タランティーノ監督&上田慎一郎監督が映画愛炸裂トーク! 最新作『ワンハリ』のシーン解説から撮影秘話まで

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「映画館シーンのある映画」で盛り上がるタランティーノ監督&上田監督

――特に好きなシーンはどこですか?

上田:いっぱいあるんですけど。まずは、シャロン・テートが映画館で自分の出演している映画『サイレンサー第4弾/破壊部隊』を観ているシーン。自分の見せ場で笑うお客さん。それを見てニヤつくシャロン。あのシーンは本当に幸せな気持ちに包まれました。

タランティーノ:本当に幸せになるシーンだよね! マーゴット・ロビーは素晴らしい演技を見せてくれて、彼女にみんな惚れると思うんです。そしてスクリーンには実際のシャロンが映っていて、シャロンの演技も素晴らしいし、笑わせてくれますよね。私たちは本物のシャロンの姿もあのシーンで楽しむ事が出来て、素晴らしい女優さんだと改めて思える。

上田:さらにこの『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』のそのシーンを、実際のマーゴット・ロビーが観ている光景を想像したんです!

タランティーノ:その通りなんだよね! マーゴットがこの映画を初めて観たのはカンヌ映画だったのだけど、その姿を見たよ。マーゴットが『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』を観ていて、でも映画の中のマーゴットは実際のシャロンを見ているというね。

上田:僕は、映画の中にある”映画を観ているシーン”が大好きで、特に好きなのは『ニュー・シネマ・パラダイス』(1988)、『サリヴァンの旅』(1941)、『ビッグムービー』(1999)とか!

タランティーノ:僕もそう!大好きなんだ! 僕が初めて脚本を書いたのは『トゥルー・ロマンス』(1993)なのだけど、あの中でも千葉真一さんの映画を観ているシーンがあるんだけど、僕が映画を観ているシーンがある映画が大好きだからなんだ。

上田:日本に『ブラック・ジャック』という漫画があるんですが、その漫画の中で「いや、そうじゃない。この瞬間は永遠なんだ」というセリフが出てくるんです。このシャロンのシーンを見て、そのセリフを思い出しました。僕らは実際のシャロンに襲いかかった悲劇を知っている。でも「いや、そうじゃない。この瞬間は永遠なんだ」と!

タランティーノ:ありがとう、『ブラック・ジャック』あとでチェックしてみるね。映画の中のシャロンについて、いままでのタランティーノ映画のヒロインっぽいキャラクターにはしたくなかったんだ。シャロンはあそこにいるだけでいい、車を運転したり、本を買いに行ったり、通りを歩いたり、映画を観に行ったり、普通の日常の風景というのを、物語を進めるキャラクターとしてでは無く、描きたいと思ったんだ。彼女から奪われたのは、こういう普通の日常だったんだという事を感じて欲しかったんだ。

映画監督だからこそ感じる『ワンハリ』ワンショットシーンのすごさ

――同じ映画監督の上田さんから観て、ここはどう撮ったの? と撮影方法について聞きたいことはありますか?

上田:僕は長回しワンショットが好きで、クリフとブルース・リーの会話からのバトル、ここはウットリしてしまうような華麗な長いワンショットでした。監督はどこまで事前に計画して、どこまで現場で変えていくんですか?

タランティーノ:ブルース・リーの方は、アップから始まって、バトルで終わるんだけど、クレーンで撮影したんだよね。なので自然な動きを計算しないといけなかったんだ。もともとこういうシーンにしたいという構想はあったのだけど、加えて2人の役者と共に練習をする必要があって、クレーンがその動きを出来るか確認しないといけなかったから。プリプロ(プリプロダクション=撮影前の作業)で、俳優とスタントマン、スタッフ数人とクレーンを借りてシーンのブロッキングをしました。撮影に入る6週間くらい前の話かな。実際の撮影も確認しながら進めたけれど、「これで行けるね!」って見えたら、そこからは早かったよ。クレーンって先はいいけど、おしりがね、邪魔なんだよね。やっぱり実際に動かさないと分からない事が多かったよ。

上田:わ〜!生でお聞き出来て嬉しいです。僕はまだそんなに時間をかけて映画を作れる身分にないので。羨ましい。

タランティーノ:でも僕も、この10年だよ! クレーンが使える様になったのは。それまでも、高い所から俯瞰のシーンを撮りたくて使ったことはあったけど、こういう使い方をする様になったのは最近で。撮影監督とカメラマンをロバート・リチャードソンがやっているのだけど、ほとんどクレーンを使っています。グラスのアップでさえ、クレーンで撮っちゃうんだから!(笑)「クレーンにカメラが付いてるんだからそのままでいいよ!」ってね。

リックのセリフで不安やプレッシャーから立ち上がれた

上田:もう一つの僕の大好きなシーンなのですが、自信を失っていたリックが迫真の演技を見せた後、目に涙を浮かべながら「俺はリック・ダルトン様だ」と独り言を言う所が最高でした。僕は、前作『カメラを止めるな!』という映画がヒットして、もうすぐ次回作が公開になるんですが(『スペシャルアクターズ』10月18日公開)、やっぱり色んな不安とかプレッシャーがあって、少し自信を無くすようなこともあったんです。でも、あの言葉、「俺はリック・ダルトン様だ」という言葉を聞いて、僕もリックと一緒に立ち上がれました。

タランティーノ:本当!!嬉しいなあ!ありがとう!(超満面の笑顔で)

――上田監督もタランティーノ監督の様にこれから長い時間映画を作り続けていくと思います。監督の先輩としてアドバイスはありますか?

タランティーノ:今日お会いして、(上田監督は)大丈夫な感じがするけどなあ! そんな必要も無いかもしれないけど、一つ言うならば、3本目、4本目……と映画を作り続けて行く時は、作る理由が自分にとって良い事でないといけない。上田監督が作りたいものでなくてはいけない。情熱がある作品を作って欲しい。お金の為とか、この役者さんとお仕事出来るからとか、そういう理由も良いかもしれない。でも、やっぱり自分の中のコンパスが常に北極星を向いている様に、それを指針にして欲しい。僕も自分のキャリアを誇らしく思えるのは、これまで手がけた9本の長編全てが、僕にとって正しい理由で撮られた映画だからなんだ。アーティストとして、次の自分のステップの為に撮ってきたと心から言えるからなんだ。正直、色々なオファーはいただいてきました。それも良い作品が作れたかもしれない、でも自分の心の底から生まれた映画とは違うんだ。そういったオファーを受けていたらこんな9本の映画を作れなかったかもしれないし。

上田:それなんです。タランティーノ監督の作品からは毎作「作りたいものを作っている」という気持ちを強く感じる。それがすごいなと思います。タランティーノ監督が何かのインタビューで「テレビをつけて自分の映画がやっていたら最後まで観ちゃう」とおっしゃっていて、本当に自分の映画を愛してらっしゃるんだなあって!

タランティーノ:ああ〜、そうだね! 『地獄の黙示録』を10分だけ観ようとして、20分、30分と続けて結局最後まで観ちゃうってことを毎日やっているんだけど、今映画何やってるかな?ってテレビのラインナップを調べて自分の作品があると、観てみよう!ってすぐなるんだ。「『キル・ビル』今つけたらどんなシーンだろう? ワオ! マイケル・マドセンのシーンだ! そうしたらブライドを撃つ所まで観よう」って感じでね、最後まで観ちゃったり。

タランティーノ監督が1969年にタイムスリップしたら何をする?

――好きが溢れているからこそ、多くの人がタランティーノさんの作品に魅了されるのでしょうね。楽しいお時間はあっという間で、そろそろ終了となりますが……。

上田:本当にあっという間で名残惜しいです。最後に一つお聞きしたいのですが、監督は1969年のハリウッドにタイムスリップ出来たとしたら、まず初めに何をしますか?

タランティーノ:1日しかその時代に滞在出来ないとしたら、そうだなあ。一日中、もう今は無きバーにいるよ。ディーン・マーティンがサンセット通りに「Dino’s」っていうクラブを持っていたんです。もう閉鎖して長いんだけれども、50年代初期や60年代の映画には登場していて、すっげーイケてるなあ!っていつも思っていて。『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』の中で、プッシー・キャット達がヒッチハイクをしている場所があるけど、そのシーンの光景も「Dino’s」であったり、その時代のバーやクラブにインスパイアされているんだ。

――これから映画をご覧になる方も、何度目かを観る方も、そんな監督のこだわりをシーンの一つ一つに感じていただきたいと思います。今日は本当に貴重なお時間をありがとうございました!

▲「ポスターの中の2人と同じ様に写ろう!」とタランティーノ監督。

▲その場でポスターにサインをして上田監督にプレゼントしてくださいました!

撮影:周二郎

『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』
http://www.onceinhollywood.jp

上田慎一郎監督『スペシャルアクターズ』10月18日公開!
http://special-actors.jp [リンク]
(C)松竹ブロードキャスティング

上田慎一郎・中泉裕矢・浅沼直也トリプル監督『イソップの思うツボ』上映中!
http://aesop-tsubo.asmik-ace.co.jp [リンク]
(C)埼玉県/SKIPシティ彩の国ビジュアルプラザ

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藤本エリ

映画・アニメ・美容に興味津々な女ライター。猫と男性声優が好きです。

ウェブサイト: https://twitter.com/ZOKU_F

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