共働きの家事・育児「分担すればするほど、家庭内がギスギスする問題」どう立ち向かう?~川崎貴子の「チーム家族」痛快コラム
仕事が終わってからも、家事に育児にと時間に追われ、気づくと寝落ちの日々…。家事も育児も積極的に行う男性も増えてきたとはいえ、「家庭のことは女性」という認識はまだ根深く、共働き妻の悩みは尽きません。そんな女性たちを応援するこの連載(→)。女性のキャリア支援や結婚コンサルタントまで幅広く活躍中の川崎貴子さんから、家族を「チーム」としてとらえ、より効率的に日々を運営していくアドバイスをいただきます。
今回は「共働きなのに、家事も育児も私ばっかり!分担してもうまくいかず家庭内がギスギスする」という、共働きあるある問題について、どう解決すればよいのかお伺いしました。
「時は令和元年。平成より続く“家庭内・家事育児 分担問題”はより激化し、とうとう戦国時代に突入したのだった」
と言う、物々しいナレーションを入れたい程、現在においてもこの問題は、共働き夫婦の喧嘩原因としてトップを爆走中です。
前回は「夫が家事育児を「手伝う」感覚、家庭はどうなる?~川崎貴子の「チーム家族」痛快コラム」(→)で家事育児に当事者意識を持たない夫へのアドバイスを書かせていただきましたが、
「それでも女性ばかりが家事を多く負担している!」「不公平だ!」
という、働く妻たちのシュプレヒコールが鳴りやみません。
また、「平等に分担しようとすればするほど、家庭内がギスギスしてきてしまった。どうすればいいのでしょうか?」
というご相談も多く、今回はより抜本的な改革方法を提示してゆきたいと筆をしたためております。
さて、これほど共働き世帯が増えてもなお、夫婦で上手く分担できず、特に「いつの間にか女性側が多く担当してしまう」その背景には、男女給与所得格差の問題、男性が育休取りづらい問題、「家事育児は女性の仕事」というイメージの問題、男性側のやる気の問題などなど、各家庭において理由はさまざまにあるものだと思います。
例えば給与がほぼ同額、もしくは家庭に入れているお金が同額夫婦の場合でも、
その二人の家事分担を平等に半分に分けるというのもなかなか難しいものです。なぜなら、家事は多少「見える化」できても、定量化がしづらく、それぞれのタスクをどこまでやるのが正しいのか、日によっても担当者スキルによっても大きく変わってくるからです。
きちんと話し合いができる夫婦でいられるかどうか
そもそも、結婚する前に「共働きだったら二人で分担するのは当たり前」と考える最新鋭型男性が見分けられれば、このような問題は起こりにくいのですが、一緒に住んでみないと分からないのが男と女の危険な人生のガチャ。
入籍や子どもの誕生を機に「昭和のお父さんスイッチ」が入ってしまう男性も多く存在するので、独身のお嬢さん方に置かれましては、お相手男性のご両親、友人、彼の心酔している先輩や上司、彼の理想の夫婦像などをCIA並みに諜報活動されることをお勧めします。
もし、諜報活動の結果、今一彼の意向が分からなくても、「きちんと話し合いができるかどうか?」は重要なポイントです。
かつてドラマになって話題となった「逃げるは恥だが役に立つ」は、今まで無償と思われてきた「家事労働」に関して多くの問題定義を投げかけた漫画です。
主人公の平匡は高学歴で高収入ですが恋愛経験は無く、感情を乱されるのも傷つくのも嫌なものだから、もう一人の主人公であるみくりのアプローチをことごとく無視。二人の関係はなかなか前進せず、多くの視聴者が平匡にイライラしたのではないかと(それが面白いのですが)推測します。
さて、そんな超面倒くさい彼が最終的にみくりと幸せな家庭生活を送れるようになったのはなぜかと言えば、ロジカルな話し合いが得意だったからなんですよ。SEだし、仕事の会議は上手にこなしているであろうから、みくりの提案「掃除に関して平匡さんの要求レベルが高すぎるのでもっと落としてほしい」「○○を私がやったら、感謝という報奨が欲しい」に対し、真摯に問題解決に当たります。そして二人にとってベストな分担を定期的な会議によって修正しながら模索していったからなのです。
ここで大事なのは、「二人にとってベストな分担」を「定期的に」話をする場を設けて、建設的なコミュニケーションをとっていた、というところでしょう。
家事分担方法に関しては、冒頭にも述べた通り、それぞれの家庭にはそれぞれの事情によります。労働状況や労働時間、会社のカルチャーや上司の理解、家事スキル、両家実のサポート体制、子どもの有無(年齢)、親の介護、健康状態…。そこに夫婦それぞれの家事のこだわりや、イレギュラーな出来事も加わるわけですから、
「共働きの家事分担、一般的にはコレが平等です!」
と言いきることは難しく、あくまで話し合いの末、「今の二人にとってベストはコレ」という着地点になるものでしょう。
さて、すでにご結婚中のみなさまにおかれましても、上記話し合いに持ち込むことは大事です。もしかすると、夫は「とにかく聞いてほしい」「ただ共感して欲しい」というような夫婦の会話が不得意なだけであって、問題を解決する話し合いは日頃仕事でやっているであろうから得意なはず。
少なくとも、「私ばっかり忙しい」「察して動けや!」と背中に書いてある妻(皿洗い中)にびくついているより、家庭内会議の席に着いたほうが建設的だと思うのではないでしょうか?
不満は我慢すると蓄積して態度にでます。そしてそれが伝わらないとまたイライラするもの。この悪循環を断つためにも、家族だからこそ言葉にして伝える努力は必要なのだと思います。
今こそ経営(家事)のスリム化を!
「逃げ恥」は「無償の家事労働は愛の搾取である」という金言を我々に残しました。
日頃、「妻だから、母だから」と多くの家事育児を請け負っている働く女性たちは、「家事分担」より前に、今こそ経営のスリム化を推し進めるべきです。「愛という名のもとに」家庭内をブラック企業にするのは、もうやめようではありませんか!
まず、家事に関して言えば、日本は世界でもっとも家事労働に時間をかけている国です。「丹精を込めて手をかければかけるほど良し」とされる風潮もあります。
が、家事に忙殺されて、家庭内がギスギスしていたら本末転倒。
トータルの家事労働を今の三分の一の時間で回せたら家庭内は確実にホワイト企業化します。
え?
家事は「やらないでは済まない」から大変?
いやいや、本気で取り組めば「やらないで済む、不要な家事」はいっぱいあるはずです。
そもそも、なぜ家事の負担が多くてギスギスするかと言えば
掃除や料理が気分転換になるという人以外「やりたくない」ことであり、ご自身の「時間が大量に搾取される」ことへの不満噴出なんです。そこを抜本的に改革すれば、気持ちや時間の余裕が生まれ、もっと夫婦円満、商売繁盛、家内安全は手に入るはずです。
では、どのように家事の時間を今の三分の一にすればいいのでしょうか。
まずは「どうすれば暮らしが快適か」を考え、今必要なものだけを残せばいいのです。
例えば…
1.やらない家事を決める
→米は無洗米/おかずは購入/買い物はネット/洗濯物は干さずに乾燥機
2.家事の頻度を減らす
→まとめて料理して作り置きや冷凍/洗濯物を溜めても困らないよう服やシーツは複数枚用意/掃除の時間をつくらず日々「ながら」掃除ができるよう掃除グッズはすぐ手にとれる場所におく
3.アウトソーシング・便利家電の利用
→お掃除ロボット/食器洗い機/自動調理家電/乾燥機能付き洗濯機/家事代行サービス(例え月に一回の利用でも、忙しい夫婦にとっては費用以上のありがたみが!)
などなど。
上記のいくつかは家庭平和の為にも積極的に取り入れて欲しい所であります。
企業もありとあらゆる事を効率化して本業に従事できるよう工夫しています。人材不足のこの時代、「何もかも社員でやる」「サービス残業当たり前」のブラック企業のままでは生き残れないからです。
家庭内も一緒です。それでは、家庭運営における「本業」とは何でしょうか?
大事にしたい家庭の「本業」とは?
西原理恵子の漫画「毎日かあさん」にある「子どもが小さいころの思い出の夢をみた」という書き出しの作品は、多くの働く母親たちの心の琴線に触れました。
夢の中の子どもたちはまだ小さくて、仕事を終えて家事をやっている西原かあさんにまとわりついています。でも、母として家事をしなければいけないから手を止めない西原かあさん。
それを振り返り、
「家事なんかしなきゃよかった
家なんてもっと汚くてよかった
洗たく物もためちゃえばよかった
食事なんか手作りすることなかった
あんなに抱っこしてほしがっていたのに
もったいないことしちゃったなぁ」
と、もう抱っこなんかできないくらい大きくなった子どもたちを眺めながらつぶやくのです。
その言葉は、子育て中のかあさんや子育てを終えたかあさんたちの共感や涙を大量に誘ったものです。
今、私たちはスマートフォンやSNSの普及によって、人類史上一番、同じ空間にいる家族と目と目を合わせないコミュニケーションを取っている気がします。夫婦が忙しくて、余裕がなければなおの事、会話もスキンシップも減ります。
一日中べったり一緒にいる事が良いということではなくて、むしろ今は「共働きはマスト」な時代。
だからこそ、
子どもと一緒にいられる時間や夫婦が仲良く過ごせる時間を、かけがえのないものとしてゆったりと過ごすこと。
お互いに安心できる会話やふれあいに重きを置いて過ごすこと。
それこそが、家庭運営者の本業なのではないかと私は思います。
プロフィール
川崎 貴子
リントス(株)代表。「働く女性に成功と幸せを」を理念に、女性のキャリアに特化したコンサルティング事業を展開。
1972年生まれ、埼玉県出身。1997年、人材コンサルティング会社(株)ジョヤンテを設立。女性に特化した人材紹介業、教育事業、女性活用コンサルティング事業を手掛け、2017年3月に同社代表を退任。女性誌での執筆活動や講演多数。(株)ninoya取締役を兼任し、2016年11月、働く女性の結婚サイト「キャリ婚」を立ち上げる。婚活結社「魔女のサバト」主宰。女性の裏と表を知り尽くし、フォローしてきた女性は1万人以上。「女性マネージメントのプロ」「黒魔女」の異名を取る。2人の娘を持つワーキングマザーでもある。
イラスト:かしえみ
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