通称“絵描き屋”―事故から殺人まで99%躱(かわ)す『犯罪アリバイ工作屋』とは

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どうも特殊犯罪アナリスト&裏社会ライターの丸野裕行です。

浮気や突然の欠勤など、社会生活では“アリバイ工作”の必要性が時により生じます。「バレたくない」「バレるとヤバい」事情は人それぞれ。そんなとき、最も説得力があるのが《第三者の証言》です。

言い訳を聞けない堅物でも、第三者の証言や医者の診断書には思わず納得してしまうでしょう。

それは法の下でも同じこと。人を殺そうが、1億円の金を盗もうが、アリバイさえ証明することができれば罪に問われることはありません。

今回は証拠主義の裁判制度をあざ笑い、真の犯人を刑事罰から逃れさせる通称・絵描き屋のK氏(49歳)に、刑法の盲点とその手口についてお話を聞きました。

アリバイビジネスから派生した商売

丸野(以下、丸)「どんな事件が一番多いですか?」

K氏「やっぱり交通事故の案件が多いですね。それをメインに殺人事件や傷害事件も扱ってきましたけど、受けた依頼はほとんど成功させていますね。その筋の方からは、『絵描き屋』『躱(かわ)し屋』なんて呼ばれています(笑)」

丸「アリバイビジネスといえば、親バレ彼氏バレを恐れる風俗嬢なんかにむけて、架空の会社に勤めているように偽装工作するくらいかと思っていました」

K氏「僕は大阪の大学を卒業した後、すぐに某広域暴力団が経営している身元保証会社で働いていたんです。仕事がなかったので、繁華街で拾われて……。ホストや風俗嬢が、マンションや金を借りたりするときに在籍証明を発行したりする会社ですね。法務省の正規登録済みの法人格を買い上げて、大阪本町のど真ん中に架空のアパレル会社を構えているんです。お客には毎月2万円の利用料を支払ってもらい、社員に成りすましてもらうという寸法です。名刺や社員証、給与証明と会社の電話番号も用意して、万一家族や彼氏が電話をかけてきても、私が躱します

丸「なるほど。今の仕事に繋がっているわけですね

雇用保険に関するアリバイ作りは公文書偽造

K氏「家族対策の他には、クレジット会社やサラ金の在籍確認にも対応しているので、お客は多かったです。仕事もそつなくこなすので、組長から“独立せんか”と。で、新たにアリバイ会社をつくりました。開業のために休眠会社を司法書士から買い取って、事務所費、広告費、備品に費やす金額は約1千万円。かなりリスキーでしたが、覚悟しまして……。組長からは“表向きは真っ当な会社だから、雇用保険や労災やらを不正受給してもバレへんやろ”と言われ、架空の従業員を雇い入れて一定期間勤務させ、解雇。失業保険を詐取するわけです」

丸「手が込んでますね」

K氏「損はないですから。それで僕は運転資金に窮している中小企業の社長から従業員名簿を預かり、地道に詐金を重ねました。これは不正利得という罪になります。公文書偽造の詐欺罪が成立するリスクがあっても、1件30万円の金欲しさに町工場や自営業者が群がってきました。詐欺になっても、今手に入る現金を選んだわけです」

丸「結局、総額いくらになったんですか?」

K氏「開業半年で4千200万円ほどですかね。その後も傷害保険の詐取なんかもやって、悪徳弁護士や示談屋さんとのコネができましたね。そのうちに詐欺はちょっと違うと思いはじめ、そちらの仕事が増えたのもあり、基本のアリバイ工作屋に戻ったんです」

淫行事件を“躱す”

丸「手はじめにやったのは?」

K氏「淫行事件ですね。少女の携帯電話で発覚してしまうことが多いのですが、それはあくまでも女の子側の一方的な証言。記憶違いから誤認逮捕が生じてしまう状況では、完璧なアリバイがある被疑者を立件するのは難しいわけです

丸「なるほど」

K氏「淫行のもみ消しは、例えば飲食店の来店時間が打刻された領収書を用意してれば十分な証拠になりますよ。それを用意しておきます。それにどうやられたか、どんな風に前戯をおこなったのか、とか性交渉の話を具体的にするので、女の子も面倒になってきますしね」

丸「ほほう」

K氏「その他にはストーカーに追われているから彼氏の役をやってくれとか、他愛もない物ですが楽しかった。それで役者が必要になったので、安く雇える多重債務者を数人、組長に紹介してもらったんです

丸「なぜ多重債務者を?」

K氏「奴らは闇金ヤクザの前で演技して金を借りるんですから、芝居がうまいんですよ、やっぱり。ストーカー対策にもやっぱりつながりを生かして、昔で言うところのギャング、半グレを使います。彼らは裏社会の仕事に憧れがあって、腕がたちますから一番です。囲い込んだアリバイスタッフは40人を超えていましたね。でも、これだけでは普通の探偵やや便利屋でもできることです。ここで、これまでより目を引くような事件が起こりました

人を轢いてしまった!何とかしてくれ!

丸「どんな事件なんですか?」

K氏「組長のところに、有名な医療メーカーの役員から“酔っぱらって人を轢いてしまった! 助けてくれ!”と泣きの電話が入ったんです。事故現場近くのアリバイスタッフに連絡を入れ、すぐに現場に急行。轢き逃げした役員と落ち合ったのですが、かなり強烈な酒の臭いがしていたそうです」

丸「あ~あ」

K氏「そこで、役員に現場から立ち去るように指示。アリバイスタッフは、役員の車に乗って現場に戻りました。車の所有者との関係を追及されるのかと思いきや、結局轢かれた女性は軽傷ですみ、警察署での一辺倒な調書作成で終わり。被害者へ手厚い額の示談を済ませて、簡易裁判では“轢いたことに気がつかなかった”という言い訳がとおりました。結果、“負傷者救護義務違反”の罰金30万円で決着がつきました。これはさすがに罰金別途で500万円程度のギャランティーを頂戴しましたよ」

丸「そこから、本格的なアリバイ工作に乗り出したわけですね」

ヤクザの犯罪には地元の名士からの証言が有効

K氏「そうですね、ヤクザが起こす犯罪のもみ消し工作ですね。アリバイ作りです。雀荘から、飲食店、バー、スナック、キャバクラ、タクシー運転手、運転代行業者まで多岐に渡って抱えました。金を渡して“あの人ならあそこに座っていましたよ”と言わせるわけですね。とりわけ重宝するのが、市議会議員などの地元の名士ですね。お偉いさんは、警察に寄付や車両を寄贈しているので、署長もご機嫌取りに必死です。ましてやヒラの4課の刑事が捜査しづらい“聖域”になってしまっているんです。」

丸「ヤクザもベントウ持ち(執行猶予中)であれば、大金支払ってもいいリスクヘッジになるというわけですか。よく殺人などでは替え玉として、若い衆が出頭することがありますが……」

K氏「それがねぇ、替え玉の組員を用意できないときもあるんですよ。そんなときには、法廷に証人を送り込むこともあります。ヤクザは、突発的な傷害事件屋発砲事件が圧倒的に多いので、逮捕・起訴が容易なんです。でも、裁判所のあの緊張感の中でなかなか迫真の芝居ができる奴はいません。結果的には、物的証拠もなく、現行犯でなければお咎めはなかったです

丸「今もそういったアリバイ作りをされているのですか?」

K氏「いいえ。今は監視社会になってしまい、いたるところにカメラがあります。一昔前はそれが通用していたわけですが、今ではもうムリ。昔ながらの架空の会社を使った風俗嬢などのアリバイ作りの会社に縮小しました。ちょっと淋しいですが……

いかがでしたでしょうか?

僕もアリバイ工作を生業にしている業者がいるとはまったく知りませんでした。

今回の取材中、実は目の前にいるK氏も、「アリバイ作りの工作員なのでは?」と少し思ってしまったのですが、その質問はさすがに怖くてできませんでした

(C)写真AC

※画像はすべてイメージです。
(執筆者: 丸野裕行)

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