大衆食ライターが麺料理の宝庫岩手へ。すすってすすりまくる男ひとり旅
ども、はじめまして。
自分は大衆食ライターの「刈部山本」という者で、普段はローカルに愛される激渋な町中華や酒場を探して、東京近郊の路地裏からロードサイドまでを徘徊している。
盛岡には「三大麺」と呼ばれる麺料理があるらしい。そんなご当地グルメがとーっても気になったので、東北新幹線でビューっと一気に岩手県は盛岡まで、体感しに足を延ばしてみようじゃないか! ってことで、JR東京駅にやってきた。
東京駅
丸の内駅舎は拝んでおくべし
建築家・辰野金吾氏が設計し、1914年に完成した東京駅丸の内駅舎。
しかし1945年5月の空襲で大きく焼失。
そのため、駅のシンボルとなっていたドーム型の屋根を、戦後生まれの人間は見ることが出来ずにいたのだが、なんと2012年に見事復活!
やっぱりこの姿がカッコイイね。
おっと、見惚れている間に発車の時刻だ。東北新幹線「はやぶさ」で、いざホクホク東北へ!
新幹線、「E5系」の隣に「E2系」が並んでいる!
目的のJR盛岡駅までは、東京駅から2時間10分ほど。
スムーズな加速でビル群をあっという間に抜け、埼玉、栃木、福島と入っていく。車窓から奥羽山脈が見えてくると、宮城県。ここまでくると、目的地である岩手に近づいた実感が湧いてくる。
盛岡駅
IGRいわて銀河鉄道へワクワクの初乗車!
盛岡駅に到着。すると、先頭にくっついていた秋田新幹線「こまち」が切り離される。
貴重な瞬間をしっかりと目に焼き付け、北改札口を出て1階へ降り、少し歩いたところにある「IGRいわて銀河鉄道」の盛岡駅改札へ。
青のラインに白抜きで「IGRいわて銀河鉄道」と書かれていて、なんだか今にも列車が夜空に飛んでいきそうな雰囲気だ。
列車の発車時刻が近づくと、車両が近づいてきた。
IGRってロゴは近代的でカッコイイし、行き先の「金田一温泉」っていうのも、レトロな雰囲気を醸し出していてギャップ萌えだ。
街中を過ぎると、視界が開け、遠くに山々を望む風景へと変化していく。周囲の木々は葉を落とし、日に照らされると金色に輝く冬の景色が続いていく。
いわて沼宮内駅
乗者数が一番少ない新幹線駅で焼きうどん
見とれているうちに、盛岡駅から30分ほどで、いわて沼宮内(ぬまくない)駅に到着。
ホームの奥を見ると、上の方にJR東日本の文字が見える!
実は、いわて沼宮内駅には新幹線も停まるそうなのだが、JR東日本管内の新幹線が停まる駅としては、乗者数が一番少ない駅らしい(2018年度。1日平均85人で、盛岡駅の0.01%)。
駅ビルのような形で、岩手広域交流センター「プラザあい」が隣接している。
この1階に、B級ご当地グルメ「いわてまち焼きうどん」を提供する食事処「ダイニングYAYA」があるという。
一見、お菓子や飲み物の売店のようだが、中は食堂風。
テーブル席に着いて、この店オリジナルの「海鮮焼きうどん(税込770円)」をいただく。
見るからに具だくさん!
海鮮はイカ・ホタテ・エビ・アサリまで入り、野菜は地元で穫れたものってのが嬉しいね。そこに鰹節がかかり、紅生姜が添えられるという豪華さ。
塩味で胡椒がいい感じに効き、意外とパンチがある。そこに柔らかめながらウェーブがかったうどんがよく絡み、たくさんの具と渾然一体となった味わいが口中に広がる。一般的な焼きうどんより食べごたえを感じるね。
レストラン石神の丘
彫刻とパスタのようなうどんに遭遇
腹ごなしにいわて沼宮内駅の周りを散策することに。
駅を出ると山が見える。山の方に向かって、緩やかに上り坂となっている。
北上川に沿うように歩くこと約10分、丘状のところに何やら人工的な物体を発見した!
作品名と作者名が書かれたプレートがあるので、どうやら彫刻作品のようだ。この丘には他にも作品があり、歩道を登っていくと「石神の丘美術館」という名の建物が現れた。
石神の丘美術館内には特別展などを開催する企画展示室があるが、彫刻は建物奥の屋外展示場にたくさんあるとのこと。
『森の友達』と題された作品。頭に乗ったフクロウがまさにフレンドリー!まるで浮かんでるように見える、『霊的果実』という作品。
夏にはラベンダーが咲き乱れるという、岩手町を一望できるポイント。まさに絶景!
現在は一部リニューアル中で、2020年2月10日~4月中旬は完全休館になるが、2020年初夏に全面リニューアルを終える予定だ。生まれ変わった美術館で絶景を堪能していただきたい。
美術館を出ると、目の前に道の駅併設のレストラン「レストラン石神の丘」があった。
なんとここも焼きうどんが名物となっているではないか。こりゃ食べ比べないと。
B-1グランプリに出展したという、「いわてまちキャベ塩焼きうどん(税込720円)」を注文。
なんだかパスタみたいにヒネって盛り付けられてるぅ~。麺を引き上げて食べてみると、これがやっぱりパスタっぽい。
平べったい麺で、フィットチーネのよう。頂点に盛られた肉はやまと豚で、タレの味付けが甘辛で、まるで生姜焼きのよう。そして、なんといっても野菜。キャベツがホント軟らかく、甘くて瑞々しい。最初、量が少なそうに見えたが、見た目以上にボリューミー。
お腹いっぱいなのに、どーしても気になった「ソフトクリーム ブルーベリー(税込320円)」を追加オーダー。
これがなんとも、ブルーベリーの味わいが濃い! もう無くなってしまうのかと残念に思うくらい、クセになってしまった。
満腹の幸せ気分でまた歩いて、いわて沼宮内駅へ戻ってきた。再びIGRいわて銀河鉄道に乗り盛岡駅に戻る。
宿は盛岡駅から歩ける距離、明日に備えて休むとしよう。
盛岡市街
市街地でまさかのアレに出会う!?
2日目。盛岡の中心地は盛岡駅から少し離れている。徒歩で20分ほどのところに盛岡城跡があり、安土桃山時代に南部信直によって築城が始まったと伝わる。
市街には明治維新以降、岩手の県都(県庁所在地)にふさわしい近代的な建物がたくさん建てられた。そんな建物の中で今回、一番度肝を抜かれたのが「岩手銀行赤レンガ館」。盛岡城跡から徒歩3分ほど。
どうこれ? このド迫力な建物、どっかで見たことない??
そう、冒頭のアレ、東京駅にソックリでしょ!?
それもそのはず、設計したのは辰野金吾氏。
赤茶色のレンガと白い花崗岩(かこうがん)のパターンが東京駅そのもの。
さらに散策を続けると、蔦の絡まる洋館に行き当たった。
岩手銀行赤レンガ館から徒歩10分ほど。こちらは廃墟ではなく、1977年に盛岡市保存建造物に指定された立派な文化財である「旧石井県令邸」。現在の県知事にあたる県令の第2代、石井省一郎氏の私邸として1885〜86年に建設された。
半円の明かりとりなど、今見ても相当にモダンな建物。ややもすると、怖いだの危ないだのといわれ取り壊されてしまいかねない建物を、令和の現代まで保存している盛岡市の姿勢には感服する。
さて、そろそろ盛岡駅に戻ろう。帰り道、北上川の向こうに、雪が霜降り状にかかった岩手山が見事に浮かび上がっていた。
旧石井県令邸から徒歩25分ほどで盛岡駅に到着。この旅のラストは、冷麺で〆よう。「大同苑」は、1965年創業の※焼肉と冷麺の店で、 その支店「大同苑 盛岡フェザン店」が駅ビルに入っているのだ。
※編集部注:大同苑 盛岡フェザン店では焼肉メニューの提供はありません
旅行客でもフラッと立ち寄りやすい開放的なお店で、早速いただくとしよう。
「冷麺(税込1,078円)」の登場。透き通ったスープは清涼感があって、見惚れてしまう。
食べてみると、ツルツルで固めの麺は、思った通りのシコシコとした食感が心地いい。スープは甘めで、辛さが調整出来るように辛みが別皿に添えられている。
これを混ぜながら食べると、酸っぱ辛いキムチ的な味になる。全部入れると結構辛いが、添えられたリンゴが箸休めとなる。かなりシャキシャキ感が残っていて、意外と合うね。
こうなったら、どうしてもこちらの焼肉も食いたい!
「名物ネギタン塩(税込385円)」を追加。
刻みネギを巻いた牛タンをネギで縛った一品。これに、添えられた絞り器で絞ったレモンをかける。タンはしっかり噛みごたえがあって、刻みネギとともに牛タンの旨味が詰まった肉汁が口内にジワ~っと溢れてくる。フレッシュなレモンとの相性もバツグン。
大満足なまま、盛岡駅から再び東北新幹線「はやぶさ」に乗り込んで約2時間10分で東京駅へ。
東京と盛岡という、自分の中で接点のなかった2つの都市が、辰野金吾の近代建築で繋がり、美味しいご当地グルメに引き合わせてくれたような気がした。
また新たな出会いを求めて、これからも旅をしていきたいと思うのだった。
東京駅
掲載情報は2020年2月6日配信時のものです。現在の内容と異なる場合がありますので、あらかじめご了承ください。
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