新規事業や社内ベンチャーを立ち上げるために今できることとは?成功の秘訣
新規事業や社内ベンチャーに興味がある方は、会社員として働きつつ独自のビジネスアイディアを形にしたい、実現させたいと思っている人も多いことでしょう。
今回は、新規事業・社内ベンチャーを成功させるコツについて、12万部を超えるベストセラーシリーズとなった『プロフェッショナルサラリーマン』(プレジデント社、小学館文庫)の著者、俣野成敏さんに回答していただきます。
こんにちは。俣野成敏です。こちらのコーナーは、主にビジネスパーソンの方を対象に、よくある悩みや疑問にQ&A形式でお答えしていく、というものです。
本コーナーを執筆する目的は、これをお読みのあなたに、今までとは違った視点をご提供することです。少しでもお役に立ちましたら幸いです。
“社内ベンチャー”とは?利用するメリット
【本日の質問】 「新卒で入った会社に勤めて10年になる者です。現在、『自分で事業をやってみたい』という思いがあります。俣野さんは社内ベンチャー制度に応募し、それが飛躍するキッカケになったそうですが、新規事業や社内ベンチャーを成功させるコツは何でしょうか?」
もともと、名詞である “venture” には3つの意味があります。1つ目が、金銭的リスクを背負った事業。2つ目が、投機や思惑といった意味。そして3つ目が冒険という意味です。3つ目の意味は、実際には “adventure”が使われることが多いでしょう。
ここから、ベンチャー企業とは「大手が敬遠しがちな、リスクがあるが新規性のあるビジネスに果敢にチャレンジする企業」という意味で使われてることが多いでしょう。
そのベンチャーを既存の企業内で立ち上げよう、というのが社内ベンチャーです。
一般に、“社内ベンチャー”という呼び名を使っているのは大手企業が中心です。親会社がベンチャー企業の場合は、もとがベンチャーなので、何か新しい事業を起こすのは特別なことではありません。
もし、会社に社内ベンチャー制度があった場合、それを利用するメリットは次の3点になります。 《社内ベンチャー制度を利用するメリット》
1、親会社から出資を受けられる
2、親会社のブランドを使わせてもらえる
3、金銭的なリスクを負わずにチャレンジできる
会社に対して、これらを期待しない、もしくは期待できないというのであれば、最初から独立を視野に入れて行動するのも一つの手です。
新規事業・社内ベンチャーに挑戦するための日々の心構えとは
社内ベンチャーを目指すにしろ、独立を視野に入れるにしろ、いきなり挑戦するのではなく、普段の仕事から「助走期間」を設けることを勧めます。
会社員は社名のほかにも、ブランドや知的財産、人材や各種設備など、社内に用意されているリソースがあります。それらを活用しながら、
「いずれ新規事業を立ち上げるための実験の場」として、会社の売り上げに貢献しつつも「この経験を新しいビジネスに応用できないか?」と日頃から意識して行動するのです。
私の経験からすると、会社でその“前段階”を経験することは十分に可能です。むしろ会社員こそ、独立するための貴重な経験を積める場所だ、と言ってもいいかもしれません。
成功のポイントは、“社内初”のアイディアかどうか
新規事業の立ち上げや社内ベンチャーとして成功するポイントは、「組織横断型の仕事」をすることです。
私の事例をお話ししましょう。
私は新卒入社したメーカーで最初は貿易実務から始め、後には生産管理の部署に異動しました。私が会社に入社した1990年代は、それまで拡大傾向にあった日本経済のバブルが弾けて急速に冷え込むと同時に、生産拠点が中国などに移っていった時期。物流が大きく変わり、それまで以上に、部品や完成品の流れが目まぐるしく変化しました。
特に輸出入が増えてくると、考えなければならないのが関税です。通常、外国から原材料を輸入する際には関税がかかります。ところが、税関から許可を得た保税工場で外国製の原材料を加工・製品化すると、関税の一部が免除されます。
そこで、社会情勢の変化によって生まれた「関連子会社に保税制度を導入する」という、それまでは存在しなかった新しい業務に、私は手を挙げたのです。
それは、社内の誰もが未経験で、上司すらもいないプロジェクトでした。自分で考え、行動しなければならず、他部署や、場合によっては社外の協力も仰がなければなりません。これが、「組織横断型=部署を超えた仕事をする」ということです。こうした経験が、後の社内ベンチャーの立ち上げや、独立する際に活きるのです。
まずは「周りが価値を感じていることで、かつ、まだ始めていないことはないか?」と考えながら仕事をしてみましょう。
「アイディアを具現化する」経験を積むことが重要
新規事業や社内ベンチャー制度にチャレンジする人は、新規プロジェクトを立ち上げ、形にする経験が必須です。
新規の案件というと、多くの人は奇抜なアイディアを求めがちですが、アイディアだけあっても、それを具体化できなければ意味がありません。
私からのオススメとしては、まずは社内イベントや社員旅行など、小さくてもいいからプロジェクトの立案から実行までを、通して経験してみることです。誰かが困っていることや面倒に思っていることにこそチャンスの芽があります。
もし、「社内にそういう仕事がない」ということであれば、副業を始めてみるというのも1つの選択肢です。副業とはいえ、自分で立ち上げ、事業を維持・発展させるプロセスに大きな違いはありません。ポイントは、一から十まで自分を中心に回してみることです。仮に、副業で本業を上回る収入を得られるようになれば、それがもっともスムーズに独立に移行できる道となるでしょう。
まとめ
以上をまとめると、新規事業や社内ベンチャーを成功させるために今磨いておきたい3つのことは下記の通りです。
・日ごろから「この経験を新規ビジネスで応用できないか?」と意識する
・社内初のビジネスアイディアに目をつける
・アイディアを具現化する経験値を積む
プロフィール
俣野成敏(またの・なるとし)
ビジネス書著者/投資家/ビジネスオーナー
30歳の時に遭遇したリストラと同時に公募された社内ベンチャー制度で一念発起。年商14億円の企業に育てる。33歳で東証一部上場グループ約130社の現役最年少の役員に抜擢され、さらには40歳で本社召還、史上最年少の上級顧問に就任する。2012年の独立後は、フランチャイズ2業態6店舗のビジネスオーナーや投資家として活動。投資にはマネーリテラシーの向上が不可欠と感じ、現在はその啓蒙活動にも尽力している。自著『プロフェッショナルサラリーマン』及び『一流の人はなぜそこまで、◯◯にこだわるのか?』のシリーズが、それぞれ12万部を超えるベストセラーとなる。近著では、『トップ1%の人だけが知っている』(日本経済新聞出版社)のシリーズが11万部に。著作累計は45万部。ビジネス誌の掲載実績多数。『MONEY VOICE』『リクナビNEXTジャーナル』等のオンラインメディアにも数多く寄稿。『まぐまぐ大賞(MONEY VOICE賞)』を3年連続で受賞している。
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