震災ガレキ処理は日本の技術力見せるチャンス

 私たちが生活すると、必ず出るのが「ゴミ」です。
 ゴミは持ち主にとって不用になったからこそ廃棄されるわけで、私たちはそれらに価値がないと思いがち。しかし、ゴミはアイデア次第で立派な経済的価値を持つことができるのです。
 『「ゴミ」を知れば経済がわかる』(PHP研究所/刊)は、東南アジア各国を旅しながら各地のゴミ処理事情を調査した瀬戸義章さんが、具体的事例を交えながらゴミが持つ経済への影響力を解説しています。
 瀬戸さんいわく、ゴミには我々が考えている以上に多くの可能性があるそう。
 今回はご本人にお話を伺い、その可能性について語っていただきました。今回は後編です。

―本書には、東南アジアの例を中心に、ゴミを再活用することによってビジネスが生まれ、お金が動くというケースが数多く紹介されていました。日本でもゴミの再利用の取り組み自体はされていますが、ビジネスという切り口で見るともっとやれることはあるのではないかという印象を持ちました。こうしたビジネスについて、何かアイデアがありましたら教えていただけませんか。

瀬戸「私はリサイクルとBOPビジネスとを組み合わせたらどうかと思っています。BOPビジネスとは、世界の貧困層に向けた商売のことです。1日200円以下の暮らしをしている人々は、世界に26億人いると言われています。彼らは“最貧困”という扱いですが、まったく現金を持たないわけではありません。彼らの生活をより良くする製品を作り、50円で販売したとするとどうでしょうか。20億人が買えば1,000億円の売上になります。
本書では、フィリピンのスラムで1万世帯以上に利用されている“ペットボトルランプ”などを紹介しています。これは、水と漂白剤を入れたペットボトルを天井に差し込み、太陽光を乱反射させることで、窓のない部屋でも日中、明かりの下で過ごせるというものです。
貧困層向けの製品は限りなく安く作り、流通させなければなりません。そのためには、たくさんあるゴミを使うことが、コスト削減の大きな一手ではないでしょうか。例えば、貿易に使う梱包材を使って家具を作る、トイレを作る、水の浄化設備を作るなどということができればどうでしょう。輸送費をかけずに、廃材をリサイクルしながら、貧困層の人々を救い、さらに売上を得ることができます」

―本書からは不用とされたものを再び生かすことの重要性を読み取ることができます。これを日本に当てはめた場合、私たちにはどんなことができるのでしょうか。個人の取り組みという観点と、社会全体での取り組みという観点、両方をお聞きしたいと思います。

瀬戸「個人でできることは、“不用品で楽しむ”ことではないでしょうか。おそらく誰しもが、引き出しの中や、押し入れの奥、部屋の隅に、もう使わない物が眠っていると思います。それは、フリーマーケットや交換会などで、喜んでもらう誰かに渡すことができます。あるいは、手芸・工芸を習ってリメイクすることだってできるでしょう。手間を少しでもかけることで、《ものづきあい》が変わります。
社会全体では、“もう一つの機能”を付けた製品作りをしてはどうでしょうか。例えば、ペットボトルや缶・段ボールなどの表面に、印字しておくのです。いざというときに、経口補水液を作る方法、ランタンを作る方法、トイレを作る方法などを、です。災害大国の日本では、いますぐにでもこの場所で震災が起きる可能性があります。そうした時、身近にある「ゴミ」、空き缶やペットボトルなどを活用できれば、生きのびる確率が上がります。不用品を生かすことによって、私たちは生かされるでしょう」

―人間活動が生み出す、あまりにも膨大な量のゴミや廃棄物を目の当たりにしたことで、“大量生産大量消費”という社会のスタイルに対して疑問を持った、ということはありましたか?

瀬戸「疑問は持ちますが、今すぐにやめるべきとも、やめることができるとも思いません。前提として、私たちは“大量生産大量消費”の恩恵を大いに受けています。たぶん、いまの日本は、人類史上最も豊かな社会の一つでしょう。すぐに切り替わることは難しい。ですから、ゴミをゴミにせずとも、人々が豊かになれる経済を、100年か200年後につくるとして、そのために今はどうすべきか、という視点が重要だと思います」

―日本では現在、震災ガレキの受け入れが問題となっています。この件について何か考えていることがありましたらお聞かせ願えればと思います。

瀬戸「まず一言。全ての震災ガレキが放射性廃棄物というわけではありません。
震災ガレキというのは、もともとは家や学校や公園といった、“町のカケラ”でした。悼むべきものですが、忌むべきものではありません。見方を変えれば木材や金属の宝庫です。ですから、バイオマスや資源として活用することが重要だと考えています。
東日本大震災の激烈な被害は、世界から大きな注目を浴びました。この被害からすばやく立ち直ると主に、災害廃棄物をきちんとリサイクルして魅せることは、世界に日本の技術をPRするまたとないチャンスではないでしょうか」

―瀬戸さんが本書を通して伝えたかったことはどのようなことだったのでしょうか。

瀬戸「ゴミだと思っていたものを、「可能性の種」だと見直すことができれば、もっとワクワクする世界が創れる、ということです」

―最後に、読者の方々にメッセージをお願いします。

瀬戸「この本には、新しいビジネスや、地域活性や、環境教育へのヒントが詰まっています。ぜひ、明日の行動に繋げてください。ご要望を頂ければ、私もできる限りのお手伝いをいたします」



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