【ここは法廷だゼ!】みずほ銀行特例措置を悪用した震災ドサクサ詐欺犯の言い訳「ただ、辛かったっていうかぁ」
スーツ姿にオールバック、そしてメガネ、と被告人にしてはわりとキレイめファッションのT(38)、昨年の震災に乗じてセコい詐欺を働いていた。震災後には募金集めを装った詐欺などさまざまな詐欺犯が裁判所で裁かれていたが、このタイプは初めて傍聴する。
震災発生直後にシステム障害が発生していたみずほ銀行は、身分証で本人確認ができれば最大10万円まで払い戻しをする、という措置をとっていた。Tと、その知人であり共犯の男B(50)はそこに目を付けた。残高が確認できなくても払い戻しに応じる、という措置だったため、Tは口座に895円しかなかったにも関わらず、2人でみずほ銀行の各支店をまわり、何度も10万円の払い戻しを受けたのである。
「不動産、飲食業をやっていて、バイト含め20人~25人くらい。売り上げはまちまちで、月600万円くらいでした。どうしてもお金がなくて……。1月2月は(売り上げが)悪くて、震災の影響でさらに悪くなって、まわらなくなった……」
詐欺で得た金は全て会社の運転資金にまわしたという。いまは会社も解散手続き中らしい。詐欺をしないとやっていけない会社というのは時間の問題だったのでは。特例措置とはいえ、何度も払い戻しすれば、さすがにあとでバレるだろう。考えれば考えるほど、なんでこんなにバレやすい詐欺を働いたのか謎だ……。
「Bに声をかけられて言われるままにやった」というニュアンスのことを言っていたTだが、その受動的な発言とはウラハラに、なんと2日で15支店もまわっているうえに、2日目は車を使っている。「効率よくまわるために車を使った」と認めていたほか、「取れるだけ取る」と発言していた事も分かっており、やる気まんまんだった様子が伺えるが、
「いや、ただ、(支店を)まわってるとき、辛かったっていうか、申し訳ないなっていう気持ち、あったんでぇ……」
と、よく分からない言い訳が静まり返った法廷に空しく響いた……。
判決は懲役2年、執行猶予4年。傍聴しているときは、震災の混乱に乗じるなんて、どうしようもないな……なんて思っていたけれど、みずほ銀行は特例措置を実施した段階でそのような輩が出て来る事も織り込み済みだったのだろう。ひょっとして、日本全国の裁判所でこの手口の詐欺犯が裁かれたのかもしれない。
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傍聴人。近著『木嶋佳苗 危険な愛の奥義』(徳間書店)、『木嶋佳苗劇場』(宝島社)ほか古くは『霞っ子クラブ 娘たちの裁判傍聴記』(新潮社)『あなたが猟奇殺人犯を裁く日』(扶桑社)など。好きな食べ物は氷。
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