シリーズ・細かすぎる刑務所の話:誰も知らない「仮釈放前の開放寮」って?

どうも特殊犯罪アナリスト&裏社会ライターの丸野裕行です。

数々の刑務所関連書籍というものが刊行されていますが、詳しい描写や細部までは、綴られていないものです。刑務所レポートのメインで語られるのは、ムショメシや受刑者が起こした出来事、刑務作業など……。

そこで、前回からはじまった《シリーズ・細かすぎる刑務所の話》では、「特筆されない刑務所の詳細」を解説していきたいと思います。

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<※写真はすべてイメージです>

仮釈放前の開放寮とは?

刑務所の中には、《開放寮》と呼ばれる特別待遇を受けられる舎房があります。この開放寮は、仮面接が終了して仮釈放が近づいた素行のよい受刑者のみが入居できる、社会復帰の第一歩を踏み出すための舎房です。

この舎房というのは、“開放処遇”になっているために部屋に鍵はかけないという決まりになっています。開放寮への入居を許された時点で、その受刑者の制限区分は「2種」に変わります。

この制限区分というものは、次のように分けられます。

・1種……居室に鍵をかけない、面会に刑務官が立会わない、移動が自由で刑務官の同行はない、シャバに電話を掛けることができる、外出可能
・2種……居室に鍵をかけない、面会に刑務官の立ち会いが必要、移動には刑務官が同行する、シャバに電話が掛けることができる
・3種……監房には鍵をかける、面会に刑務官の立ち会いが必要、移動には刑務官が同行する、電話は不可
・4種……監房には鍵をかける、監房からは出られない、面会に刑務官の立ち会いが必要、移動には刑務官が同行する、電話は不可

このように制限区分はこまかく決められていて、このようにすべてが許されるのは1種のみということです。

これが刑務所? 広く不自由しない設備

2種の制限区分になれば、仮出所のために丸刈り頭から髪を伸ばすことが許されます。仮面接後、本面接を待つことなく、調髪の許可が下りるので、刑務所内にある理髪店か、散髪(通称・ガリ)専門の受刑者が調髪をします。

さらに2種になれば、通称・カンカン踊りと呼ばれる検身(※)もすべて免除になります。
※検身:全裸になり、両手両足をあげて、何か隠し持っていないかを調べる検査

部屋の広さとしては、6人が余裕を持って暮らせるほど広々とした居室。8畳~10畳程度のリビングです。驚くべきところは、まず鉄格子がないこと! さらに小さな庭があって、ずいぶんと開放的。

部屋に設置してあるのは、小さなシステムキッチン、最新式乾燥機能付きドラム洗濯機、冷蔵庫などです。部屋の外には、共同のトイレ、浴場、洗面所、娯楽室、食堂、テレフォンカードを購入して使用できる公衆電話など。日常生活で不自由しない設備が全部揃っています。

そんな居室が6~8室あって、最大で5、6名が入居できるという舎房。もちろん、刑務官の姿はなく、早朝と就寝時間9時前の点呼、深夜の見回りが2回あるだけ。しかも、監視カメラも食堂に1台設置されているだけで、見張られているような感覚はないんです。こちらから用件がある場合は、インターフォンで刑務官詰所に連絡し、呼び出す仕組みになっているんですね。

居室には押入れもあり、私物や布団などを収納できるようになっています。

夏は週3日、冬は週2日と入浴日は決まっていますが、5人~6人が同時に入浴できる大きさの風呂は、自分が好きな時間に沸かして入ることが可能です。

この施設でムショボケを解消する

食事は、食堂に集合して摂ります。メニューとしては、3種や4種と同様、自分たちで順番ずつ配食。広めの娯楽室には、40インチ程度の大型液晶テレビと冬限定のコタツが用意されており、自由に使用することができます。もちろん、各居室にも小型の液晶テレビが設置されています。朝の起床時から消灯前まで視聴することができてしまいます。

庭の出入りも自由です。天気のよい日には布団や枕を干すことができ、気持ちよく就寝することができます。

また、有名人や著名人などは、単独の居室が用意されていて、封筒づくりや果物用のネットづくりなど、内職系の配役をこなさなければいけません。

3種や4種に比べたら至れり尽くせりとも言える開放寮ですが、あくまでその目的はシャバに近い環境に慣れ、自主性と社会性と養うため。非常に暮らしやすい一方、刑務作業を一緒にこなしている3種、4種の受刑者を嫉妬させる恐れがあるため、仮釈放前の受刑者は開放寮に住んでいることをあまり口外しないようにしているようです。

開放寮にはだいたい仮釈放前の3ヵ月~4ヵ月前の入居になるようですが、ここで暮らしている間に、刑務所ボケを直さなければなりません

以上、刑務所に収監されたことがない人にはわからない「開放寮の実態」でした。
次回もあまり知られていない“刑務所の真実”をお伝えしたいと思います。

(C)写真AC

(執筆者: 丸野裕行)

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