「デュアラーを面白がる会」開催。切実なるお金と移動問題はどうなる?
6月25日(火) 、SUUMO(リクルート住まいカンパニー)による『第1回 デュアラーを面白がる会』が開催されました。
この『面白がる会』は、「お酒を飲みながらワイワイ」と、課題の洗い出し、解決方法のアイデア出しをブレストするというもの。
今回は、デュアルライフに憧れている、実際に検討している人、彼らにサービスを提供する・したいと考えている企業の担当者などが集まりました。当初はぎこちなかった初対面同士も、お酒を飲みながら打ち解け、いろんなアイデアが飛び出しました。
どうして始められない? 実践して困ったことは何?
「面白がる会」は、難しい課題を“自分ごと”としてとらえ、今までの慣例や常識にとらわれず、“こうだったらいいんじゃない”とアイデアをみんなでブレストする会。「意見を否定しない」、「難しい言葉・業界用語を使わない」、「偉そうにしない」、「思いついたアイデアをどんどん発表」をルールに、お酒を飲みながら、軽く食べながら、ワイワイ話し合います。
まずは、「デュアルライフの課題は何か」を話し合いました。
参加者の立場はそれぞれ。憧れつつも、実現していない人が「乗り越えられないハードルは何か」というアプローチと、実践者ならではの「現在進行形の悩み」について、情報共有されていたようでした。「面白がる会」運営代表の唐品知浩さんの音頭で、まずは乾杯からスタート(写真撮影/SUUMOジャーナル編集部)
最初に発表したグループからは、デュアラー実践者である男性から、「二拠点を持つということは生活コストが二倍になる。購入となると、固定資産税も二カ所分です」と早々にシビアな意見が。
ほかにも移動に関わるコスト面を指摘したグループは多数。「高速代、ガソリン代だけでなく、車検代、保険、税金など出費がかさみます、都会だけなら車ナシ生活でもOKですが、田舎は車がマストになるので、正直痛いです」
そもそも「車を運転しないので、基本は公共交通機関を利用するしかありません。でも、そんな生活って都会では可能でも、田舎では難しいですよね」という女性も。田舎は路線バスの本数が少ない事情もあります。コスト面だけではなく、移動時間の長さも、デュアルライフの阻害要因になるようでした。
さらに、田舎でのコミュニティに入りづらいと指摘をする人もたくさんいました。「基本はよそもの。独特の近所付き合いに慣れない」、「交流はしたいけれど、きっかけがない」、「そもそも、デュアラー全員が地元コミュニティに深く入りたい人ばかりではないのでは」など、立ち位置はそれぞれ違うものの、都会とは異なる地域との距離感に戸惑う声が多く聞かれました。また、受け入れ側も「空き家であっても貸したがらない」、「知らない人には警戒してしまう」という事情もあるようです。
家族の問題も課題です。特に子どもがいる場合、小学校に入るタイミングで、どちらかに拠点を決めざるを得ないケースも。ほかにも、自分1人がデュアラーをする場合は、「家族の同意が得られないのでは」、「家族バラバラになりそう」という心配がありました。
ほかにも、「ゴミを決まった曜日に捨てられず、都内まで持って帰っている」、「やはり人が住まないと建物が傷む」「冬場は水道が凍結してしまう」「とにかく寒いので、エアコンを稼働して温かくするまで時間がかかる」、「事前に荷物や食材を送りたくても、受け取る人がいない」など、実践者ならではのリアルな悩みも多々ありました。 開催されたのは平日の19時~。約半数が「デュアラー」未経験者。3割が実践者、それ以外が不動産会社や支援団体などの関係者という顔ぶれ。ほぼ誰もが初対面同士(写真撮影/SUUMOジャーナル編集部)デュアルライフの経験がない人も、自分がするとしたらまずはこんな壁にぶち当たりそうと、想像を巡らせて発言していきます(写真撮影/SUUMOジャーナル編集部)
コスト削減だけではない。デュアラーを支援するアイデアいっぱい
デュアルライフの課題発表終了後は、2回目のブレストタイム。これまでに出た課題に対し、「何でもあり」でアイデアを出し合うことに。時間も経ち、お酒も回って、話は大盛り上がりました。
以下、課題として多く指摘された「住居費」「移動」「コミュニティ」「ゴミ出し」に関して発表された、面白いアイデアを箇条書きで紹介します。
住居費について
・「10人で10軒をシェア」各拠点をみんなでシェアすれば二居住どころかマルチ居住
・「交換デュアラー」田舎の人も東京で過ごしたいのでは?→だったら交換してみればいい
・「デュアラー特区」デュアラーに力を入れている自治体。固定資産税などの減税、空き住戸含めた情報提供など、自治体の積極的なPRあれば二拠点目のエリアとして選びやすい
・「私、〇〇できます」宣言。料理人がいろんなシェアハウスを転々としながら暮らしている例がある。一年中、収穫を手伝いながら旅する人もいるそう。自分のスキルを田舎暮らしで活かし、コストに充てる
・「デュアルアワー貸し」人によっては短い間だけ借りるのもアリでは
移動について
コストを削減する方法と、移動=価値を見出す方法の2通り提案されました
・「定額新幹線乗り放題」自由席ならどれだけ乗ってもいい。デュアラー割引でも可
・「長距離トラックに相乗り」
・「移動するついでに宅配」車移動のついでに荷物を運び、利益を得る
(「あなたの代わりに墓参りします」墓参りを代行も)
・道の駅に「コワーキングスペース」(すぐにでも実現できそう!)
・「自動運転でラクに移動」:乗用車2台を前後につなぎ、2台目のほうは自動運転で付いていく形なら技術的にもスムーズでは?(完全妄想!)女性ばかりのテーブルでは、女性ならではのコミュ力で一気に打ち解け、話が盛り上がる(写真撮影/SUUMOジャーナル編集部)
コミュニティについて
・「草刈りフェス」コミュニティに入るきっかけになる、お祭りも兼ねて一石二鳥
・「村人に聞こう~ドラクエ化」地元の人に話しかけ、交流が生まれるような仕掛け。
例:この人にこの質問をしないと、家の鍵がもらえない。まずは「〇〇店」で〇〇を購入、装備する、などロールプレーイング風に
・「よろしくステッカー」家の前に、交流ウェルカムという意思表示のステッカーを貼る。
逆に「サーフィンに来ています」ならサーフボードのステッカー、「ひとりでのんびりしにきています」なら寝ているステッカーなど、二拠点の目的を明確にする
・受け入れ側も「うちはウェルカムですよ」というステッカーがあれば、きっかけがつかみやすい。
・「おじいちゃんおばあちゃんとシェアハウス」広い一軒家にひとりで住んでいるお年寄りは多いはず。遠方にいる子世帯に様子を知らせれば安心(例:草刈りを手伝ったり、車で病院に連れて行ってあげたりなど労働力を提供すれば、住居費はタダ)デュアルライフ実践者からリアルな意見も。みなさんプレゼン慣れしています(写真撮影/SUUMOジャーナル編集部)
ゴミ出しなどについて
・「マッチングアプリでお願い、ご近所さん」 ゴミ出しや荷物の受け取りをご近所の方にお願いして、電子マネーで謝礼を払う
・「ドローンでゴミ捨て」 広告を載せて宣伝にも使えばコスト削減できる
・「大学生が管理するデュアラー村」 複数の家の1つを大学生の寮や合宿所に。不在時のさまざまな雑務を引き受けてもらう
デュアラーに愛される街が、もうかる自治体になればいい
ほかにも、「学校データ化で、子どもの勉強の進度などを情報共有。どこでも学べる環境になる」、「デュアラー向けに家を貸すのを躊躇するオーナーさん向けに、デュアル保険を用意して貸し手の不安を払拭する」、「まずは公共施設を開放し、再活用できるような動きをするべきでは」というさまざまな意見が出ました。「デュアラーによる“住みたい街ランキング”も面白そう。スーモさん、是非やって」という声も(写真撮影/SUUMOジャーナル編集部)
さらに、「デュアルライフに市場原理を持ち込もう」という切り口で、「デュアルファンドを創設する」→「投資に値する、選ばれる行政を目指すようになる」→「投資した人は、家族、友人を誘って足を運ぶようになる」→「もうかる自治体はさらに魅力的になる」など、経済がまわっていく仕組みをつくれないかなど、壮大なアイデアもありました。
具体的に「奥多摩を盛り上げよう」という地名が出たことで、「以前は東京の人がみんな軽井沢などの別荘地に憧れましたが、現在のデュアラーは移動の時間とコストにシビア。例えば中央線沿線なら奥多摩や山梨方面、東京北部なら秩父方面、東京東部なら千葉の南房総など、今の生活圏の延長線上にある立地を選ぶほうが、現実的で愛着が持ちやすいのでは」と主催者のひとりが提案。そのあたりにもデュアラーを盛り上げるヒントがありそうです。
以上、すぐに取り組めそうなものから。かなり壮大なレベルのものまで、さまざまにアイデアが上がった、盛況な会に。数年後には、なにかが実現しているかもしれません。
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