3200万人以上を抱きしめた女性
世界中で人々を抱きしめて癒やす「抱きしめる聖者」と呼ばれる人物がいるという。国連に招かれて講演を行い、平和に貢献する賞を数々受賞し、アメリカのCBSテレビでは「世界中でもっとも影響力のあるスピリチュアアル・リーダーのひとり」としてローマ法王やダライ・ラマらと並んで紹介されている。その人、“アンマ”に抱きしめられるイベントが日本で行われるらしい。
そんなスゴい人がいるなんて聞いたことがない。ローマ法王やダライ・ラマと横並びで語られるのに! 私が無知なだけ??
事実を確認すべく、5月27日(日)~29日(火)の3日間、東京会場(ガーデンシティ品川)で行われた人道的慈善活動『エンブレイシング・ザ・ワールド(ETW)』の東京会場に足を運んでみた。
無条件の愛を持って抱きしめる
彼女はシュリー・マーター・アムリターナンダマイー・デーヴィという59歳の女性で、世界中で「アンマ(お母さん)」と呼ばれている。
1953年に南インドのケーララ州の小さな漁村で生まれた。9歳のときに母が病に倒れ、家事と7人の兄弟の世話をするために学校を退学。ヒンズー教の家庭で育ったアンマは、厳しい労働のなかでも常に神を忘れなかった。貧困や苦しみにあえぐ人を目の当たりにし、自分の食べ物や洋服を与えて世話をするうちに、恵まれない人たちを抱きしめるようになったという。たとえそれが男性であっても。インドの田舎町、しかもヒンズー教徒となると、それが非難の対象になったのは想像にかたくない。それでも彼女は抱きしめずにはいられなかったのだ。無償の愛をもって人を抱擁するアンマ。彼女の元を訪ね抱擁される人はどんどん増え続け、現在までに3200万人以上になる。
なんと今年で既に22回目の来日!
初来日は1990年で、今回で22回目になるそうだ。そんなに何度も日本に来ているのに、あまり知られてないのはどうしてだろう? アンマの抱擁を受けるため、日本全国から続々と来場者が押し寄せる。訪れた人々を全て抱き終えるのは深夜になることも珍しくないという。抱擁は「ダルシャン(darshan)」とも呼ばれ、サンスクリット語で“偉人や聖者との接見”という意味。インド、ヨーロッパ、アメリカ、オーストラリア、スリランカ、シンガポール、マレーシア、カナダ、アフリカ、南アメリカなど、世界中無料でこの抱擁は行われている。
今回の会場でも、朝からアンマの抱擁を受けるための整理券が配られていた。私が訪れたのは月曜の夜21時過ぎ。入口で整理券の列に並ぶ数十人、会場内で椅子に座って抱擁を待つ人がザッと見て数百人。本やDVD、献花、グッズコーナーを見ている人もかなりいた。日曜日はもっとすごい人だったらしい。
何だかちょっとアヤシげな宗教団体みたいにも思えるが、この『エンブレイシング・ザ・ワールド』というプロジェクトは、アンマが代表を務める『マーター・アムリターナンダマイー・マート(MAM)』という国連から特別諮問資格を授与されたインドの国連提携のNGOが運営している。日本ではNPO法人『国際チャリティ協会アムリタハート』が運営。『MAM』はインドだけではなく、ハイチ地震、フィリピン・マニラの大火事などの災害被害の救援活動を行い、2011年には東日本大震災の復興支援として、宮城県知事に直接“みやぎこども育英基金”として100万USドルの寄付を行っている。アンマ本人も被災地を訪れ多くの人を抱擁したそうだ。ちなみにグッズなどの売上は100%インドの『MAM』の活動にあてられるのだそう。
実際に抱かれてみた
会場で様子を見ていると、男女比は2:8くらいで女性が多数、外国人の姿もチラホラ。抱擁はひとり1~2分くらいだろうか。人によってはもっと長いようだ。ギュッと抱きしめられ、最後に何かを手渡されている。抱擁された後らしき女性が椅子に座り、ハンカチを顔に押し当てて号泣していた。他の20代女性に感想を聞いたところ「全身の力が抜けました」とポワ~ンとした表情。霊感やらスピリチュアル系には疎い私だが、アンマにハグされるとどんな気持ちになるのだろう。
ボランティアスタッフに促されて抱擁を待つ列に並び、いよいよ私の番が来た。周囲でスタッフが見守っているのでちょっと緊張しつつ、座っているアンマの前に。膝をついて前へ出ようとすると、アンマが笑顔で「さあいらっしゃい」と言わんばかりに両手を広げていた。
私の体と首の後ろにグッと手を回し、抱擁開始。まさにお母さんが小さい子どもをしっかり抱きしめているような感じだ。顔をうずめていると、たき染めたお香なのか、はたまた花の香りなのか、優しい香りに満ちている。彼女の大きな懐はふんわりと温かく柔らかい。うーん、確かに気持ちいいなぁ。
最後に「イーシームーメー、イーシームーメー、イーシームーメー。マーマーマーマーマーマー」と耳元で何やら唱えられて、バラの花びら1枚とキャンディー1個を右手に置かれ、左手にリンゴをひとつ渡されて終了。ええっ、リンゴ??
これはサンスクリット語で「プラサード」と言い、“お供え物のお下がり”の意味。仏教でも、お供えした仏壇にお菓子や果物をお下がりとしていただくことはあるので、それと同じってことね。キャンディーと花びらは全員に手渡されるらしいが、人によってリンゴやバナナも渡すことがあるそうだ。
「アンマは何を信じているの?」
アンマに「あなたは何を信じているの?」という質問をしてみた。「私は自分自身のことを信じています。自分自身とは不変なるもの、純粋意識のパワーです」と彼女は答えてくれた。また、「つぼが100個並んでいたとしましょう。その水面を見れば100の太陽の光が映っているけれど、実際は太陽はひとつしかありません」と付け加えた。つまり、“目に見えるこの世界は表面的なもので、本質を見なさい”ということのようだ。うーむ、深い。
直弟子のシャーンタアムリタ・チャイタンヤさんに「アンマに言われた最後の呪文みたいなものは何?」と聞いてみた。「日本語で“愛しい娘よ、愛しい娘よ”、“マーマ、マーマ(母)”と言うときがあります。アンマはインドのケーララ州のマラヤラム語という言葉で語るので、ちょっと訛ってるんですよ(笑)」……なるほど。“愛しい娘”が「イーシームーメ」に聞こえていたのか! 実はアンマが生まれ育った地域は英語を話せない人が多く、今回のインタビューも日本語→英語→マラヤラム語という二重の通訳が入っていた。
今回、東京会場には1万人以上。大阪会場には6000人以上が来場したという。なかにはアンマの体を気遣って、抱擁を受けずに帰る人もいたようだ。
彼女は抱擁する相手を自分の反映だと思って抱きしめているという。宗教・男女・年齢を問わず、会場にいる最後のひとりまで抱きしめるそうだ。
1日何千人と握手するアイドルは、肉体的・精神的にもかなりキツいという話をよく聞く。見ている限り、アンマは相手が誰であろうと笑顔で手を差し伸べていた。大勢の人々を“抱きしめる”という行為。これを毎日のように行っている彼女って、やはりそれだけですごい。
帰宅してから、アンマの残り香を感じていた。そしてアンマからもらったリンゴとサクマのレモンキャンディをどのタイミングで食べればいいのかちょっと迷っている……。
【アンマ・ジャパン公式サイト】
http://www.amma.jp/
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