住宅ローンの返済に困った!自宅を売って住み続ける「不動産リースバック」が選択肢に

 住宅ローンの返済に困った!自宅を売って住み続ける「不動産リースバック」が選択肢に

コロナ禍で、住宅ローンの返済に困る人が増えていると聞く。借り換えや金融機関の救済措置などでも住宅ローンの返済が難しい場合、不動産のリースバックという手法も考えられる。どういった仕組みなのか、説明していこう。【今週の住活トピック】

「不動産リースバック」利用者に関する総合調査2020年度の調査結果を発表/セイビー

「不動産リースバック」利用者への総合調査2020年度の結果を発表/セイビー

住宅ローンの返済が難しいとき、どんな手立てがある?

コロナ禍で住宅ローンの返済が難しくなったら、どういった手立てがあるのだろう。平時であれば、手元の資金に余裕がある場合なら、低い金利の住宅ローンに借り換えたり、繰り上げ返済をしたりして、毎月の返済額を減らすという方法がある。

とはいえ、コロナ禍で収入や雇用に不安があって困っている場合なので、借りている金融機関に相談をして、救済措置の適用を検討してもらうのがよいだろう。金融機関や借りている人の条件にもよるが、返済期間を延ばして月々の返済額を減らしたり、一定期間だけ利息の返済だけにしてもらったりなどの救済措置で、この後も返済し続けられるかどうかを検討することになる。

それでも返済が難しい場合は、残念ながら自宅を手放すことも考えざるを得ないだろう。返済が滞ってから「競売」にかけられる前に、売却して返済する「任意売却」や売却して賃借人となる「不動産リースバック」などの選択肢がある。

なお、60歳以上などのシニア層であれば、死亡時に自宅を売却する条件で融資を受ける「リバースモーゲージ」という選択肢もある。

この記事では、近年注目されている「不動産リースバック」の仕組みについて説明していこう。

「住宅ローンの早期返済」での利用が多い、リースバックとは?

さて、リースバックとは、正式には“sale and leaseback”、つまり賃貸借契約付き売却のこと。

不動産のリースバックの仕組みは次のような流れになる。

(1)自宅などの所有者がその不動産を第三者(投資家や不動産会社など)に売却する

(2)元の所有者が売却先と不動産の賃貸借契約を結ぶ

(3)元の所有者が賃借人としてそのまま住み続ける

セイビーが、「不動産リースバック」利用者に関する総合調査2020年度の結果を発表したが、その結果を見ると利用者の実態がうかがえる。まず、リースバックの利用経験があるのは全体の3.0%とまだわずかだ。

利用経験のある人に、不動産リースバックの資金使途を聞くと、1番多いのは「住宅ローンの早期返済」で43.6%と半数近い割合になった。2番目に多いのは「生活費」(27.4%)、3番目に多いのは「相続対策」(27.0%)だった。自宅等を売却した資金で、住宅ローンを返済してしまうという使われ方が最も多いことが分かる。

出典:セイビー「不動産リースバック」利用者への総合調査2020年度の結果

出典:セイビー「不動産リースバック」利用者への総合調査2020年度の結果

一方、賃借人として賃料を払いながらも自宅等に住み続けたい理由を聞いたところ、1番多いのは「自宅に愛着があるから」(47.3%)で、2番目に多いのが「街に愛着があるから」(38.2%)、3番目に多いのが「引越しをしたくないから」(30.7%)だった。愛着のある自宅や街から離れたくない、という理由が多いことが分かる。

出典:セイビー「不動産リースバック」利用者への総合調査2020年度の結果

出典:セイビー「不動産リースバック」利用者への総合調査2020年度の結果

不動産リースバックを取り扱っている事業者の中には「買い戻し」ができる事業者も多く、一時的な資金調達として利用される場合もある。その結果、リースバックを利用した人の現在の状況は次のようになっている。

出典:セイビー「不動産リースバック」利用者への総合調査2020年度の結果

出典:セイビー「不動産リースバック」利用者への総合調査2020年度の結果

リースバックした自宅に「住み続ける」場合もあれば、現在または将来に「買い戻す」場合、一定期間賃借人として住み続けた後で「退去する」場合の3パターンに分散していることが分かる。

リースバックを利用する場合の注意点は?

調査結果などから、不動産のリースバックは、次のようなメリットがうかがえる。

・売却によって、住宅ローンの完済が可能(売却額がローンの残高より多い場合)

・売却後も慣れ親しんだ自宅にそのまま住み続けられる

・広く販売活動をすることがないので、売却したことを近隣に知られない

・買い戻しできる(事業者による)

だからといって、よいことばかりではない。所有者ではなく「賃借人」となるので、賃料を払い続けたり、売却先の貸主の定めたルールに従って住むことになる。当初の売却先だった貸主が、ほかの第三者に売却することもあれば、市況の変化に応じて賃貸借などの条件を変えることもあるかもしれない。

終身にわたって住み続けられることや、必ず買い戻せることが保証されているわけではない、ということを念頭に置いておこう。

また、リースバックで重要な役割を果たすのが、新たな所有者となる売却先の事業者だ。リースバックによって事業者に利益が出る仕組みでないと成立しないので、投資額に対してそれを超える賃料が入ったり、賃貸借契約終了後に転売して利益が出たりするように、契約条件を設定する。

そのため、リースバックの場合は、「普通に売るよりは売却額は低く」、「普通に借りるよりは賃料は高く」、「買い戻し額は売却額より高く」なる可能性が高い。こうした点に注意が必要だ。

コロナ禍が長期化することで、収入が大幅に減ったり雇用が不安定になったりと、日々の生活に困る人が増えている。住宅ローンの返済があれば、家を失う不安も加わるだろう。まずは金融機関に相談して、どういった選択肢があるのかを把握するのがよいだろう。自宅を手放すという選択肢の中でも、複数の方法があることを覚えておいてほしい。

元画像url https://suumo.jp/journal/wp/wp-content/uploads/2020/09/175001_main.jpg 住まいに関するコラムをもっと読む SUUMOジャーナル

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