自己啓発書は本当に役に立つの?

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 およそ10年前、ベストセラーとなった『ついていったら、こうなった』(彩図社/刊)で、キャッチセールスや出会い系サイトの悪徳業者への体当たり取材をレポートした多田文明さんの次なる標的は“自己啓発書”!?
 そこで、本の情報を扱うインターネット番組「新刊ラジオ第2部」では、『崖っぷち「自己啓発修行」突撃記 ビジネス書、ぜんぶ私が試します!』(中央公論新社/刊)著者の多田文明さんにインタビューを行いました。

 ◇   ◇   ◇

―これまでに行ってこられたキャッチセールスなどの取材対象から一転して、今回はどういった経緯で自己啓発書の取材を行うことになったのでしょうか。

「これまで、徹底した現場主義を貫いてきましたので、潜入先に関する事前情報はできる限り排除して自分の実体験でルポルタージュを書いてきました。それが最近は、インターネットの普及により、一般の方も自らの悪徳商法の体験などを公表できるようになりましたので、私が潜入するより先にネット上に悪徳業者の勧誘手口が紹介されてしまうこともでてくるようになりました。
そこで、これからはネットで体験談を書く人たちとの内容の差別化を図り、色々な悪徳商法の関連本よりも深みのある文章を書くために、洗練された取材方法や、さまざまな知的ノウハウが必要になるだろうと考えたのがきっかけです。そんなときに旧知の編集者から声がかかり、自らを成長・変化させる糧として、自己啓発書・ビジネス書を体験取材するルポルタージュを執筆することになりました」

―本書の企画が始まる以前は、日常的に自己啓発書を読む習慣がなかったそうですが、4ヶ月という取材期間に50冊もの自己啓発書を読破する中での苦労はありましたか。

「そうですね、悪徳商法の取材で『自己啓発』という名のもとに様々なセミナーに誘いこまれ、色々と酷い目に遭ってきたので、あまり好んでこのテーマの書籍を手に取ってこなかったですね。今回、初めて大量の自己啓発書を短期間で読んでみて、一度読んだだけでは理解できないような読みにくさのある本もあり、驚いてしまいました。たとえば、翻訳書の冒頭によく載っている(まるで小説のような)文章は、“これに何か意味はあるものなのか?”とか(笑) 自分の専門分野の事前知識のある本でしたらすぐに読めますが、まったく新しい分野の本が続いたので苦戦しました」

―読破された本は、世界中で読み継がれている古典や、名著と呼ばれる本が多くありましたが、実際に学びになったり、役立ったりする部分は多かったのでしょうか。

「“(本の教えを)全部自分の生活にあてはめて使ってみたら、自分の人生おかしくなるな”と思いました。ビジネス書全般に言えることですが、まったく相反した考え方が書いてあることが多くあります。たとえば、『自助論』(サミュエル スマイルズ/著)なんかは真面目な本になっていて、“人間として徳を持って生きなければならない”と素晴らしいことが書かかれています。一方、『非常識な成功法則―お金と自由をもたらす8つの習慣』(神田 昌典/著)では、“悪の感情を逆に利用して、どんどん稼いでいくことも最初は必要だ”と主張しています。
じゃあ現代にどっちがマッチするのかといえば、どちらかといえば神田さんの方が合うのではないかなと私は思います。そうかといって、『自助論』にだって使える部分はもちろんあるし……というところが難しいところで、どっちをとればいいのかなと思ってしまいます」

―50冊全部を読んでみて、面白いと感じた自己啓発書と、そうでもなかった本とでは、それぞれどのような特徴がありましたか?

「やはりライターとして飯を食っている身としては、“人と違う目線を大事にする”“自分なりの切り口を大事にする”ということを意識しますから、そういう意味では、『企画脳』(秋元康/著)は面白かったです。さすがAKB48を生み出した方だけあって、独自の目線の使い方や、考え方は非常に勉強になりました。実際、秋元康さんの本の教えを実践して、出会い系サイト潜入の企画でテレビ番組への出演をゲットしたりもしました(笑)。
その一方で、やはり内容に物足りなさを感じられる本もありました。たとえば、“これからの世の中は○○が必要です”と言いつつ、結論が“だから学校で勉強して下さい”だったり(笑)。他には、「名著」と言われてはいるものの、私にとって非常に難解な本もありました。こういった本を無理して読み続けていたら、本そのものを嫌いになってしまう気がします。いくら「名著」と言われているからといって、無理は禁物だと思いますね。もちろん読みやすい「名著」もありましたし、人によって合う、合わないがあるものだと思います」

―今回、自己啓発書を読んでの突撃記ということで本のノウハウを身をもって実行されていましたが、自己啓発書のノウハウは実際にうまくいきましたか。

「実体験として、自己啓発書から学んだノウハウを使って、出版社への企画持込の営業電話をしました。そのとき、自己啓発書から学んでとても役に立ったのが、パターン化するというノウハウです。反応が悪い人ばかりに当たって断られ続けても、その度に一喜一憂するのではなく、良い人に出会うまでは作業として淡々とこなします。それで、反応の良かった人にあとでもう一度電話をするというやりかたですね。今までは一人ひとりに精魂こめて電話で企画を説明していたのですが、それだと断られすぎて心をズタズタにされて、ああ、もう電話できない……となってしまっていたので、これは役に立ちました。
他には、“潜在意識に働きかけて、できると思えば上手くいく”という教えがありましたので、“上手くいく”と思い込んだだけで営業先に行ってみましたが、これはうまくいかなかったです。自分の話を一生懸命しすぎて、相手の話を聞いていなかったという失敗をしてしまいました。ノウハウに集中しすぎるとそれに気を取られて、他のことを忘れてしまいますから、なかなかむずかしいものですね」

(Podcast番組「新刊ラジオ第2部@プレミアム」今週のスゴい人のコーナーより)



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