伝説の家政婦「志麻さん」に聞く “家事代行で作り置き“100%活用術

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伝説の家政婦「志麻さん」に聞く “家事代行で作り置き“100%活用術

共働き家庭の増加に伴い、流行している「作り置き料理」。さまざまな家事代行マッチングサービスで探した家政婦さんに、作り置き料理を依頼することも一般的になった。しかし、せっかく頼んだ作り置き料理を「100%おいしく食べきるのは難しい」という声も聞こえるようになった。食べきれずに捨ててしまった。冷蔵しておいたら水っぽくなってしまったり、冷凍保存したものをレンジでチンしたらスカスカになったり――。筆者にも似たような覚えがある。こういった事態はどうしたら防げるのか? 「作り置きブーム」を巻き起こしたフリーランスの家政婦、タサン志麻さんに聞いた。

調理前のオーダー方法も大切

志麻さんによると、どうやら作り置き料理をおいしく食べきるにはいくつかのポイントがあるようだ。まず大切なのは「調理前のオーダー」とのこと。どうやって依頼するのが適切なのか、詳しく聞いてみよう。

――「調理前のオーダー」というのは、家政婦さんに作り置き料理をオーダーするときのことですね。

志麻さん:そうです。“食“ほど好みが分かれるものはありません。外食のときですら、個人の食べたいものや好き嫌いははっきり分かれますよね。食べるものは、相性がすごく出てしまうんです。毎日食べる家庭料理であればなおさらです。相性のよい家政婦さんを見つけるためにも、とにかくつくってもらう前に、家政婦さんとよくコミュニケーションをとるといいと思います。

――コミュニケーションの取り方について、志麻さんはどんなことを心がけていますか。

志麻さん:まず家族構成や生活スタイルをヒアリングします。ただ4人分、という分量だけではなく、食べるリズムについても聞いておきたいですね。例えば4人家族でも「夫が仕事で夜は食べないんです」というご家庭もあります。好き嫌いやアレルギーについても、はっきり要望がある人ははじめに伝えるとよいと思います。

一口に作り置き料理といっても、人によって求めている内容は全く違うんです。品数を重視する人もいれば、「そんなに量はいらないから手の込んだ料理を」という人もいます。また「完成品でなく、最後にちょっとだけ自分で手を加えたい」という方もいます。例えば、作り置きグラタンを冷凍しておくからつくってほしい、でも最後にチーズをかけてオーブンで焼くところは自分でやりたい、とかね。保存方法についても、冷蔵派と冷凍派に好みが分かれますね。

作り置きに向く料理と向かない料理がある

――私自身も作り置きを頼んでいたのですが、最後までおいしく食べきるのが難しいときがありました。「3日間は持つ」と言われていたのに、その前に水分が出ておいしくなくなってしまったり、冷凍しておいたものをいざ食べようと温めたらソースが分離してしまったりしたことがあります。調理法などについて語る志麻さん(写真撮影/富谷瑠美)

調理法などについて語る志麻さん(写真撮影/富谷瑠美)

志麻さん:作り置きや冷凍保存には、向いている料理とそうではないものがあるんです。例えば私はフレンチ出身ですが、じっくり煮込んで素材の水分を飛ばすフレンチは、冷凍できる料理が多い傾向があります。フランスには、ピカールという冷凍食品スーパーが存在するくらいですから。ワインやコンソメ、クリームソースなどを使ってしっかり煮込む洋食の煮込み料理は冷凍しても状態が変わりにくいのです。

一方で、さっと火を通す和食は、水分が多く素材に残っていることがあり、一般的には保存には適していないといわれています。私の場合は、和洋中なんでもつくりますが、冷凍してもおいしく食べられるものと、冷蔵で2日くらいで食べきっていただくものを交ぜてつくるようにしています。

私は料理の仕事は長いのですが、家政婦になったときにあらためて作り置き料理についてしっかり学ぶ必要性を感じ、いろいろと研究しました。作り置きは特殊です。温めなおしておいしいものは、つくりたてでおいしい料理とは違いますから、つくり手がしっかりと知っておかないといけないことだと思います。

「小分けにラップをしてジップロック」まで頼んでいい

――保存についてはいかがでしょうか。つくってもらえるのは助かるのですが、帰宅して数々のお料理がタッパーやお皿にどーんと盛られていると、家族の分をすべて一食ずつ取り分けて、ラップに包んで冷凍するのが意外と大変で……。それくらい自分でやるべきかなとは思うのですが。ある日筆者が頼んだ作り置き料理。これを小分けにして保存するのはなかなかの手間(写真撮影/富谷瑠美)

ある日筆者が頼んだ作り置き料理。これを小分けにして保存するのはなかなかの手間(写真撮影/富谷瑠美)

志麻さん:私の場合は、例えば「子どもの分のハンバーグをお弁当に入れたいの」と言われたら、その日の晩御飯の分に加えて、子どものお弁当用は小さくつくって、ラップをしてジップロックに入れて冷凍しておく、ということをします。保存するところまでお願いしてしまっていいと思いますよ。

――以前、小分けにして保存するところまでお願いしたことがありました。しかしそのときは「品数をつくるためにギリギリまで調理しているので、冷めないから無理です」と言われてしまいました。

志麻さん:作り置きがブームになって、品数をとにかくたくさん作れるのがいいことだ、といった風潮があるのには違和感があります。つくるほうからすると、数だけを重視するとどうしても手の込んだ料理を敬遠しがちになります。とにかくたくさんつくってほしい、という方ばかりではありませんし、それで余計な手間が増えてしまったり、おいしく食べられなかったりするのでは本末転倒という気がしてしまいますね。

いきなりレンチンせず、先に「解凍」を

――最後に、冷凍した作り置きをおいしく食べるコツはありますか。

志麻さん:凍ったまま、レンジでいきなり温めないことですね。レンジで急激に火を入れると、外側だけはやく溶けて煮詰まってしまい、中はまだ冷たい、といった加熱ムラが起こりがち。味も均一ではなくなってしまいます。

――ある作り置き料理のレシピ本には「朝出勤前に、夜の献立を考えて冷凍庫から一食分の作り置き料理を冷蔵庫にうつしておき、帰宅後はオーブントースターでじっくり温めて食べるとおいしく食べられる」と書かれていました。しかし朝は保育園送りに気を取られて解凍を忘れたり、帰宅後は子どもがおなかをすかせていたりと、ついいきなり「レンチン」してしまうことが……。

志麻さん:簡単です、レンジに凍った作り置き料理を入れて、まず「解凍」ボタンで解凍してから「レンジでチン」。がちがちに凍ったものにレンジでがっと火が入ってしまうよりは、そのほうがむらなく温められるのでおいしく食べられますよ。

日本人も、もっと食卓を楽しもう

――今日お話を聞いて「作り置きを頼んでいる家政婦さんに、もっといろいろお願いしてもいいのかも」と思うようになりました。

志麻さん:そう思います。忙しいから家政婦を頼んでいるのですから、どんどんコミュニケーションをとって、お願いしたいことは積極的に伝えるとよいと思います。

家政婦マッチングサービスの流行で家政婦さんのチョイスが増えている分、いろいろなスキルの人がいるのも確かです。スキルだけではなく相性も大切なので、自分の要望をなるべく細かく伝え、それをかなえてくれる人が見つかるまで、何人かにお願いして試してみるとよいのではないでしょうか。

日本だとどうしても「一汁三菜が基本」といわれたりしますけれども、私が好きなフランスの食卓は、料理はすごくシンプル。でもみんなで食卓を囲んで話をしながらおいしく食べる、その時間がかけがえのないものなんです。家で食べるお料理をもっと楽しく、もっと簡単につくれるように。そしてそのことで、ご家族で食卓を囲む時間が少しでも長くなるように。私自身も精進していきたいと思っています。
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