タモリに「アイツは、『いい人』じゃなくて、『いい人だと思われたい人』なんだよ」と言われた男

jippo

人はみんな何かを演じているのかもしれない。そしてその何かが定着してくるのかもしれない。本当の自分がどこにあるかより、作り出した自分が映す周りの世界が見たいのかもしれない。今回はじっぽさんのブログ『いやしのつえ / 活字中毒R。』からご寄稿いただきました。

タモリに「アイツは、『いい人』じゃなくて、『いい人だと思われたい人』なんだよ」と言われた男
———-
鶴瓶はかつての遊び場を記憶を辿る(たどる)ように歩いた。歩けば人が集まってくる。途中、鶴瓶の姿に気づいたおじさんが、子供時代の鶴瓶が写った写真を慌てて家から持ってきて、「覚えてるか?」と話しかけてきた。鶴瓶の姿を見つけるといろんな人が挨拶(あいさつ)をする。小さな子供が鶴瓶の顔を見て、「ツルベだ! ツルベだ!」と指を差す。この日、一緒に写真を撮ってと求められた数は十人を下らない。サインも求められれば、鶴瓶は相手の名前を書き記す。

「俺(おれ)に話しかけるとき、みんなちょっと笑てはるやろ。山田洋次さんが『いいよなあ、鶴瓶さんは。寄ってきたら、みんな笑ってる』って言ってた。俺(おれ)、それ、望んでたんやもん。若いときから。自然にしてるというよりも、目指さないとできない。

子供が『ツルベ!』って言ってくれるのは、『ツルベ!』って言ってもらおうと思ってやってることなの。だから自然じゃないよね。だけど、そうやってることが三十八年続くと、もう自然なの。だからよう言うの。俺、ホンマにどんな性格かもわからんようになってもうたって」彼は笑った。

「つまり、嘘(うそ)か本当かわからん。嘘(うそ)も本当になってるということやろうね。でもそれが正解なんよ。人間って、もうね、五十過ぎたらどれが実体かわからんことで出来上がっている。人に対してイヤな人やなって思われてさえなければ、すべてそれが正解なんよ。その人は頑張ってるの」
——『Switch』VOL.27 NO.7 JUL.2009(SWITCH PUBLISHING)「LONG INTERVIEW~鶴瓶(つるべ)になった男の物語」より 取材・文:川口美保——

ちょうど1ヵ月くらい前、「笑っていいとも・増刊号」を観ていたら、映画『ディア・ドクター』の地方ロケで地元の人たちにサインしまくっていたという鶴瓶さんのことを、タモリさんが「アイツは『いい人』じゃなくて、『いい人だと思われたい人』なんだよなあ」とからかい半分に評していたのが印象的だったのです。ロケ地の各家庭には、鶴瓶さんのサインが一家に2~3枚くらいはある、とか、映画の他の出演者のサインを鶴瓶さんに頼む人までいた、というような話まで紹介されていました。

タモリさんが「いい人」じゃなくて、「いい人だと思われたい人」と言ったのは、鶴瓶さんが裏表のある人間だと言っているのではなくて、「いい人じゃないといけない」と努力し続けている人だということなのだろうなあ、と、このインタビューを読んでわかったような気がします。

僕はテレビの画面にいる鶴瓶さんを観て、「ああ、いい人なんだなあ」と思いながらも、「結局そういうのって、持って生まれた性格というか、才能みたいなものだよな、僕みたいな社交性のないタイプには、ああいう生き方はできない」と感じていました。しかしながら、鶴瓶さんですら、もともとの性格はあるのだとしても、「いい人」でいるために、常に努力と自戒を重ねているのだということが、『Switch』のこの号には描かれています。

鶴瓶さんのような芸能人の場合、接する人が多いだけに、みんなに対して「いい人」であり続けるのは本当に大変なはず。人気が出れば出るほど、周りからちやほやされるし、自分の都合にかかわらず周りから声をかけられたり、つまらない取材を受ける機会も多くなります。そして、ちょっとでも不機嫌さや面倒くささを表に出せば、「増長している」と思われてしまう。いくら「望んでいたこと」とはいえ、現在のような人気者になるまで「いい人」でいるための努力を「自分でも自分の本来の性格がわからない」くらいに続けるというのは、並大抵の努力ではありません。

僕たちは「いい人」であることを「生まれ持った性格」だと思いこみがちですが、実際に「いい人」でいるために必要なのは、ちょっとした「気配り」や「他人の話をキチンと聴くこと」「自分がキツイときでも八つ当たりしないこと」など、「だれにでもやろうと思えばできないことはないこと」ばかりです。でも、これをいつでも、だれに対してでも続けていくのは、本当に大変なことなのでしょう。
 
———-
「自然にしてるというよりも、目指さないとできない。子供が『ツルベ!』って言ってくれるのは、『ツルベ!』って言ってもらおうと思ってやってることなの。だから自然じゃないよね。だけど、そうやってることが三十八年続くと、もう自然なの。だからよう言うの。俺(おれ)、ホンマにどんな性格かもわからんようになってもうたって」
—–『Switch』VOL.27 NO.7 JUL.2009(SWITCH PUBLISHING)「LONG INTERVIEW~鶴瓶(つるべ)になった男の物語」より 取材・文:川口美保——

 「いい人」っていうのも、ひとつの「芸」なのかもしれませんね。

(こちらの記事はじっぽさんのブログより寄稿頂きました : 元記事はこちら

■最近の注目記事
ネット政治献金の是非
入浴する場面が児童ポルノとされた事例
TBSの自己実現。(相手を殺して)明日にきらめけ。

  1. HOME
  2. ガジェ通
  3. タモリに「アイツは、『いい人』じゃなくて、『いい人だと思われたい人』なんだよ」と言われた男
  • ガジェット通信編集部への情報提供はこちら
  • 記事内の筆者見解は明示のない限りガジェット通信を代表するものではありません。