ラジオならではの手法で“読書離れ”食い止めたい
現在、J-WAVE(81.3FM)で放送中の「DOCOMO SOUNDS OF STORY 〜ASADA JIRO LIBRARY〜」(毎週土曜日20:00〜20:54)が幅広い世代からの人気を博しています。
この番組は、小説家・浅田次郎さんの短篇小説を、実力派俳優や声優、アーティスト、ミュージシャンなどが週替わりでストーリーテラーとなって、朗読形式で届けるものです。
「最近、若者を中心に“読書離れが進んでいる”と言われますが、ラジオならではの手法でもっと本に触れる機会を持ってもらえるような番組を作ろうと思いました」と語るのは、番組プロデューサーの宇治啓之さん。
今回は、その宇治さんに、番組についてお話をお聞きしました。
―この番組はどういった経緯でスタートされたのでしょうか。
宇治「普段から、本を手に取ってもらう機会が少ないということを個人的にも感じておりまして、ラジオならではの手法で“本を手に取るきっかけ”となるような番組ができないかなというところからスタートしました。
なぜ浅田次郎さんの作品かというと、やはり短編小説の名手と言いますか、日本を代表する作家さんですし、表現としても独特の言い回しはありますが、難解すぎるわけでもありません。特に『霞町物語』(講談社/刊)は、浅田先生の青春時代の経験ともリンクしている作品だと思いますが、江戸っ子の粋というか見栄というか、ぶっきらぼうにやりつつも家族の絆があるストーリーで、そういう風情みたいなところや、良い作品に出会えたあとの心に残る余韻みたいなものを番組としてリスナーに届けたいと思って始めたのがきっかけです」
―ストーリーテラーとなる演者さんのキャスティングはどのように行っているのでしょうか。
宇治「作品を読んでのイメージで決めることもありますし、今後を含めて答えると、意外性のあるところでも挑戦してみたいです。主人公に合わせてキャスティングをしているとそれはそれで幅の広がりがないので、実際に聴いていて浅田先生の世界観を壊さないところで、どう勝負していくかというところですね」
―過去の作品で印象深い作品はありましたか。
宇治「本当に毎回が印象深く、作品も読み手のストーリーテラーの方も違いますから、どれというのは正直上げられないのですが、その中でも作り手として“この番組だからできるのかな”というのが、杏さんの『青い火花』の放送です。
主人公は少年なので、テレビや映画だったら杏さんにはお願いできません。少年ですから(笑)この作品を少年として杏さんに読んでもらったとき、浅田先生の世界観が壊れてしまわないかというと、そんなことはないと思ったんですね。また、杏さんは浅田先生の大ファンということで縁もあり、事前にお渡した台本もかなり読み込んできてくれ、打合せのあともスタジオの脇で体育座りをして書き込みをしながら更に読み込んで下さっていました。“これから映画でも撮るのか”というくらい集中して頂いて、色んな意味で印象深かったですね」
―6月16日(土曜)放送になります、小倉久寛さんの朗読による『鉄道員(ぽっぽや)』について、聴きどころや注目ポイントなどを教えていただけますか。
宇治「番組も4月から始まって2ヶ月ほどになりましたが、ここでひとつの山を作りたいと思って、映画化もされた『鉄道員(ぽっぽや)』を出すことに決めました。映画を見られた方は、やはり主人公の佐藤乙松は高倉健さんのイメージが強いと思うんですが、本を読んでみて、番組では素朴さというか純朴さというか、その辺を出せたらいいなぁと思い、小倉久寛さんをキャスティングしました。
本を読んでいる方はそれぞれのイメージがあると思いますが、映画を見ている方は、どうしても高倉健さんのイメージだと思うので、そこは奇をてらうわけではありませんが、作品のイメージをあえて大切にして“この番組はこうきたか”と楽しんでほしいです。
聴きどころでいうとネタバレになるので言いにくいのですが、ある女性が出てくるシーンでの可愛らしさというか、せつなさというか、あたたかさというか、愛が溢れる感じのところをラジオを通して聴いてほしいなと思っています」
(了)
■番組公式ページ
http://www.j-wave.co.jp/original/soundsofstory/
●(新刊JP)記事関連リンク
・浅田次郎の名作を俳優&アーティストが熱演
・失われた東京の風景が杏の朗読でよみがえる
・『太宰は女である』の真意とは?
ウェブサイト: http://www.sinkan.jp/
- ガジェット通信編集部への情報提供はこちら
- 記事内の筆者見解は明示のない限りガジェット通信を代表するものではありません。