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人は禁じられた方向に努力する

人は禁じられた方向に努力する

今回はmedtoolzさんのブログ『レジデント初期研修用資料』よりご寄稿いただきました。

人は禁じられた方向に努力する

組織やチームの文化というものは、スローガンや目標ではなく、日常の動作やおしゃべりにおけるちょっとした制約が作り出す。

「全部英語」は極端であるにせよ、その会社、その組織、その業界独自の言葉や言い回しを作ったり、あるいは「その場で発してはいけない言葉」を作って共有すると、その場には独自の空気が生まれる。外から入ってきた人が「その組織の人」になるまでの時間は、そうした空気がある場所では大幅に短くなっていく。

制約が空気を作る

「ノー」を禁じた組織には、「ノー」を表現するための語彙が増えていく。「現実的に」を禁じた会議室からは、実際に実現できるアイデアが増えていく。

何か到達したい状態があるのなら、それを目標として声高に叫んでみせるよりも、目標と反対側の単語を禁じてやると、人間は案外、その方向に能力を発揮する。

内科医の会話から「外科」という言葉を禁じると、「外科に相談」みたいに便利な言葉が一切使えなくなってしまう。同じ内容を表現するのに、結果として内科医は手術の適応を理解する必要が生じる。「外科」を禁じられた医局では、手術が必要な患者さんが話題になったときには、「外科に相談」ではなく、「この人は手術の適応」と表現されることになる。「外科」を禁じることで、結果として内科と外科との距離は近づく。

「おいしい」という言葉を禁じると、おいしさを表現するための言葉や、もしかしたら感覚が豊かになっていく。「豊かな表現」みたいなものは、獲得を強要するよりも、一番便利な単語を禁じるとうまくいく。

「たくさん」という言葉を禁じられることで、人間は数をかぞえるようになったんじゃないかと思う。

いじめが話題になっている昨今、「いじめ」に関する語彙や表現が最も豊かなのは、たぶん学校の先生なんだろう。

肯定には停止の意思が包埋されている

ジョジョの奇妙な冒険 第5部の登場人物である暗殺者のプロシュートは、部下に暗殺者としての覚悟を説く。

「ブッ殺す」…そんな言葉は使う必要がねーんだ。 なぜなら、オレや、オレたちの仲間は、その言葉を頭の中に思い浮かべた時には!実際に相手を殺っちまって、もうすでに終わってるからだッ!だから使った事がねェーッ。 『ブッ殺した』なら、使ってもいいッ!

「はい」や「分かりました」みたいな、暫定的な肯定を表現する言葉は、状況を肯定しているようでいて、同時に一種の停止を表現しているようにも思える。

「はい」や「分かりました」をチームから禁じると、聞いて理解したあとは、動くことでしか「はい」を表現できなくなる。リーダーから指示を受けたら、部下の側は「はい」ではなく「努力してみます」でもなく、「目標の達成にはこれが必要になります」という返答を提出する必要が生まれる。

制約の到達範囲は言葉によって異なってくる

前向きな空気を武器にする企業では、「できません」と言わないようにしましょう、という目標が提示されるけれど、それをやるとたぶん、「できない」という言葉が消える代わりに、「やらない」事例や、「やったけれど目標が達成できない」事例ばかりが増えていく。

旧軍の昔、組織から「敗北」や「退却」が排除された結果として、軍隊にはそれを表現するための語彙が豊かになって、結果として「勝利」が遠のいた。

暫定的な肯定ワードは、組織の中でも立場の弱い人がよく使う。あるいは、使わざるをえない状況に追い込まれやすい。否定ワードは逆に、組織の中では比較的強い人でないと使えない。肯定を禁じるやりかたは立場の弱い人の振る舞いを変え、否定を禁じるやりかたは逆に、立場の強い人の振る舞いを書き換える。

「お互い相手に気を使いましょう」ではなく、「嫌だと思った時には、理由のいかんを問わず「嫌だ」と表現しましょう」というルールのほうが、教室が「和」の空気に到達できる可能性は高いのではないかと思う。

組織やチームをまとめるものは、目標やスローガンではなく、制約なのだと思う。

組織にはたぶん通過儀礼が必要で、そのチームに入るすべての人に、特別な単語や表現を許可したり、逆に何かの単語を口にすることを禁じたりすると、チームの文化みたいなものが濃くなっていく。

執筆:この記事はmedtoolzさんのブログ『レジデント初期研修用資料』よりご寄稿いただきました。

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記者:

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