デキる後輩に、営業成績で追い抜かされました…【シゴト悩み相談室】

デキる後輩に、営業成績で追い抜かされました…【シゴト悩み相談室】

キャリアの構築過程においては体力的にもメンタル的にもタフな場面が多く、悩みや不安を一人で抱えてしまう人も多いようです。そんな若手ビジネスパーソンのお悩みを、人事歴20年、心理学にも明るい曽和利光さんが、温かくも厳しく受け止めます!

曽和利光さん

株式会社人材研究所・代表取締役社長。1995年、京都大学教育学部教育心理学科卒業後、リクルートで人事コンサルタント、採用グループのゼネラルマネージャー等を経験。その後、ライフネット生命、オープンハウスで人事部門責任者を務める。2011年に人事・採用コンサルティングや教育研修などを手掛ける人材研究所を設立。『「ネットワーク採用」とは何か』(労務行政)、『人事と採用のセオリー』(ソシム)など著書多数。最新刊『コミュ障のための面接戦略』(星海社新書)も好評。

 

CASE30:「デキる後輩に追い抜かされ、落ち込んでいます」(26歳男性・証券会社勤務)

<相談内容>

入社3年目の証券営業です。この春に配属されてきた2年目の後輩に営業成績で追い抜かされてしまいました。

彼…A君はとても愛嬌があるタイプ。お客様の心をつかむのがうまく、みんなに可愛がられ、特に年配層の顧客を多くつかんでいます。営業中の彼の姿は見たことがないのですが、以前店舗に訪れた顧客とのやりとりを盗み聞きしたところ、相手がかなり年上にもかかわらず砕けた口調で雑談し、笑い合っていました。

一方の私は、愛嬌とは無縁のタイプ。どちらかというと人付き合いが苦手で社交性もなく、そんな自分を変えたいという思いで営業職に就きました。真面目にお客様に接し、正しい情報を伝えることが大事だと考え、愚直にそれを貫いてきました。ただ、商圏的には恵まれている旗艦店なのに、営業成績は決していいとは言えません。先日、Aくんの真似をしてみようと無理に笑顔をつくり、世間話を振ってみましたが、既存顧客には「どうしたの?」と怪訝な顔をされ、新規開拓では露骨に気味悪がられました。

営業の仕事が嫌というわけではありません。もっと成績を上げたいのですが…2年目に入ったばかりの後輩に負けて、先輩の威厳もなく、落ち込むばかりです。(営業職)

 

タイプが全く違う後輩の真似をするなんて、一番の悪手

相談者は、少し気にし過ぎではないでしょうか?

証券会社ということは、そこそこ歴史のある企業と推察されます。スタートアップのITベンチャーならさておき、入社して2年や3年程度で安易に「できる・できない」のジャッジをしたり、変なレッテルを貼ったりするようなことはないはず。同じ支店内の、1年後輩という近い世代だから気になるのでしょうが、上から見れば五十歩百歩、どんぐりの背比べ。あまり大差はありません。私が上司だったら、逆に愛嬌だけで成果を上げているかもしれない後輩のほうが心配です。

相談者はまだ若いので無駄とまでは言いませんが、「“愛嬌がない”という弱みを克服することで成長を目指す」はあまり合理的な策とは言えません。基本的には社会人になったら「強みを活かす・伸ばす」が成長の核になります。つまり、無理に後輩の真似をして、ひきつった笑顔で世間話をする必要はありません。なぜなら、それはあなたの強みではないからです。

そもそも、「売れる営業=愛嬌がある」わけではありません。社内を見渡してみれば、愛嬌がない先輩営業なんてごろごろいるはず。相談者がまずやるべきは、「不愛想だけれど営業成績はいい」先輩を探し、ロールモデルにすること。強みの異なる後輩の真似をするなんて一番の悪手だと、私は思います。

 

相性のいい顧客を徹底的に「えこひいき」しよう

気になるのは、相談者の視野の狭さ。半径3メートルぐらいの世界で生きているから、デキる後輩が必要以上にキラキラ輝いて見えるのです。

周囲の人にどう思われているだろうか…なんて心配はいったん止めて、もっと上の人、例えば社歴10年ぐらいのベテラン営業たちが自分のことをどう見ているのか、聞いてみてはいかがでしょう?自分の立場が客観的につかめたり、強みが見えてきたりするのではないでしょうか。

とはいえ、「営業成績は決していいとは言えない」ならば、何かを変える必要はあるのでしょう。相談内容を見ていると、あなたの愚直なまでの真面目さが伝わってきますが、もしかしてどんな顧客にも平等に接していませんか?相性のいい顧客とそうでもない顧客がいると思いますが、どちらにも均等に時間を使っているのでは?

自分を可愛がってくれる顧客、優しく接してくれる顧客を、えこひいきしてみてはいかがでしょう。頻繁に足を運び、情報を優先的に持っていくのです。真面目な相談者は「そんなことしていいのだろうか」と思うかもしれませんが、世の中の売れている営業はみんな「重点顧客」「主力顧客」なんて言い換えて、ガンガンえこひいきしていますよ。

自分に冷たい顧客はいったん脇において、いい顧客にパワーを集中させて頑張ってみれば、数字もついてくるはず。仮に「えこひいき顧客」数人だけで目標数字を達成してしまったとしても、全くOKです。会社的には、特定の顧客に売り上げを依存するのは不安定要素ですが、中堅社員ならともかく3年目ならば怒られるなんてことはありませんよ。どんどんえこひいきしてしまいましょう。

 

「実は、今は修行期間」という可能性もゼロではない

ひとつ引っかかっているのが、「愛嬌とは無縁のタイプ」「人付き合いが苦手で社交性もない」という相談者が、旗艦店に配属され営業を任されていること。

…これは一つの可能性ですが、相談者は「営業として活躍することをあまり期待されていない人材」なのかもしれません。

決して悪い意味で言っているのではありません。

中途採用では、すぐに活躍してくれる即戦力を採用しますが、新卒採用ではそんなことはありません。一人ひとりの適性を見て、さまざまなタイプをまんべんなく採用して「人材ポートフォリオ」を組んでいるはずです。

もしかしたら相談者は、5年後10年後を嘱望され採用されたのかもしれません。将来事業開発とか営業企画を任せたら力を発揮してくれそうだと期待されていて、今は現場の知識をつけるために修行の一環として「タイプ的にはあまり合っていない営業」に一時的に配属されているのかもしれません。会社に本当に期待されているのは、実は後輩よりも断然あなた、という可能性もあり得ます。

こういうことは、通常本人には言わないものです。周りを見渡してみて、自分だけ明らかにタイプが違うな…と思ったら、「将来嘱望採用」の可能性は高いかも。

営業現場を理解したうえで事業開発や営業企画に就けば、より現場にフィットした、効果的な企画立案ができるはず。そう考えれば、雑念にとらわれず、目の前の仕事にもっと前向きに取り組めるのではないでしょうか。

 

アドバイスまとめ

「弱みを克服」はあまり合理的とは言えない。

「愚直なまでに真面目」という強みを活かし、

いい顧客とのパイプを太くしよう

EDIT&WRITING:伊藤理子 PHOTO:平山諭

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