【ここは法廷だゼ!】「ちゃんとしろよ!」「テヘッ!」DVを訴えていた女被告人が法廷で見せたB級ドラマ

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酒は飲んでも飲まれるな

ある日の東京地裁、罪名は傷害。被告人(46)は、すさまじく痛んだロングの金髪(プリン状態)を、なぜかサイドの一部分だけ垂らして、残りを1つに結んでいるという不思議な髪型だった。メガネに恰幅のよい体つき、一瞬、男性と見間違えたが女性である。

この事件は今年4月の発生当時、報じられている。それによれば被告人は同居男性を包丁で刺し、殺人未遂の現行犯で逮捕されていた。このとき「男性から暴力を受けていた」と語っていたため、DVの果てに感情が爆発して起こした犯行ではないか……と気にかかり傍聴したのだが、DVというよりも荒くれカップルの末路というほうがふさわしかった。

2人の子供を養護施設に預け、生活保護で暮らしている被告人。今年1月に知り合った男性と交際を始め、彼氏の方が被告人宅に頻繁に訪れるような形で半同棲に。ところが2人は、酒に酔って口論したり、つかみ合いのケンカをしては、被告人が110番通報をして、警察官が臨場する……と、すさんだ一連の流れを繰り返すようになってしまった。しかも被告人はなぜか被害届を出さず、毎度ケンカしては110番通報していたという。事件のときもこの流れに。警察官もさすがにこの日は「ケンカばかりしているなら別れろ」と、至極真っ当な助言をしている。

警察署で事情聴取を受け、被告人と彼氏は明け方、それぞれの家に帰ったが、被告人から電話をかけ、また再び落ち合う事に。ところが彼氏が「待たされた」とゴネたことから再びつかみ合いのケンカとなり、最終的に事件に発展……という流れだった。被告人は逮捕当時、臨場した警察に対して、なぜか果物ナイフを振りかざして抵抗したともいう。このいきさつだけでゲンナリしてしまう。ケンカもひとつのプレイなのかと疑いたくなるほどだ。

これまでのDVがらみの裁判と比べ、被告人は被害者に恐怖を感じているようには見えなかったのだが、涙声で、彼氏から受けていた暴力を訴え、事件当日のケンカでもアザができて悲しかった、と述べていた。そして今回すぐに110番に連絡した理由については、

「いつもだと、必ず仕返しが来るんですが、その日は妙にリアクションなかったので、これはいけないな、と思って」

と述べる。男性は出血性ショックの傷害を負っていたので、リアクションがないのは当たり前だ。通報が遅れていたら危なかったのではないだろうか。

情状証人としては元カレが出廷。ここまでだらしのない被告人なのに、男が切れていないのが個人的に不思議である。元カレは被告人の飼っていた猫を預かってくれているという。今後の監督を誓ったのち、最後に被告人に対して「ちゃんとしろよ、って感じですね」と笑いながら語りかけ、被告人も「テヘッ」みたいな泣き笑いの表情でうつむく珍場面も。安っぽいドラマを見せつけられているかのようで正直閉口してしまう……。

DVといいながら、彼氏から距離を取る事もせず、子供は施設に預け、生活保護で酒に溺れる日々。人間、誰しも弱気になるときはあるが、すべてにおいて何のポリシーも根性も感じない被告人の言動には、人ごとながら、ため息がでそうだった。求刑は懲役1年6月。子供を引き取り、一緒に生活できる日は来るのだろうか?

画像引用元:flickr from YAHOO
http://www.flickr.com/photos/tokyofoodcast/937554324/

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高橋 ユキ

傍聴人。近著『木嶋佳苗 危険な愛の奥義』(徳間書店)、『木嶋佳苗劇場』(宝島社)ほか古くは『霞っ子クラブ 娘たちの裁判傍聴記』(新潮社)『あなたが猟奇殺人犯を裁く日』(扶桑社)など。好きな食べ物は氷。

ウェブサイト: http://tk84.cocolog-nifty.com/

TwitterID: tk84yuki

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