[動画]繊細なタッチに目が釘付け「小畑健展」約500点の原画を展示 美麗作画の裏に隠れた描き直しの多さや探究心

「DEATH NOTE」や「ヒカルの碁」、「バクマン。」など人気漫画の作画を手掛ける小畑健先生の原画展「画業30周年記念 小畑健展 NEVER COMPLETE」が開催中。1万5千点以上のアーカイブの中から約500点の原画やラフスケッチ、資料などを展示しています。

この記事では、展示内容に加え、小畑先生によるライブドローイングの様子やメディア向け発表会の様子を動画を交えてお届けします。

本展は、8月12日まで東京のアーツ千代田3331で開催、その後9月には新潟の新潟市マンガ・アニメ情報館、2020年初春には大阪の大丸ミュージアム<梅田>に巡回予定。

小畑先生は、30周年を迎えた心境を「上手く行かなくて当たり前、という感覚で飛び込んだ世界で、結果を出さなければいけない『少年ジャンプ』という場所でこれだけ長く続けてこれたのは想定していませんでしたし、正直言って自分が一番驚いています。30年の中で上手くいったりいかなかったりの繰り返しで続けてきたんですが、上手くいかなかった時間の方が多くて、それでも使い続けてくれた少年ジャンプ編集部や支えてくれたファンの方、そして一番は良い原作と出会えたということが大きかったんじゃないかなと思います」と語りました。

展示エリアは3つに分かれており、「ZONE1 Manga」では、「ヒカルの碁」(原作・ほったゆみ/監修・梅沢由香里)から始まり、「DEATH NOTE」(原作・大場つぐみ)、「バクマン。」(原作・大場つぐみ)など長期連載作品を大きく取り上げ、ストーリーを象徴する名場面や作画技術が際立つシーンの原稿を厳選して展示。

長期連載ならではの、初期の原稿から変化するイラストやタッチの違いを一度に振り返ることができるのが面白い。

「DEATH NOTE」の死神たちのデザインを細かく見られるのも嬉しいです。

差し替えとなって掲載されなかった未使用原稿も!

「バクマン。」の作中に登場する漫画原稿も公開!

また、作品別だけでなく、「和」や「顔」、「機工」などテーマに沿って選んだ原画も展示されています。

「人形草紙あやつり左近」(原作・写楽麿)や、「BLUE DRAGON ラルΩラグド」(原作・鷹野常雄)、「うろおぼえウロボロス!」(原作・西尾維新)などの原稿、原画も。

小畑先生は「自分が描いてきた絵があまり個性がない、漫画的な絵ではないとずっとコンプレックスに思っていたんですけど、実はそういうあまり主張しない絵だったおかげで、いろんな原作と組んでいろんな作品が残せたんじゃないかなと思います」と、様々な原作と組んで作品を生み出せた秘訣を分析しました。

原作者と組む作品で心がけていることについて、「とにかく原作の良さを引き出すこと。自分がこう描いてしまいがちだな、という部分もあるんですけど、そこは自分を抑えて、原作者の方がおそらくこの方が面白いだろう、と思ったところは、なるべくそれを引き出すような工夫を自分なりにしていっているとは思います」とコメントしました。

小畑先生の担当編集者は「たくさん描き直している、何回もやり直しているというのが小畑先生の最大の特徴」と美麗な作画に隠された意外な裏側を明かします。

小畑先生の原稿には、裏面に鉛筆でガイドが描かれた、いわゆる「裏描き」がとても多いそう。裏描きした左向きの人物を表面からなぞり、描きにくい右向きの顔の精度を高めるためなのだとか。

透明なアクリル板に原稿を挟み、「裏描き」の様子がわかるよう裏側からも見られる直立展示も。

圧巻の緻密なカラー原画

「ZONE2 Illustration」では、漫画作品の扉ページをはじめ、単行本カバー、他作品とのコラボイラストなど、色鮮やかなカラー原画を展示。

コピックで塗られた本当に繊細なグラデーションは見ていて吸い込まれるよう……。原画の実物を目の前にすると、この色をペンで出しているのか、と目が離せなくなります。

漫画作品に加え、集英社文庫「こころ」や「人間失格」のカバーイラスト、画集「blanc et noir」のイラストも。

会場でライブドローイングを実施! 会期中に作品が仕上がっていく……

「ZONE3 Never Complete」では、描き直しが多い小畑先生が探し求める「完成しない」未来のカケラを見つめていきます。

デジタル作画を取り入れ、精密描写で作り上げる最新作「プラチナエンド」(原作・大場つぐみ)の制作過程を公開。

本展のみどころを、「もちろん完成した原画も飾られているんですけど、原稿完成するまでの過程も展示されていて。その過程をよく見ると、結構書き損じていたり、間違っていたりしていることもすごく多くて。意外とジタバタしながら自分は描いていたんだなというのが、振り返ると思い出されます。ジタバタしているところなんて見せたくはないんですけど(笑)、実際そういう見せたくない部分というのは、他の人から見たら面白い部分なのかな、と思います。来ていただいた方には、そういうところも面白がって見てもらえたらなと思っています」と語った小畑先生。

貴重な制作過程の生原稿を間近で見ると、完成度の高い作品を描く小畑先生が、実はもがきながら、試行錯誤しながら描いていることが感じられるのではないでしょうか。

さらに、新作描き下ろしの「Never Complete」に展覧会期中を通じて小畑先生自身が挑戦します!

小畑先生が「いつまでも書き続けることができる絵を描いたら、自分はどんな絵にたどり着けるのか、に挑戦したい」と提案し、ラフ画の状態で公開された大型描き下ろし作品「Never Complete」。

いくつかのパーツに分かれており、それを組み合わせて完成する作品で会期中に小畑先生が仕事場や会場でのライブドローイングで完成させていくものになっています。

小畑先生は「今回原作がない状態で描くということで、自分でもどういう絵が描けるのかな、と楽しみです。この先自分が絵を描いていく上で、新しい絵を生み出したいなという気持ちが今回の作品に込められていければと思って作りました」と意気込みを述べました。


実際に目の前で完成していく作品を見られるという貴重な体験。色を塗るドローイングの様子を動画でも公開しています。本当に多くのコピックを使い分け、微妙な濃淡をつけていく様子は息を呑みます。


動画:[Takeshi Obata]小畑健展 NEVER COMPLETE
https://youtu.be/oaHvCEOzvQg[YouTube]

「DEATH NOTE」の新作読み切り原稿も

また、「DEATH NOTE」(原作・大場つぐみ)の新作読み切り原稿も先行展示。

東京会場では、冒頭の漫画原稿10Pを展示し、今後、新潟会場、大阪会場と巡回展を行う中で、順次原稿が追加されていくとのこと。

漫画の作画を手掛け30年経った今、「漫画を描いていてつらいことは?」と質問された小畑先生は「大体つらいです(笑)」と返答。

「寝れないとか食事がとれないというのはつらいです。基本的につらさは変わらないんですけど、『ヒカルの碁』や『DEATH NOTE』を描いているときは楽しくはないんですけど、すごく集中できたんですよね。そのときは食べる、寝るを忘れてずーっと描いていました。今はちゃんと睡眠を取れて描いています」と語りました。

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<展覧会概要>
◆名称画業30周年記念小畑健展NEVER COMPLETE
◆会場アーツ千代田3331(東京都千代田区外神田6丁目11-14)
◆会期2019年7月13日(土)~8月12日(月・休日)※会期中無休
◆開場時間午前10時~午後5時※最終入場は、閉場の30分前まで
※土曜日と8/11(日)は午後8時まで延長
◆入場料(当日料金)一般・学生1,500円、中学・高校生800円、小学生600円
※税込※未就学児無料※各種特別チケットはローソンチケットにて前売販売

巡回展:
◆新潟会場
会期:2019年9月14日(土)~11月10日(日)
会場:新潟市マンガ・アニメ情報館
◆大阪会場
会期:2020年初春
会場:大丸ミュージアム<梅田>

◆公式HP
https://nevercomplete.jp[リンク]
主催/集英社、朝日新聞社企画協力/週刊少年ジャンプ、ジャンプスクエア
協賛/共同印刷、ローソンエンタテインメント

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