ダニエル・ジョンストンが58歳で死去

ダニエル・ジョンストンが58歳で死去

 ローファイやオルタナティブ・ミュージックのアイコン的存在だったダニエル・ジョンストンが2019年9月10日に死去した。享年58歳、死因は心臓発作だったと地元紙オースティン・クロニクルが伝えている。

 ジョンストンは、シンプルな演奏が特徴のアルバムやシングルをセルフ・プロデュースしていたことで知られ、ボーカルとギターまたはコード・オルガンのみ、プロフェッショナルなオーディオ・バッファーなしという楽曲が大半だった。普遍的なメロディーに乗せた、か細く高めですぐに彼と認識できる歌声は、一方で彼の音楽に奇妙な奥深さを与えたが、同時にラジオ的な成功は見込めない類のものでもあった。

 レコーディング・アーティストとして商業的な成功は収めなかったものの、1980年代初期に米テキサス州オースティンで開始し、現地ファンの支持を得て軌道に乗ったジョンストンの音楽人生は、約30年にわたり相当なカルト人気を得ることとなった。彼はイラストレーターとしての顔も持ち、自身の1983年のアルバム『Hi, How Are You』のカヴァー・アートワークを、依頼を受けてオースティンにあるレコード店の外壁に壁画として再現したこともある。

 メインストリームとは無縁のミュージシャンだった彼だが、多くの有名アーティストたちに影響を与えている。ベック、ブライト・アイズ、デス・キャブ・フォー・キューティー、ラナ・デル・レイなどが彼の音楽をカヴァーしているほか、デル・レイは故マック・ミラーと共に2015年のドキュメンタリー映画『Hi, How Are You Daniel Johnston?』をエグゼクティブ・プロデュースした。

 中でも最も有名なメインストリーム・クロスオーバーはニルヴァーナの故カート・コバーンだろう。彼は1992年の【MTVビデオ・ミュージック・アワード】に『Hi, How Are You』のアートワークがプリントされたTシャツを着て登場し、翌年SPINの特集記事でこのアルバムについてコメントした。時代の寵児からのお墨付きを得たことで、大手レコード会社によるジョンストンの争奪戦が勃発し、彼はアトランティック・レコードから1994年に『Fun』をリリースしたものの、全く売れずに解雇されてしまった。

 その独特な世界観が愛されていたジョンストンだが、心の病に長年苦しんでいたことも広く知られている。1990年に精神病エピソードを発症した末、父親と乗っていたヘリコプターを墜落させた彼は、精神科病院に強制入院させられた。実はアトランティックと契約した頃もまだ入院中で、コバーンは1993年のSPINの特集で彼のことを“狂った人”と表現している。ジョンストンの双極性障害や統合失調症との戦いは、2005年のドキュメンタリー映画『悪魔とダニエル・ジョンストン』に記録されている。

 ジョンストンの最後のパフォーマンスは2017年に行われた引退ミニ・ツアーで、ウィルコのジェフ・トゥイーディー、ビルト・トゥ・スピル、フガジのメンバー、モダン・ベースボールなど、彼から影響を受けたアーティストたちが単発でバック・バンドを務めた。オースティン・クロニクルによると、彼の健康状態はここ数年でかなり悪化し、入退院を繰り返していた。

 ジョンストンの訃報をうけて、ベック、デス・キャブ・フォー・キューティー、ジャック・アントノフ、サンダーキャット、ペイヴメントのボブ・ナスタノヴィッチ、スプーン、ジェニー・ルイス、俳優のマーク・ラファロ、イライジャ・ウッドや映画監督のジャド・アパトーなど数多くのアーティストがSNSで追悼コメントを寄せている。

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