築30年の住まい リフォームのベストタイミングとは?
そろそろわが家も築30年。まだ不具合が出ているわけじゃないし、建て替えるには早いような気もする……思い悩むあなたに「お金」「健康」「安心」「利便性」の4つの観点からリフォームのベストタイミングを伝授!
住まいの劣化は見えないところから。早めのチェックが吉!
慣れ親しんだわが家も築30年に。まだ大きな不具合もないし、しばらくはこのまま住めるだろうか……。このように考える人も多いことだろう。しかし、建築家の小宮歩さんは「家の劣化に気づいていないだけ」と注意する。
「床下や壁内、小屋裏など住まい手の目に見えないところでも劣化が進行していることがあるのです」(小宮さん、以下同)。シロアリや雨漏り、結露などによるダメージに気がつかないまま、構造の老朽化が進行すると住まいの安全性も損なわれてしまう。
また、家とともに住まい手の体力も年々低下していく。だから元気なうちに動線や収納、間取りなども見直しておきたい。同時に最新の建材・設備を取り入れることで、住環境はより快適なものになりうる。
早めに手を打つことで先々の家の維持費用も抑えられる。築20年を経過したらプロに点検・チェックをしてもらうべきだ。「早い段階で適切に対処できれば家の寿命はぐっと延びます。ただの修繕ではなく、今の暮らしを見直すいいきっかけにできるといいですね」(写真/PIXTA)
経験者が語る4つの後悔とその対処法
リフォームのタイミングが遅れるとどんな後悔が生まれるのだろう。経験者の声とその対処法を紹介しよう。
【後悔1.お金】
「知らないうちに雨漏りで柱がぼろぼろ。思った以上の大改修で予算オーバー」(Sさん70代女性 築39年の一戸建て)
特に大きな支障もなかったので20年以上、点検も補修もしていなかったら、一昨年、キッチン交換の際に土台が湿気やシロアリでぼろぼろなのが発覚。200万円くらいで済ませるつもりだったのに、補修も含めて800万円の大出費に。もっと早く手当てしておけばよかった……。
●プロのアドバイス
「外装や水まわりは20年目までに一度点検を。早めの手入れで出費を抑えましょう」
「腐朽や劣化が進行する前に手を入れたほうがメンテナンスコストは抑えられます」と小宮さん。建物内部の構造が雨漏りや結露などで傷むと工事範囲が大きくなるからだ。特に屋根や外壁、水まわりは築20年までに点検、補修を行うこと。後回しにするほど工事費の負担は大きくなる。
【後悔2.健康】
「断熱性が低いせいか冬は底冷え。毎年、寒くなると体調不良に」(Tさん 50代男性 築49年の一戸建て)
家の断熱性が低いせいか、冬の底冷えが厳しいため、断熱リフォームを実施。施工後は格段に暖かくなり、以前のように冬場に寝込むことがなくなった。早くやっておけばあんなに苦しまずに済んだのになあ。
●プロのアドバイス
「断熱性の低い家は身体に負担。窓まわりの改善だけでも効果的です」
断熱性の低い家では、夏は熱中症、冬には低気温による心身の不調など、健康上のリスクが伴う。ベストな対処は、床・壁・屋根・天井に断熱材を入れ、外気の影響を小さくすること。「最も熱が出入りする窓まわりを改善するだけでも効果的です」
【後悔3.安心】
「地震のたびに大きく揺れるわが家。耐震性が不安で落ち着かない毎日」(Kさん 60代男性 築53年の一戸建て)
築40年以上のわが家は、2011年の東日本大震災の後は、ちょっとした地震でも大きく揺れるようになり、不安に……。昨年ようやく耐震改修を実施。それまでは「わが家は大丈夫だろうか」とずっと落ち着かない日々が続いていました。
●プロのアドバイス
「築37年以上の家の多くは耐震補強が必要。木造住宅はそれ以下でも耐震診断を」
国の耐震基準が大きく変わったのは1981年6月。それ以前(旧耐震基準)の建物の多くは、地震に対して構造を支える耐力壁の量が少ないので、耐震改修が必要だ。「なるべく早く耐震診断を実施して対処を検討しましょう」
【後悔4.利便性】
「古いキッチンは狭くて雑然としていて食事の支度が苦痛でした……」(Aさん 60代女性 築30年の一戸建て)
新築時にはリビングを優先したため、キッチンは狭苦しくて食事の支度に立つのが苦痛でした。そこで子どもの独立をきっかけに新しいキッチンにリフォーム。子どもたちがいたころが一番家事が大変だったので、そのときにリフォームしたかった……。
●プロのアドバイス
最新の設備・建材には暮らしやすさがグッと向上する進化がいっぱい
住宅設備の進化は目覚ましく、省エネ性や清掃性、収納力などは特に大きく向上しているため、新しいものと交換するだけで暮らしやすさや快適性がぐっと高まる。「使い勝手や家事動線も考慮して選ぶといいでしょう」(写真/PIXTA)
リフォームを成功させるには3つの鉄則がある
以上のような後悔を生まないためには、リフォームの際、どのようなことに気をつければよいのか。小宮さんは下記のような3つの鉄則を挙げる。
「工事はなるべくまとめる」
リフォームは何度かに分けて行うより、複数の工事をまとめることができれば、工期の面でもコストの面でも効果的。例えば、床や壁、天井の撤去を行う内装や水まわり設備の更新、もしくは足場を組む必要のある屋根と外壁の工事などは同じタイミングで実施したい。
「10年後の暮らしまで考慮する」
リフォームでは目の前の不具合に目が向きがち。だが10年後の家族や暮らしの変化も考慮しておきたい。子どもの成長を見越して収納を大きめに確保したり、老後に備えてバリアフリー化したりと、先々の用意もできるとベスト。
「要望には優先順位をつける」
「あれもしたい」「これもしたい」と要望は膨らむもの。しかし予算には限りがあるので、優先順位をつけて割り振ること。特に健康や生命にもかかわる断熱、耐震は最優先。設備だけでなく性能にもしっかり予算をかけよう。
リフォームはそのタイミング次第で、成果や満足度に大きな差が生まれる。気になることがあったら、なるべく早い段階でプロに相談することが重要だ。
構成・取材・文/渡辺圭彦●取材協力
TAU設計工房一級建築士事務所 代表
小宮歩さん
一級建築士。東京理科大学工学研究科建築学専攻修士課程修了。2003年、TAU設計工房入社。2013年、同社代表に就任。新築、リフォームなど住宅事例を多数手がける。
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