常識覆す“成長企業の神話と現実”

 少し前であればマイクロソフト、今であればフェイスブックと、時代の転換期において飛躍的な成長を遂げ、社会インフラの一翼を担う事業を展開している企業が存在する。
 そういった企業の多くはカリスマ的なリーダーがいるものであり、彼らはイノベーションを巻き起こす新時代の旗手としてもてはやされ、数多くのフォロワーが生まれるものだが、その反面、神話化されやすい側面を持っている。

 世界的に有名な経営書シリーズの最新刊『ビジョナリーカンパニー4 自分の意志で偉大になる』(ジム・コリンズ、モートン・ハンセン/著、牧野洋/訳、日経BP社/刊)は“10X(10倍)型企業”と呼ばれる、厳しい環境の中でも真に目覚ましい実績を上げ続けた成長企業と、そのリーダーたちの特徴を、膨大な調査データに基づいて解き明かした一冊だ。そのページ数はなんと492ページ(原注、索引を含む)に及ぶ。
 ここでは、本書で「予告編」として書かれている、崩れ去った成長企業“神話”の一部を紹介しよう。

【神話】
大混乱する世界で成功をするリーダーは大胆であり、進んでリスクを取るマネージャーである。
【意外な現実】
実は10X型のリーダーは、リスク志向ではないし、大胆でもない。また、ビジョナリーでもなく、創造的でもないということが調査結果から明らかになった。むしろ規律的で実証主義的であり、パラノイア(妄想)的な部分も見られるという。

【神話】
不確実で混沌とした世界で10X型リーダーが際立つのはイノベーションのおかげ。
【意外な現実】
本書によればイノベーションは成功のカギではない。逆に10X型企業の比較対象となった企業のほうがイノベーションにおいて勝るケースもあったという。イノベーションだけでは切り札にならず、イノベーションをスケールアップさせる能力、つまり想像力と規律を融合させる能力が重要となる。

【神話】
脅威が押し寄せる世界ではスピードが大事。「速攻、そうでなければ即死」ということ。
【意外な現実】
環境が急変する世界では、素早い判断と行動が求められ、「即時・即決・即行動」という哲学を取り入れがちだが、これは破滅を招く方法だという。アクセルを踏むタイミングを10X型リーダーは知っているのだ。

【神話】
外部環境が根本的に変化したら自分自身も根本的に変化すべき。
【意外な現実】
外の環境が変化しても、10X企業はそこまで変化はしていない。世界が揺れ動いても、自分たち自身が劇的変化を遂げる必要はないのである。

 大胆なリーダーの存在、イノベーション至上主義、素早い行動、外部環境の変化に適応する、といったことはこれまで様々なビジネス書の中で「勝ち残る条件」として紹介されてきたはずだ。
 しかし、データを見てみると、それとは逆の結果が出ているというのだ。

 では、具体的にどういった企業が、そしてリーダーたちがこの混沌とした時代を生き抜くための力を持っているのか。ビジネスの世界に携わるすべての人にとって関わりのあることが書かれている一冊だと言えよう。
(新刊JP編集部)



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