すごいぞ!日本の製造業!『株式会社かいわ』前編
景気悪化で先が見えないと不安になるけれど、こういった企業を知ると、乗り越えられるのではと希望が見えてくる。今回はgs-fieldさんの『製造業応援ブログ!』からご寄稿いただきました。
すごいぞ!日本の製造業!『株式会社かいわ』前半
山梨県上野原にある株式会社かいわ(以下、かいわ)を紹介します。
まずはこの画像を見てください。このクワガタ、射出成形品(編集部注:しゃしゅつせいけいひん。溶けたプラスチックを金型に射出して成形したもの)なのですが、どのくらいの大きさだと思いますか。
な、な、なんと、これ全長2.6ミリ なんです。このクワガタの画像は、“かいわ”から送られてきたものなのですが、驚くのはその大きさだけではありません。実はこの金型、入社2年半年の女性社員によって製作されたものなのだそうです。まだ経験の浅い社員がこれだけの物を作り出してしまうという“かいわ”。さて、その教育方法とはどのようなものなのでしょうか。
“かいわ”の社員は、皆、若いです。金型屋というと、たいがい、勤続うん十年というベテラン、職人さんがいると思いますが、ここ『かいわ』には、そういう職人という人は存在しません。社長いわく、「職人(プロ)というのはどうしても自分に対して限界を作ってしまう。経験の浅い者は、限界を知らないからどこまでもがむしゃらに仕事をこなす」と、あえて職人のいない職場づくりをしているのだそうです。
更に社長は続けます。「未経験者は限界を知らないからぐんぐん伸びるし、固定観念がないから突拍子もないアイデアがどんどん出てくる。それが問題解決の近道になったり、新しい技術になったりする。」確かに、仕事を始める前に「これは無理だろう」と線を引いてしまうことはありますよね。経験値が高ければ高いほどそういうことは多くあると思います。
それじゃ、経験者や職人はダメか。というと、そういうことではありません。豊富な経験値は物事を的確に判断するためには必要ですし、今の“かいわ”の若い社員たちも経験値を積まれてプロになっていくわけですから、決して経験値の高い人や職人が良くない、ということを言いたいのではありません。
「自分の限界を作らずにがむしゃらにできるかどうか」
「固定観念を捨て、いろいろな発想ができるかどうか」
ということを社長は伝えたいのです。
さて、気になる『かいわ』の教育方法について書いていきましょう。社員教育というと、誰か経験値の高い人を教育係として半年なり1年なりつけて教育をしていくというのが一般的だと思いますが、“かいわ”の教育方法はそのようなやり方ではありません。
まず、本人が使う加工設備の取扱説明書を端から端まで何回も読ませることから始まります。これは、相当大変な作業だと思います。本当に「この機械を覚えたい」とか「機械が好き」という熱意がないと、この分厚い取扱説明書は読破できないでしょう。いわば、この試練を乗り越えられない人は、「その機械を限界まで使いこなすことができない」「使いこなすだけの熱意がない」と判断されるということです。厳しいようですが、機械を安全に限界まで使いこなすためには、必要な試練だということです。
取扱説明書の読破が終わると、いよいよ機械での実作業です。もちろん、すぐに実務というわけにはいかないので、実習という形で自分の好きなように機械を使わせるのですが、この実習期間がなんと半年もあるのです。もちろん、事故や怪我の恐れがある機械は使用前に説明します。
社長は、「半年くらいその加工設備で遊ばせる(自分の好きなように使わせる)と機械の限界値、特性を体が覚える。安全に限界値を超えて使いこなすためには必要な期間だ。」と言います。
え、えっ!機械の限界値を超えて使いこなす?!
そう、機械の特性を極めるとその機械の限界値を超えた性能を引き出すことができるのだそうです。“かいわ”のこれら超精密な製品は、このような教育を受けた機械の骨の髄まで理解しつくしている社員の方々によって作られているのです。
<後編につづく>
株式会社かいわ
創業:1966年
従業員:15名
業務内容:微細精密金型作製及び射出成形
※超微細加工にこだわり、家電、医療を中心とした細密製品を作られています。
〒409-0112 山梨県上野原市上野原3796
TEL 0554-63-5551
FAX 0554-62-3866
代表取締役 山添重幸
http://www.kaiwa-net.co.jp/
主な設備:
・三次元測定器 ミツトヨ
・投影機 ニコン
・マシニングセンタ 東芝F-Mach443
・NC-EDM(放電加工機) マキノKE-55
・NCワイヤー マキノU32-K
・射出成形機 ファナックs-200j50B 他、多数
執筆: この記事はgs-fieldさんのブログ『製造業応援ブログ!』より寄稿いただきました
文責: ガジェット通信
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