パリの暮らしとインテリア[1]ヴィンテージ家具に囲まれたデザイナー家族のアパルトマン
私はフランスのパリに暮らすフォトグラファーです。パリのお宅を撮影するたびに、スタイルを持った独自のインテリアにいつも驚かされています。
今回はヴィンテージ家具を20年以上かけて少しずつ集めて生活を楽しんでいる、ブティックなどの内装を手がけるデザイナーのヴァレリーさん、ファッションデザイナーの仁美さんらが暮らすアパルトマンに伺いました。連載【パリの暮らしとインテリア】
フランス・パリで暮らす写真家が、パリの素敵なお宅を撮影。インテリアの取り入れ方から日常の暮らしまで、現地の空気感そのままにお伝えします。
人気エリア11区から静かな『北マレ』への引越し
ヴァレリーさんと仁美さんが子どもたちと暮らすお住まいは、今パリの最新トレンド発信地として大人気の北マレ地区にあります。2005年に引越してきたときにはまだ「北マレ」というエリア名では呼ばれておらず、パリの中心地にある割にはとても静かなところでした。今では多くのギャラリーやおしゃれなカフェなどが点在し、活気がある地区に変化を遂げました。お住まいの通りは北マレにあっても静かな通りです(写真撮影/Manabu Matsunaga)
以前は子育てにも人気な地区である11区に住んでいましたが、当時の家は子ども部屋が小さかったこと、子どもたちを公立の小学校に通わせるために、パリ中心部への引越しを決めました。ちなみにそのとき住んでいた家は、お二人自身でDIYで改装していたので、売買するときもすぐに買い手が見つかり、スムーズだったといいます。
今の住まいを見つけたきっかけはインターネットでのアノンス(通知)で、とても興味深い物件だったとのこと。
「長女のアリスと長男ジェレミーがまだ小さかったので、共働きの私たちにとって、お手伝いさん用の小さなスペースが隣接していたのがここと契約する決め手になりました」と仁美さん。 入り口の共用部分の階段は、最近ようやく工事が終了! カラーリングは住人たちで相談して決めました(写真撮影/Manabu Matsunaga)窓から見える風景。向かいは歴史的建造物。マレ地区には古い館が点在しています(写真撮影/Manabu Matsunaga)
「ただ、部屋を自分たちでデザインしてDIYしていたので、完成には6カ月もかかりました。でも楽しい時間でした」(ヴァレリーさん)
購入した金額のプラス12%が改装費。もちろん業者さんに支払った額も含まれています。ヴァレリーさんの仕事柄、通常よりリーズナブルに収まったようです。特に部屋の色合いには気を付けているとのこと。階段側面のグレーは自然素材のペンキFarrow&Ballで、自分たちでペイント。一部を塗ることでメリハリをつけています(写真撮影/Manabu Matsunaga)
偶然に見つけた椅子からインテリアのヒントを得る
ヴィンテージ家具をコレクションするきっかけになったのは、仁美さんが20年以上も前にドイツ旅行をしたときにさかのぼります。たまたま見つけたオレンジの椅子が始まりです。「パントンチェアと呼ばれる椅子に目が留まって、当時10ユーロもしなかったのですぐに飛びつきました。それからはどんなものを加えていくか夫婦二人でよく話し合うようになりました」
ひと目惚れのパントンチェア以降はほとんど衝動買いをせず、部屋の空間バランスや色合いなどを考慮して買い足して今日に至った様子。最初に購入したヴィンテージのオレンジの椅子がイメージを膨らませました(写真撮影/Manabu Matsunaga)
家具にはいろいろな想いも詰まっているといいます。例えば息子のジェレミーの部屋に入る扉の上には、彼が生まれた記念に購入したネルソンクロックのオレンジの時計が飾られています。パリでは、子どもの出産時に記念品を購入することが多いのです。
今回写真には登場しないジェレミーは、バレエダンサーになるべくレッスンでオランダのサマースクールへ。お部屋は見せてもらえませんでしたが、彼の部屋にも少しヴィンテージ家具が置いてあるとのことでした。息子のジェレミーが生まれた記念に購入した時計。奥がジェレミーの部屋になっている(写真撮影/Manabu Matsunaga)
東欧製のピアノ上には、ハンドプレーイングという小さなサーフボードのオブジェが飾られています。ヴァレリーさんはフランスのサーファーの聖地、ビアリッツ近くの街オースゴー出身で、子どものころからサーフィンをしていました。ピアノは東欧のPetorf、イケアのデザインランプの横にはHand Playing(ハンドプレーイング)を飾っています(写真撮影/Manabu Matsunaga)
「気に入るのはどうしても北欧系の家具になってしまいますが、ソファと椅子の2点だけはフランスものです」
家具のアクセントになるような小物もところどころに配置されています。「最近では特にドナ・ウィルソン(ロンドンを拠点に活動するクリエイター)のぬいぐるみ、ブロッコリー、ピーナッツモチーフが気に入って少しずつ足していっています」(仁美さん)ブロッコリー、ピーナッツモチーフが気に入っているが、次は狐を狙っているとのこと(写真撮影/Manabu Matsunaga)
「家具だけでなく、デザイン性が高い小物を飾ることも大好きです。食器に関してはフランスのツェツェ・アソシエのものが大好きですが、デリケートな陶器なので扱いが難しいですね。それでも食卓に登場する頻度は高いです」(仁美さん)大好きなツェツェ・アソシエのカップでお茶の準備中。お茶の時間は大切な家族の対話に必要(写真撮影/Manabu Matsunaga)
料理はヴァレリーさんもよくつくるそうで、得意料理はパスタ。家族みんなの大好物! 仁美さんは、日曜日に必ずバスチーユのマルシェに季節の野菜や果物類を買いに行きます。日曜日はヴァレリーさんの出番も多いです(写真撮影/Manabu Matsunaga)
将来的な計画も
「今、改装を考えているところです。アリスが高校を卒業したタイミングで、彼女の部屋を使用人部屋に移そうかと。台所が2人で作業できないほど狭いので、キッチン部分を小さな寝室にして、隣接するサロン(ダイニングのような部分)をアメリカンオープンキッチンにしたいと考えているのです」(仁美さん)
改装を考える一方で、いい部屋があれば引越しも検討しているとか。仁美さんは不動産探しも趣味。アプリで自分の気に入った条件を力すると最新の情報のお知らせが来ることで、夢も広がり、寝る前のリラックスタイムになっているそうです。
「でも今は物件が高くてなかなか手が出るものはないんです。
特に今のこの場所がどこに行くのも便利なのでなかなか離れられませんね」
4人ともそれぞれの自転車を持っているので、あまり電車には乗らないそうです。
かつてヴァレリーさんがスケートボードのお店をやっていたせいか、子どもたちはスケートボードで出かけることも多いとのこと。 近所にはアリスはスケートボードで出かける(写真撮影/Manabu Matsunaga) 散歩を兼ねてよく行く近所のホテルレストランはアートセンスが満載(写真撮影/Manabu Matsunaga)中庭には心地よいレストランもあります(写真撮影/Manabu Matsunaga)
お互いの興味をよく話し合い快適な住まいづくりを実践している素敵な夫婦でした。これからも家も家庭も進化していくと感じました。30年も前からヴァレリーさんが少しずつ描き続けているデッサンを絵巻にして保存。
過去にギャラリーで展示したことがありますが、新しいものもあるのでまたやってみたいとのこと(写真撮影/Manabu Matsunaga) ヴァレリーさん自身がスケッチした間取図(画像提供/ヴァレリーさん)メザニン(中二階)から見下ろすサロン空間(写真撮影/Manabu Matsunaga)
元画像url http://suumo.jp/journal/wp/wp-content/uploads/2019/07/165905_main.jpg
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