電動アシスト自転車の旅が最高すぎる。伊豆の世界遺産、滝、蕎麦を満喫
レンタサイクルというものがある。自転車を借りて、観光地を巡ったりできるものだ。季節は春になり、旅先でレンタサイクルするにはちょうどいい。ということで、中伊豆を自転車で満喫しようと思う。
まず向かうのは修善寺駅。JR東京駅から特急踊り子号に乗って修善寺駅まで、トータル2時間10分ほどで着いてしまう。近いのだ。
東京駅
踊り子号に乗って、自転車に乗りに
最近というわけではないけれど、自転車で走っている人をよく見かける。通勤通学などの手段としてはもちろん、サイクリングという感じで走っている人をよく見かけるのだ。実に健康的だし、颯爽と風を切って行く様が気持ちよさそうに見える。
ということで、旅先でサイクリングをすることにした。到着したのは伊豆市にある修善寺駅。駅前にレンタサイクルがあるので、手ぶらで来て自転車に乗れるのだ。
修善寺駅
レンタサイクルで出発
あっという間に修善寺駅に到着! 駅から徒歩30秒ほどの場所に、「izu vélo(いずベロ)」というレンタサイクルのお店がある。電動アシスト自転車が豊富にあり、値段は半日1,000円、1日2,000円(共に税込み)。
電動アシスト付きのクロスバイク。カッコいい。電動アシストの使い方も教えてもらって、せっかくなのでヘルメットも借りた(ヘルメットは無料)。漕ぎ出しがスムーズで驚く。電動アシストはすごいと感動してしまった。
全てではないけれど、伊豆市には自転車用のレーンがあり、サイクリングに向いている土地だ。
旭滝
石垣のような滝
20分ほど走って、やってきたのは「旭滝」。落差105m、朝日が昇る時に光を受けて輝くので、そう名付けられたそうだ。ポイントは、「人工的に積まれた石垣の間を水が流れ落ちている」ように見えること。
ね、人工的に感じるでしょ。しかし、これ人工的なものではない。軽石層中に入り込んだマグマが冷えて固まる時に縮んでできる割れ目が石垣のように見えるのだ。「柱状節理(ちゅうじょうせつり)」といわれるもので、旭滝はかつて海底にあった柱状節理が地上に現れた状態だという。
修善寺
その瓢箪(ひょうたん)は3段だ
旭滝から自転車で再び20分ほど、この辺りの観光のメインともいえる「曹洞宗福地山 修禅寺」付近に到着する。自転車は電動アシストもあるので、全然苦ではなくむしろ気持ちがいい。春風と一体になれたように感じるのだ。私は風、春風よ、と。
弘法大師が自ら岩を砕き、草を刈って開いたのが修禅寺。修行道場として多くの高僧を輩出したそうだ。その修行には断食もあり、断食明けの朝、修行僧たちは山菜を採り、山芋を掘り、蕎麦を打って食べた。以来、この地で蕎麦を食すと修行僧と同じ功徳があるといわれている。
「禅風亭なゝ番」で「禅寺そば」を頼んだ。先の修行僧たちの作った蕎麦の流れを今に伝える由緒正しい蕎麦だ。一際目を引くのが赤い瓢箪(ひょうたん)のようなもの。これは3段に分かれており、上からめんつゆ、地の山菜、とろろ蕎麦となっている。
葉っぱのついたわさびも丸々1本出てくる。持ち帰り用の袋が付いているのも嬉しい。たぶんこれ一本いったら辛さで大変なことになるから。
食べてみると修行僧たちがこの蕎麦を食べた時の感動がわかる。王道の美味しさだ。断食明けはさらに美味しいことだろう。私も徳が高くなった気がする。サイクリングの後というのもいい。適度な運動が蕎麦をさらに美味しくしているのだ。
蕎麦のあとは自転車を1時間ほど走らせつつ、修禅寺や、おしゃぶり婆さん(石像)を見たりして、自転車を借りた修善寺駅に戻った。ちなみにこの辺りは源氏ゆかりの地。私の家紋は揚羽蝶(あげはちょう)なので平氏が使った家紋と同じ。平氏側の人間が源氏の地を旅することに趣を感じた。
修善寺駅から伊豆箱根鉄道で15分ほど乗車して伊豆長岡駅に到着。本日は、ここで一泊。
伊豆長岡駅
2日目も自転車で出発!
伊豆長岡には国内で唯一、実際に稼働したことのある反射炉があるのだ。さらにその反射炉は世界遺産。見たいじゃない、ということで2日目も自転車を借りた。
伊豆長岡駅のすぐ横にある「伊豆の国レンタサイクル 狩野川ベロ(伊豆長岡駅前観光案内所)」で電動アシスト自転車を借りることができる。昨日、電動アシスト自転車に乗ってその楽さに感動した。もう電動アシストのない自転車には戻れない。1日1,000円(税込み)。
韮山反射炉
国内で唯一の反射炉
10分ほど自転車を漕いで「韮山反射炉」に到着した。これが国内で唯一現存する、実際に大砲を製造した反射炉だ。ペリー来航を受けて当時の幕府が海防体制の強化に乗り出し、代官の江川英龍を責任者として、1857年に、2つの煙突が並んだ反射炉・連双2基4炉の反射炉を完成させた。
もともとは下田に造り始めていたが、下田に入港していたペリー艦隊の水兵が建設敷地内に侵入する事件が起きたため、現在の地に急遽移して建設された。石炭などを燃料に、炎や熱を炉内の天井に反射させ1点に集め銑鉄を溶かすため、反射炉と呼ばれている。この反射炉では鉄製の18ポンドカノン砲や弾丸が造られ江戸に送られたそうだ。
幕府の直轄で運営されたが1866年に江川家私営になり、1873年に陸軍省に移管され、1922年に史跡となり、2015年に世界遺産に登録された。
伊豆長岡駅
反射炉を造ってパンも作った
韮山反射炉を造った責任者・江川英龍の家「江川邸」が公開されている。韮山反射炉から自転車で15分ほど。江川英龍は九州生まれの私はあまり聞いたことないけれど、反射炉だけではなく、いろいろなものをつくった偉人だった。
江川英龍は幕府直轄領を支配する代官で、現在の静岡県、神奈川県、東京都、山梨県の内、最大10万石余りを担当していた。年貢を集めたり、犯罪を取り締まったりなど、代官の仕事は多岐にわたっている。お台場を造ったのも江川英龍。そして、パンを作ったのも江川英龍なのだ。代官のやることは幅広すぎる。
反射炉やお台場だけではなく、パンも作っていたのだ。そのため「パン祖」といわれている。パン自体はもっと前に日本に入ってきており、織田信長も食べたそうだけれど、普及はしなかった。そんなパンを江川英龍が兵糧として作った。それが1842年4月12日のことで、それゆえ4月12日はパンの日となっている。
江川邸で売っている「パン祖のパン」を買った。兵糧としてのパンなので非常に硬い。歯が折れるかと思うほど硬い。そんなパンを焼いた窯や、架構(梁や柱で屋根を支えている構造)が美しい土間などを見ることができる。
伊豆長岡駅
平家、シフォンケーキを食べる
最後は江川邸を出て10分ほど走り、蛭ヶ小島に行く。平治の乱で敗れた源頼朝が配流された場所で、20年ほど過ごし、北条政子と結婚したのもこの地。そのためここには2人の像が立っている。
ちなみに、北条政子は2020年のNHK大河ドラマで登場する北条義時の姉である。今回の旅とは関係ないけど。
公園として整備されており、小島という名称だけれど、湖や海にあるのではなく、田んぼの中にある。ここに蛭ヶ島茶屋があり、地元の方が手作りしているシフォンケーキと、源頼朝が食べたといわれる成願餅(せいがんもち)をいただく。
シフォンケーキはふわふわで甘く、成願餅は歴史を感じる味だった。自転車を漕いだ体に甘さが染み入る。美味しいということだ。平氏に敗れた源氏がこの地で時を過ごし挙兵し、平氏を倒す。そんな場所で平氏側の私がシフォンケーキを食べる。歴史のロマンだ。
食べ終わるとまた20分ほど自転車を走らせ伊豆長岡駅に向かい、自転車を返して、サイクリング後の心地よい疲労を感じながら列車で東京へと戻った。
今回の旅は健康になった気がする。普通の旅より健康になった気が。自転車のおかげだ。「俺は自転車を漕いだ」という自負がより健康にしてくれるのだ……エビデンスはないけど。あと純粋に風が気持ちよかったな。
東京駅
掲載情報は2020年4月9日配信時のものです。現在の内容と異なる場合がありますので、あらかじめご了承ください。
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