【試乗】ジャガー Iペイス|東京⇔京都往復1000kmで分かったプレミアムピュアEVの実力
ブランドの特性を乗り心地にも付与している
ジャガーが贈るピュアEVであるIペイスは、スポーティな圧倒的パフォーマンスとハンドリング。それに加えてデザインから分かるように空力を駆使したスタビリティの高さがひとつの魅力だ。
それはすでに、市街地と首都高速で証明済みである。
Iペイスは、電気自動車特有のバッテリー重量による上から押さえつけた乗り心地ではなく、ジャガーの伝統的な節度あるしなやかなサスペンションを保有している。
分かりやすく言い換えれば、硬くはないがフワフワではないと言ったところだ。
路面のインフォメーションをとらえながら、ハンドリングに影響をきたさない範囲で素早く収束する。
これがジャガーのサスペンションだ。
以前に試乗したときも、遠くへ行きたくなる乗り心地のよさを知ってしまったが、今回は1000kmのドライブを挙行した。
フル充電で400km近くを走行できるというが、そう単純ではないだろう。
それは百も承知、二百もガッテンである。
だからこそ不安要因を排除するために東名、新東名、新名神のルートで京都往復を行うことにした。
出発する前の晩にフル充電を行っているので、メーター表示ではおよそ380kmを走行できることになっている。
自宅から東名高速まで約5kmほどあるが、メーター表示では走行可能距離が3kmほどしか減っていない。
この調子で走っていけば岡崎S.A.までは行けると思った。
しばしばこのルートでの長距離試乗を行っているが、レンジローバーやBMW 7シーリズは京都までは1度のトイレ休憩程度で走れるほど疲れない。
それもあって、岡崎S.A.まで充電なしで済むじゃないか!と安直に考えた。
東名に乗ってACCを使って優雅なクルージングを楽しむ。
法定速度内で、時速90kmから100kmを行ったり来たりさせて走らせる。
大井松田で残量を見ると、走行可能距離が380kmから275kmに減っている。
まだ100kmも走ってないのに思っていたより減りが早い。
上り坂もあることだし致し方ない。
「充電のボヘミアン」になりたくないので、足柄S.A.に入って充電することにする。足柄に到着した頃はさらに減っていた。
ACCと上り坂のせいか想像以上にバッテリーの減りが早いが、ハンドリングと乗り心地は最高にイイ。
これまで試乗したピュアEVでは、最も楽しく疲れにくい乗り心地だ。
足柄S.A.で30分休憩しながら充電して出発だ。速度を法定速度にセットしてクルージングを楽しむ。
静粛性が抜群なので新東名ではゆったりとした気分を味わいながら、B&W社の音を聴きたくなる。
手持ちのiPhoneに入っている80年代の洋楽を聴くと、これまた最高なサウンドだ。TOTOの「アフリカ」の始まりのグルービーなリズムは、何もない大草原を走っているかのごとく気持ちの解放感を与えてくれる。できる限り走ってみようと思った。
浜松を越えて岡崎のS.A.で充電の予定だ。まだ100km弱は走れる残量はあるが、ここで充電しなければと不安になった。
しかし、充電を開始しようとしてもなかなか充電されない。何度もトライしてようやく充電が開始されるも、わずか15分で終了してしまう。
それでも50%を超えたので、伊勢湾岸道の長島P.A.まで走らせ充電する。少しは安心したが油断はならない。
岡崎S.A.ではソフトウエアのバージョンの違いからなのか原因は定かではないが、Iペイスには合わなかった。出発する前に上野毛にある日産でも充電しようと試みたが、やはりNGであった。
新名神には鈴鹿に最も新しいパーキングエリアがある。ここの充電器は素晴らしく反応が良い。しかも30分の充電で他の充電器よりも充電量が多くなった。
その後は草津で一度充電し、京都にたどり着いた。
狭い道もあるから注意は必要だが、ジャガーはランドローバー同様に見切りが良く、車両感覚がつかみやすい。
その点でも、ロイヤルワランティのサルーン系では乗りやすいジャガーはオススメである。
復路は京都で充電せずに、すべて高速道路での充電を任せることにした。
途中、充電スペースでガソリン車が休憩していたり、充電スペースが少ないために順番待ちをしたりしたが、清水P.A.を最後に東京まで帰着することができた。
東京⇔京都の往復で、もとても快適だった。京都の街を静かでゆったりと走る姿からは、古都に相応しい動力と新たなラグジュアリーEVのデザインをまとったIペイスならではの満足感を得られた。 そこに乗り心地と、スポーツサルーンのハンドリングをもち合わせている。
充電を気にしないで500kmを走らせれば、本物のラグジュアリースポーツサルーンでになるだろう。
現状では、長い走行距離と充電速度がアキレス腱となってしまう。
それらが克服できたときに、初めて本当の意味で安心して走らせるEVのグランツーリングが可能となる。
文/松本英雄、写真/松本英雄、柳田由人
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