紫外線から身を守るには(物理の観点)

紫外線から身を守るには

今回はrikeidansiさんのブログ『物理の観点』からご寄稿いただきました。

紫外線から身を守るには(物理の観点)

晴天

今年も夏がやってきました。暑いですね。年々熱くなっている気がします…(;´Д`)

夏になると気になるのが「紫外線」ですよね。紫外線は日焼けを引き起こすほか、しわやシミの原因になるのでなるべく浴びたくないものです。そこで今回は紫外線を防ぐためにどのような道具を使うべきかまとめてみたいと思います。

紫外線の種類

最初に紫外線の種類について説明します。最近よく聞くようになりましたが、一口に紫外線といってもいくつか種類があります。これらは波長によって区別されます。波長というのは波の幅のことで、値が小さいほど大きなエネルギーを持ちます。紫外線の分類は下のようになっています。
A波(UV-A) : 波長400-315nm。肌の奥深くまで届く。シミやしわに大きな影響
B波(UV-B) : 波長315-280nm。日焼け(やけど)を引き起こす
C波(UV-C) : 波長280nm-。エネルギーが強く、殺菌作用あり。地上には届かない
幸いなことに一番エネルギーの高いUV-Cは大気に阻まれて地上にはほとんど届きません。なので紫外線対策で注意すべきなのはUV-AとUV-Bです。

身近な材料と紫外線

世の中には様々な紫外線対策グッズがあふれています。日傘や日焼け止めが代表的な例です。中には真夏なのに長袖・長ズボン、さらにはヘルメット並みに顔を覆うことのできる帽子にマスク、サングラスと全身を覆っているような人も見かけます。

このような人を見てふと思いました。

 普通に服で肌を覆ってやれば紫外線は防げるのか?

その人が着ている服が普通の服かどうかはわかりません。しかし、普通の服、普通の傘の紫外線に対する有効性は気になるところです。そこで、服や傘にもよく使われているナイロンがどれだけ紫外線を通すのか調べてみました。

ナイロンがどれだけ紫外線を通すのか

これはナイロンの透過率(縦軸)が波長(横軸)によってどれだけ変わるかというものを示したものです[1]。(a)のグラフが普通のナイロンです。紫外線の領域で透過率がどうなっているか見てみると、UV-Aの場合およそ80%とほとんど通過してきてしまうことがわかります。UV-Bは少しは防げて、透過率は10-40%になっています。つまり普通の服では、
  
  日焼け対策にはなってもシミ・しわ対策にはならない

と言えます。

さて、次にビニール傘の場合を考えてみましょう。ビニール傘なんて透明なんだから対策になるとは思えませんが、透明なのはあくまで可視光の領域の話で、紫外領域では案外ブロックするかもしれません。少し期待して調べてみました。

ビニール傘の材料は、一昔前まではポリ塩化ビニルでしたが、環境問題などによりポリオレフィン・エラストマー(POE)等が使われるようになっています。

ポリオレフィン・エラストマー(POE)

これがポリオレフィンの透過率(青線)です[2]。確かに可視光領域(400-800nm)では80%以上が透過していて波長で透過率があまり変化しません(つまり無色透明に見えるということ)。しかし、紫外領域に入った瞬間に、透過率が急降下します。あまりに降下が激しいのでUV-A領域の波長が長い部分で透過率が高いのか・低いのか判別が難しいのですが、少なくともナイロンよりは紫外線を防ぐことができているように見えます。つまり結論は、

   ビニール傘は意外と紫外線を防ぐ(?)

意外ですね…(本当か?)

いろいろな身近な材料の紫外線の透過率を見てみると、UV-Bは意外と何でも防げることがわかります。

紫外線対策

ではここからは具体的に紫外線対策をするにはどうすればよいか書いてみます。まず日焼け止めですが、最近では酸化亜鉛という物質が含まれているクリームが多く発売されているようです。酸化亜鉛は紫外線を効率的にカットできる物質で、紫外線に対する効果に関する研究が活発に行われているようです。

つぎに、日傘ですが、こちらにも大きく分けて2種類のタイプがあるようです。1つは紫外線防止コーティングされているものです。コーティングにはポリウレタンなどが使われます。また、もう1つがシルバーコートと呼ばれるものです。これは傘の外側もしくは内側に金属をコーティングしてあり、紫外線を反射することを想定したものです。コーティングに何の金属を使用しているのかはわかりませんが、金属によってはこれはあまり効果がないように思います。というのも、

金属コーティング

この図は、各種金属が各波長の光をどれだけ反射するかを示している図です[3]。アルミニウム(Al)を見てみると紫外線領域は90%近く反射します。しかし、もし仮に名前の通り銀(Ag)を使っているとするならば、紫外線領域の反射率は高くても20%程度です。

金属は人間の目には光を全部反射するように見えますが、紫外線領域は必ずしもそうとは限りません。銀のように紫外線領域に対してはスカスカな金属もあるということは知っておくべきでしょう。

参考文献
[1] https://www.researchgate.net/figure/UV-transmission-spectra-of-a-nylon-6-6-nano-fi-bers-b-seeded-nylon-6-6-nano-fi-bers_fig4_237144395
[2] https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0927024815005206 (一部編集)
[3] https://physics.stackexchange.com/questions/72368/why-are-most-metals-gray-silver

 
執筆: この記事はrikeidansiさんのブログ『物理の観点』からご寄稿いただきました。

寄稿いただいた記事は2019年8月27日時点のものです。

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