎなところもあるが、確かに、同じ日本人である私たちでさえ、被災地の人たちの気丈な振る舞いは、『原日本人』の尊厳を見た思いがして感動したものだ。そして、それが世界に伝わっていることは大変喜ばしいし、日本人としてもこの価値の本質をもっと探求してみるべきだと思った。著者の桐島氏が同書で述べているが、どんなときでも相手のことを想い、言葉ではなく態度で、やる気を奨励する日本人という生き方は、世界中で『ああいうふうに生きたい』と思わせる流れを発信し、外国人、外国文化をもシフトさせる威力を持っているという。それを、ミーイズム(meism)が徹底する米国でさえ感じるというのだからすごい。Me(オレオレ)文化の衰退とFou You(あなたのため)文化が花開くきっかけになりうると語る。
民族主義や国家エゴのぶつかりあいをベースとした近代の世界観は、インターネットという超国家的なシステムが世界を覆い始めた今、否応なく転換を迫られていて、新たな指導原理が必要となっていることは間違いない。もちろん楽観ばかりはしていられないが、日本人が自然に発信できる『調和と共生をベースとした世界観』はその堂々たる候補の一つといっていいはずだ。
ビジネスとしても世界に通用する日本
日本人の生き方が優れていることはわかったが、『いい人は魑魅魍魎の世界市場/ビジネスの世界では食い物にされてしまうのでは?』という意見も出てきそうだ。だが、それほど悲観したものではない。日本人のFou You(あなたのため)文化は、究極のサービス精神、いわゆる『おもてなし』として世界を驚かせ感動させてきている。徹底したサービス精神で知られるディズニーやリッツカールトン等も、日本の『おもてなし』と通じるところがある(というより源流をたどれば日本の『おもてなし』に行き着くのではないか)。
しかもそれは、レストランやデパート等の従来型ビジネスだけではなく、ソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)やオウンドメディア(自社メディア)構築や活用にあたっても、今後大いに生かされていく可能性がある。(LINEの成功もそういう点で評価してみるのも興味深い) 日本国内をFacebookのような米国発のSNSが席巻することに歯止めをかける決め手が『おもてなし』を含む日本独自の文化であることを以前書いたが、欧米を含む全世界に進出し、展開できる可能性も十分開けているといえそうだ。
「最高のサービスを誇るディズニーが学ぶ日本のおもてなしの心について」 2012年3月7日 『ルッカ*ルシカ ブログ』
http://rucca-lusikka.com/blog/archives/3301
「「接客マナーは心の礎」 【6】-1.日本の文化 「おもてなし」」 『接客マナーは心の礎』
http://projectishizue.blog60.fc2.com/category127-0.html
「ビジネスにつながる日本のもてなし」 2012年09月09日 『BLOGOS』
http://blogos.com/article/46499/
「記者の眼 – パーソナライズサービスと「おもてなし」の精神」 2012年4月2日 『ITpro』
http://itpro.nikkeibp.co.jp/article/Watcher/20120329/388247/
また、東京はアジアの金融の中心ではないかもしれないが、次の記事にあるとおり、世界有数の魅力的で未来的な街と評価する外国人は本当に多い。じっくり読んでみて欲しい。
「東京が世界一魅力的な都市である 50 の理由 | CNNGo.com」
http://travel.cnn.com/ja/tokyo/none/50-855494
※現在、このページは削除されています。
古い世界観を捨ててみれば
それにしても、これほど、日本が高く評価されている事実を見つけることができるのに、どうして八方ふさがりを感じてしまうのか。一つには、やはりあらゆる意味で世界観が古くなりすぎていることがあるのではないか。そのために、せっかくの長所が長所として評価できず、見えなくなっているのだろう。そして、老朽化した制度にも問題がありそうだ。大量生産大量販売に最適化した日本の大企業や、旧態依然とした官僚組織が、イノベーティブデな素質の溢れる優秀な人材を塩漬けにしてしまっていたら、せっかくの才能も生かされずに終わりかねない。
今回は、少々日本のいいところを取り上げすぎたかもしれない。もちろん、今の日本の状況は非常に厳しい。日本人として反省すべきところも大変多い。このままではせっかくの宝が、宝の持ち腐れになりかねない危機的な状態にあることもまた事実だ。まずは、過度な悲観も過度な楽観も排して、冷静に日本の良さと世界への貢献を考えてみるところから始めてみよう。
執筆: この記事はSeaSkyWindさんのブログ『風観羽 情報空間を羽のように舞い本質を観る』からご寄稿いただきました。
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