宗教団体の手帳コレクション2012(後編)

宗教団体の手帳コレクション2012(後編) 宗教団体の手帳コレクション2012(後編)

5 神社本庁「日記」神社新報社刊

 日本の神社の大半を包括する神社本庁の手帳は「日記」とシンプル極まりない名前。通称は「神職手帳」で、実際宮司に配られるものはそういうハンコが押されてたりするようだが、一般売りのものは「日記」。伊勢神宮ではなく「神宮」と呼ぶような潔さがある。

 

「御歴代天皇・年号簡易一覧表」という、いかにも神社本庁らしいナイスなものや、郵便料金表、度量衡換算表といったものもあるが、注目したいのは「全国神社鎮座表」(下図)。47都道府県+米国の主要神社の宮司名・電話・ファックス・住所・例大祭の日が記されており、パワースポット女子や神社マニアにはこたえられないものになっている。ここに載っている神社を一つ一つ制覇していくだけでも楽しいだろう(でも、これに載っていないような小さいお宮だってとても素晴らしいですよ!)。靖国神社や日光東照宮、伏見稲荷大社など、神社本庁と包括被包括の関係にない神社も掲載されているのが興味深い。神社本庁や都道府県神社庁の役員リストも載っている。

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 巻末には40ページ近い神社関係業者の広告が載っているのは、費用をペイするという点でも、利便性でもよく考えられていて頭がいいと思う。これで教育勅語が載っていたら完璧だった(「敬神生活の綱領」は載っている)。ダイアリー部には神武天皇祭などの神道系行事の日にちも載っている。

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6 カトリック「カトリック手帖」ドン・ボスコ社刊

 今回紹介した手帖の中では最も小さく、メモ帳サイズ(大判サイズもあり)。但し内容はかなり濃い。ダイアリー部には聖書の名言とその日拝読すべき箇所の指示があり、カトリック的に何の記念日かといったことも記されている。例えば10月28日は年間第30主日で、マルコによる福音書の10章46節から52節(イエスが盲人バルテマイに光を与えて信徒にしたシーン)を読むべしと推奨されている。

 資料部の充実が嬉しい。「日々の祈り」として、主の祈り、アヴェ・マリアの祈り、ニケア・コンスタンティノープル信条が載っているし、ミサ式次第も書かれている。これはカトリック信徒必携ではないか。冠婚葬祭ミニガイドなんてのもちょっとだけあって、「教会では、日本固有の暦による厄日や吉凶、方角などにこだわる必要はありません。しかし、どちらかの家の親族の中に気にする人がある場合、考慮しても結構です」と、現実的なことが書いてあって好感を持つ。カトリックって案外こういうとこ融通きくんですよ。全国教会一覧付き。オマケのボールペンも嬉しい。

 私が去年買ったのはこの無地の奴だが、今年は「善きすすめの聖母」「システィーナの聖母」をあしらったタイプも出ているようだ。

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7 日本基督教団「牧会手帳」日本基督教団出版局刊

 カトリックが出たならプロテスタント最大教派の日本基督教団の手帳も紹介せねば。カトリック手帖と同様に、ダイアリー部にその日拝読すべき聖書の箇所が書かれている。例えば10月28日なら、降誕前第9主日であり、箴言8-1と22〜32、ヨハネの黙示録21-1〜4と22〜27、マタイによる福音書10-28〜33、詩篇8-2〜10を読むべしとされている。

 日基の「信仰告白」「生活綱領」が載っているが、それ以上に重いのは「第二次世界大戦下における日本基督教団の責任についての告白」というもので、1967年に当時の総会議長鈴木正久の名前で発表されたものだ。私の知る限り、宗教団体の手帳の中で、戦争責任に触れたものはこの日基のものしかないというのは、単に事実として指摘しておく。

 あと日基の歴史年表がめちゃめちゃ小さい字で長々と書かれている。これは間違いなく信者あるいは牧師向けの手帳であり、商売っ気はあまりないのではないか。

 このほかキリスト教系の手帳では、日本福音ルーテル教会の「教会手帳」、日本聖公会の「聖公会手帳」が一般でも買えるようだが、すみません、ワタクシ昨年買いそびれました。よって紹介はナシ。オーソドクス手帳とか救世軍手帳とかはないみたい?

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番外編 「仏教手帳」宗教工芸社刊

 これは宗教団体が出している手帳じゃないから番外。ビギナーの仏教ファンから、プロの住職、仏壇屋まで愛用する人が多い実用手帳です。

 ダイアリー部には仏教名言や重要行事の日程、六曜(ホントは仏教とは微塵も関係ないオカルトなんだけど)があり、資料編には仏教各宗派の知識が満載。各宗派の宗祖や本尊、寺院数、信者数などが書かれている。基本的に宗教年鑑準拠なのだが、ハンディな形なことに意義があるんですよこーゆーのは。読み物「お盆とお彼岸の知識」や「寺院訪問の注意」「住職様の呼称」も便利。「天台宗や真言宗のように伝統と歴史に包まれた宗派では、他宗とは別格の尊称が使われているので、よほど注意しなければいけない」ためになる。

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 図版も充実しており、仏像のお姿や位牌の形式、仏壇部位の名称などが一目瞭然。融通念仏宗や真宗高田派など、それほど信者数の多くない教団の仏具荘厳も図にしているのが素晴らしい。

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8 幸福の科学「常勝手帳」幸福の科学出版刊

 トリを務めるのは約1100万人の信者を擁する(但し当事者側発表)幸福の科学の手帳。といっても、「池田大作の前世は袁紹」だの「講談社は邪悪な出版社」だのといった、頭がおかしいユニークなことが書いてあるわけではないので、あまり期待してはいけない。

 ホンモノのビジネス手帳である。なにしろ「できる人になるための最強ビジネスツール」だからね。見開きB5とサイズが大きく、ダイアリー部は非常にページ数が多い。

ホレこの通り、ちょっとした落書きだってできてしまう(なおこのキャラは幸福の科学が出している子供向け冊子「ヘルメス・エンゼルズ」連載中の「イディアス王国物語」の主人公、インティ・ソルフォースきゅん)。

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「今週の目標」欄には同苦同悲の心だの忍耐だの正義だの祈りだのがあり、ページ下段にはカンターレ名言集が。「笑顔は、人に対する施しでもあります。笑顔を持った人が一人でも多く出ることが、世の中がよくなっていくための方法でもあるのです」とか、意外といいこと言っているから困る。

 日本中、世界中を飛び回るビジネスマンのために、時差表や東京・横浜・大阪・神戸・京都・名古屋・札幌・福岡・仙台の地下鉄路線図が付いている。

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 面白いのはこの主要経済指標・経営指標の早見表で、これは他に類例のないものだ。東大法学部を出て商社でビジネスマンやってた中川隆さん(ホーリーネーム大川隆法さん)ならではの工夫であろう。実際便利である。手元流動性比率の計算式なんか普通暗記してないと思うし

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 あと、この「八正道チェックシート」なるものもオマケで付いてくる。もはや贅言を費やす気力も必要もないだろう。ただ、「ポルノへの傾倒などの罪を犯すことはなかったか」という戒は、難易度が高すぎて、ちょっと私、守れそうにないですね。っていうか幸福の科学の信者は本当に守ってるんでしょうかね。別にDOでもEけど。

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 以上、8種+番外の全9冊の手帳をステマしてみた。手帳一つとっても、宗教ってけっこうディープな世界が広がっているのだなぁと再認識していただけたのではなかろうか。1冊でも売り上げに貢献できれば、私としては望外の喜びである。だから来年の手帳はタダでください各教団のご担当者サマ!

(文責・岸本元)
※この記事はGAGAZINEさんよりご寄稿いただいたものです

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