「わたし、定時で帰ります。」の登場人物に学ぶ、カラフルな働き方改革とは?

「わたし、定時で帰ります。」の登場人物に学ぶ、カラフルな働き方改革とは?

残業至上主義だったのはもう昔の話。定時で帰る人、とことん仕事を頑張りたい人、子育て中の人など様々な生き方を選択する人が職場にいて、それを受け入れていこうという風潮になってきています。

吉高由里子さん主演のドラマ『わたし、定時で帰ります。』(毎週火曜22時~)には、世の中のそんな流れを象徴するように、多様な考え方の社員が登場します。きっと職場にも似たような人たちがいるのではないでしょうか。職場に自分と異なる考え方をする人がいる時、私たちはどう接すればよいのでしょうか。

自身も会社を経営して、ブラック企業の反対はホワイト企業ではなく、カラフル企業であると提唱するThe Breakthrough Company GO PR/Creative Director 三浦崇宏さんに、これからの職場での多様性と接し方について伺いました。

The Breakthrough Company GO 代表取締役 PR/Creative Director 三浦 崇宏さん

博報堂・TBWA\HAKUHODOを経て2017年独立。日本PR大賞、グッドデザイン賞、カンヌライオンズの各賞などを受賞。NTTdocomoやLINEの新規事業などをプロデュース。またペイミーやスマートドライブといったスタートアップのサポートも実施。最近ではCAMPFIREの企業ブランディングや、松竹の新規事業『京都ミライマツリ2019』をプロデュース。名古屋パルコ30周年プロジェクト『LOVEPARCO』のクリエイティブディレクターも担当。Twitter:@TAKAHIRO3IURA

【CASE1】定時にオフィスを退社する社員

Focus 1──東山 結衣(吉高 由里子)(32)

「絶対残業しない」がモットーのWebディレクター。定時に退社し、行きつけの店のハッピーアワーでビールを飲むのが何よりの楽しみ。他のチームやメンバーが残業していても「みんなが一つのことをしていたら、会社が回らないよね。私たちは私たちの仕事をする。手を貸してって言われた時は手を貸す」と考える。しかし、仕事は効率良くこなし、指示も的確でそつがない。

<1話のシーンより抜粋>

東山:(18時になった瞬間)さ、帰ろ! お疲れさまです!

三谷:プロジェクトも終わったことですし、打ち上げなどして、後輩を労わなくてもいいものでしょうか?

東山:みんな早く帰りたいんじゃないですかね。

三谷:みんなで一緒に、次のキャンペーンのことを考えたいと思うんです。

東山:発注来てからでも間に合うと思います。お先、失礼します。

東山さんのように、自分の目標に誠実に働こう

【ビジネス現場ではこう動く】東山さんのこの働き方には、見習うべき点があります。仕事とは、自分の人生を充実させるための一つのツール(道具)に過ぎません。東山さんのあり方はとても正しいですし、すごく良いと思います。非常に好感を持ちました。

彼女は、仕事が終わらないのにただ定時で帰宅しているわけではありません。周りに流されず、自分がやるべきことはきっちりこなして帰っているし、他のシーンを見ると、クライアントとトラブルになったなど緊急時には休日でもしっかり対応しています(もちろん、後で代休の申請もしています)。

こういう人は、自分の目標に対して誠実な人です。会社側と話し合って、目標に合意できればそれをきちんとやり遂げる人。つまり、他人のルールで生きていない人です。

彼女の「私はこの時間内でこの仕事ができます、それは確実に終わらせます」というスタンスは、素晴らしいと思います。それはつまり、自分の能力を上司や同僚にも共有できていて、周りが理解しているからです。

東山さんは有給を毎年フル消化しているとのことですが、これも社会人には皆やってほしい。東山さんを見習い、彼女のような働き方を目指した方がいいと思います。もし職場に、いつも定時に帰るデキる先輩がいたら、ラッキーだと思ってください。その人に「どうやって、仕事をしてるんですか?」とそのコツを聞き、ノウハウを吸収しましょう

【CASE2】リーマンショック就職世代・頑張りすぎの先輩

Focus 2──三谷 佳菜子(シシド・カフカ)(32)

小学校のときから一度も欠勤したことのない優等生タイプ。リーマンショックの頃に就職し、いつ解雇されるかわからないという危機感の中で働いてきた。ところが彼女の「新人は皆、無理をすべき」というスパルタ教育のせいで新人は辞めてしまい、風邪を押して出勤したところ、クライアントから依頼された業務をこなせず、迷惑をかけてしまいました。

<1話のシーンより抜粋>

児玉:それ……必要ですかね? 他のことを先にやった方が……。

三谷:やって無駄なことなんてありません。仕事を取ろうと思ったら、人の倍、いや、10倍のことはやらないと。

中小企業で物量作戦はNG。そもそも勝てるわけがない

【ビジネス現場ではこう動く】はっきり言って、三谷さんは致命的に間違っています。まず一つは「仕事を取りたいなら、人の10倍やるべき」と物量で戦っている点。そしてもう一つは「皆がやっているから、やりなさい」という説教の仕方も間違っています。

仕事にある程度のグルーブ感や結束力は重要ですが、三谷さんのようにトップダウンで「皆一様に、残業するべきだ」と押しつけてはいけません。

仕事をする上で、このドラマの舞台であるネットヒーローズのようなベンチャー企業が「他社の10倍頑張る」という物量作戦で戦っても、業界トップの大手企業には勝てないでしょう。

戦略とは、「戦いを略す」ということ。いかに戦わないで済むやり方を探すかが重要です。中小企業ほど、戦わなくていいやり方や、効率的な戦い方を考えるべきです。少人数の会社で、労働力や労働時間で戦おうとしている時点で、戦略を誤っていると考えてよいでしょう。

もう一つ、「皆がやっているし、皆やってきたことだからやりなさい」という指示の仕方はNG。生きてきた時代も社会環境も違うわけだから、あの人がやっているからあなたもやりなさいという考え方は通りません。論理的な指示ではなく、ただこれまでの慣習に則っているだけです。

こういう人が自分の教育係や上司になったら、相手にしなくていいでしょう。話を聞き流して、自分の時間や気持ちに余裕がある時だけ聞けばいいと思います。あるいは、その業務が必要な状況、期待すること、この業務に携わるメリットを論理的に説明されて納得できたら、指示に従ってもいいでしょう。

【CASE3】育休から復帰してはりきりすぎなワーママ

Focus 3──賤ヶ岳 八重(内田 有紀)(40)

ベテランのWebディレクター。双子を出産し、育休復帰して間もない。産前は「帰れる時は定時で帰ろう、休める時は休もう」という考え方だったが、職場復帰して焦りを感じたのか、「何でもやります!」と宣言するように。周りの意見に耳を貸さず無理をするあまり、クライアントとの重要な打ち合わせに遅刻してしまいました。

<2話のシーンより抜粋>

賤ヶ岳:時短勤務がいいとか、甘えたことは言いません。初日から残業でもなんでもやります!私は守られたいとは思ってませんし、前と同じに扱ってほしいです。子どもがいたってちゃんと働けます。

出産は変化ではなく進化。企業は前向きな進化をデザインしよう

【ビジネス現場ではこう動く】人間とは、人生を歩んでいく中で変化する生き物です。変化の前と後で、同じことを求めるのは少し違うと思います。僕は、子どもができたら絶対に育休を取ります。子どもの小さい時は、二度と味わえないかけがえのない時間。自分にとっても大きな成長のチャンスにつながるのではないでしょうか。

出産だけではありません。介護、病気、怪我など人生には「変化」がつきものです。この変化をマイナスととらえるのではなく、進化と捉えてほしい。その進化を、もっと楽しんでほしいと僕は思っています。

母になった人には、母になった人の働き方があるのではないかでしょうか。それは、いわゆるマミートラックのように、それまで現場の最前線に立っていた人が、内勤になれということではありません。

企業側はそこで「バリキャリ」か「ゆるキャリ」かの二択でふるいにかけてしまうのではなく、彼女たちと合意形成しながら、母になった優秀な人たちをどう活かすのか、彼女たちを受け入れる弾力性のある組織にするにはどうすべきか、真剣にデザインしていかねばなりません。

とはいえ、賤ヶ岳さんが、以前と同じ労働環境を目指して、「できる」と言い張るのも、コンプレックスを感じるのも間違っています。自分の人生に「変化」が起きたのなら、「できること」と「できないこと」を整理してみてください。できないことに落ち込む必要はありません。あらゆるデメリットは、個性として輝く可能性を秘めているし、武器に転じられるのです。

もし職場に、子育て中の先輩や同僚がいたら、「子育てって、どうやってるんですか?」「仕事と子育ての両立って、毎日どんなスケジュールなんですか?」と聞いてみてください。自分だって、いつか同じ立場になるかもしれません。今のうちに、周囲の変化から学んでおくとよいでしょう。

僕自身は、今、男性に「子どもがいること」が問題にならないことの方がおかしいと思っています。このドラマに出てくる賤ヶ岳さんの夫(坪倉由幸)のように男性も育休を取るべきだし、男性の仕事への向き合い方が変わってもいいと思います。

【CASE4】24時間フル稼働!徹夜も平気なザ・仕事人間

Focus 4──種田 晃太郎(向井 理)(37)

仕事はデキる敏腕Webプロデューサー。以前は東山と婚約していましたが、親族との顔合わせ当日の朝まで徹夜で仕事をしていて、予定をすっぽかすほどの仕事人間。しかし、プライベートをないがしろにするあまり、婚約が破談になってしまいます。

<2話のシーンより抜粋>

東山:仕事と私との結婚、どっちが大事なの……?

種田:仕事だよ。

定時以降の仕事は、“仕事という名の趣味”

【ビジネス現場ではこう動く】はっきり言います。こういう人は、好きなだけ働いてもらった方がいいでしょう。なぜなら、東山さんのような素敵な女性との結婚より、仕事が好きなんですから。この人にとって仕事は、仕事の領域を超えて、もはや趣味です。それだけ仕事が好きなのですから、とことん仕事をさせてあげましょう。

もちろん、経営者やマネージャーは彼の体調管理や業務量調整などをしなければなりません。しかし、彼とはただ職場の同僚、という関係性なのであれば、エースである彼にあらゆる仕事のパスを集めてしまいましょう。

残業をやりたくない人に押しつけるのはよくないですが、仕事が大好きでやりたくてたまらない人から取り上げるのもおかしな話です。

もちろん「無理しないでくださいね」とか「ちょっと休んでみたらどうですか」と声をかけたり、思いやりも必要ですが、この人は人生の重要な局面である結婚よりも仕事が好きな人です。それを周りが邪魔する必要はありません。思いきり仕事に熱中させてあげましょう。

【CASE5】「なんでも人のせい」にする“他人事系若手”

Focus 5──来栖 泰人(泉澤 祐希)(22)

Webディレクター見習いの新人。やる気ゼロで、「辞めたい」が口グセ。Web CM撮影中のオフショットを仲間うちのグループチャットにアップしてしまい、その動画がSNSで拡散。大炎上。クライアントに大損害をもたらしてしまいます。

<3話のシーンより抜粋>

種田:仲間うちのグループチャットに送った動画を友だちが無断で拡散して炎上騒ぎになってるぞ。

来栖:マジ勘弁って感じなんですけど。

種田:自分のせいじゃないって言いたいの? クライアントにどれだけ損害を与えたかわかってる? 新人だからって許されるわけじゃないんだよ。意識が低すぎる。会社によっては即クビだぞ。

来栖:わかりました……じゃあ、辞めます。

プロ意識はすぐには育ちません

【ビジネス現場ではこう動く】ミスをした上に、人のせいにして自分は逃げてしまう。圧倒的なプロ意識の欠如です。クライアントからお金をいただいて、その企業の価値を高めるための仕事を任されているのに、それを貶めている。そしてその自覚がない。プロとして失格です。

僕だってこんな無責任な若手がいたら、「生まれる前からやり直せ!」と思わず叫んでしまいそうです。

正直、これは企業側の採用ミスだし、育成ミス。クライアントの世間的な信用を失墜させたこと、そしてその責任を取らねばならないことについての自覚がまったくないからです。ただ、新人にいきなりプロ意識を持てというのは無理なもの。プロ意識を育てるには、時間がかかります。長期的に育てるという覚悟のない企業側にも、責任があるでしょう。

もし同僚にこんな人がいたら、関わってはいけません。自分自身が、こうならないよう肝に銘じましょう。

「僕は育休取ります」と言えるカラフル企業の時代到来!?

「わたし、定時で帰ります。」の登場人物に学ぶ、カラフルな働き方改革とは?

働き方改革とは、東山さんのような定時で帰りたい人のあり方も認めるし、種田さんのように好きなだけ働きたい人のあり方も認める。全ての人の生き方や考え方を丸ごと認めることが、本当の働き方改革なのだと思います。僕は、ブラック企業の反対は、カラフル企業と定義したい。画一的な生き方から、多様性へと転換する今の時代を象徴するドラマだと思います。

<番組情報>

『わたし、定時で帰ります。』(TBS 火曜 22時~)

朱野帰子の同名小説を原作に、社会人が持つべき“ライフワーク・バランス”とは何かについて問うお仕事ドラマ。ヒロインの東山結衣は「残業ゼロ!定時で帰る!」がモットー。Web制作会社を舞台に、彼女を取り巻く上司や同僚たちの生き方を通して、これからの働き方について探る。脚本は奥寺佐渡子氏、清水友佳子氏。出演は、吉高由里子、向井理、中丸雄一、柄本時生、泉澤祐希、シシド・カフカ、内田有紀、ユースケ・サンタマリア 他。

WRITING:石川香苗子

新卒で大手人材系会社に契約社員として入社し、2年目に四半期全社MVP賞、年間の全社準MVP賞を受賞。3年目はチーフとしてチームを率いる。フリーライターとして独立後は、マーケティング、IT、キャリアなどのジャンルで執筆を続ける。IT系スタートアップ数社のコンテンツプランニングや、企業経営・ブランディングに関するブックライティングも手がける。学生時代からシナリオ集を読みふけり、テレビドラマで卒論を書いた筋金入りのドラマ好き。

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