〈ミラノサローネ2019〉インテリアデザインも職人技からAI技術まで!世界の感性が集結
2019年4月9日~14日のMilan Design Week(イタリア・ミラノ)は、インテリア世界最大の見本市「ミラノサローネ国際家具見本市(Salone del Mobile.Milano)」(以下、ミラノサローネ)を核に、街中がデザインの祭典に沸いた。レオナルド・ダ・ヴィンチ没後500年のオマージュ企画から、最先端のテクノロジーとデザインの融合も見られた刺激的な1週間となった。
デザイン都市ミラノ、イタリアオペラの殿堂「スカラ座」とも共演
今年2418の出展数となったミラノサローネ見本市会場には、181カ国から38万6236人が来場。加えて街中でのイベントが1,350カ所もあり、その一つTortona地区にあるSurperStudioでも8万人が来場とのこと。総勢50万人を超えるデザイン・コンシャスな人々であふれた、Milan Design Weekとなった。
ミラノは世界一の“デザイン・シティ”を目指し、国を挙げて産業界を盛り上げている。今年から、芸術の中心であるミラノ・スカラ座財団とのパートナーシップを結び、デザインとアートの融合も強化。そのスカラ座でミラノサローネ前夜祭が開催された。スカラ座音楽総監督リッカルド・シャイーによる前夜祭のコンサート。筆者もバルコニーから鑑賞(写真撮影/藤井繁子)
驚かされたのは、その後のディナー。なんと、オーケストラがはけた、舞台上にテーブルがセットされていた!別室でアペリティーボ(食前酒)を楽しんでいる間に、約300名のテーブルがステージ上で完璧にセッティング!? スゴイ技(写真撮影/藤井繁子)
スカラ座ディナーでも椅子は、Kartell社『MASTERS』のゴールド・バージョン! 樹脂製で軽く、スタッキング可能という特性が、このような場でも活かされている。
さて、翌日からミラノサローネが開幕。見本市フィエラ会場でも、そのKartell社が朝一注目を集めていた。世界のメディアを前に登場したのは、やはりこの方。御歳70歳のP.スタルク氏がプレゼンテーション(写真撮影/藤井繁子)
実は今年、Kartell社は創業70周年記念(スタルクと同い年!)。ここで発表されたのは、「世界初のAI(人工知能)によって創られた椅子」。基本AIが描き出したデザインに、スタルクがアングルなどの注文を付けただけというプロセスが動画で紹介され、会場の目が釘付けになった(動画は記事末にて掲載)。『AIデザインの椅子』3D 技術を使ったデザイン・設計ソフトのAUTODESK社(米国)とコラボ(写真撮影/藤井繁子)
スタルクは「デザイナーの仕事も無くなる? そうじゃない、素晴らしい友ができたって気分だ!」とAIとの協働を楽しんでいた。
また、Kartell社70周年を記念した特別展〈The Art side of KARTELL〉は、Palazzo Reale(王宮) Museumで開催された。夜のパーティーは家具・照明から食器・花器までKartellずくし。王宮の階段にも、充電式のランプ『BATTERY』が並んでお出迎え。大理石の床に放たれた光模様の美しいこと!(写真撮影/藤井繁子)
アジアン・デザイナーがラグジュアリーブランドで活躍
日本でも人気のイタリア・ラグジュアリーファニチャーブランドのMinotti社。
昨年、日本のデザイナーnendo(佐藤オオキ)などを起用し話題を集めたが、今年は更に斬新なプロダクト&展示に驚かされた。このゼブラ柄ファーが空間のアクセントにたくさん使われていた。ほかにもパープルのファーやガラス使いなども素敵だった。ソファはR.ドルドーニによる新作『LAWSON』、アームで抱かれるようなデザイン(写真撮影/藤井繁子)
そして、nendoによるアウトドア家具『TAPE CORD OUTDOOR』シリーズが発表された。Minotti社で遭遇した佐藤オオキ氏。昨年リリースの家具『TAPE』が、翌年アウトドアラインとして追加されるとは……評判が良かったに違いない(写真撮影/藤井繁子)
アウトドア家具としては小ぶりにデザインされていて、日本の住宅にもフィットするサイズ感。このデイベッド、バルコニーや中庭に置けば、日常が非日常になること間違いなし(写真撮影/藤井繁子)
一方、同じく歴史あるラグジュアリーブランドMolteni&C社で見られたのは、初めてアジア人としてデザイナーに起用されたNeri&Hu(中国)のベッドルーム。『TWELVE A.M.』ベッドとサイドベンチ。Neri&Huは世界で活躍する男女のユニット。シンプルでプラクティカルな上品さに共感する(写真撮影/藤井繁子)
話題を呼んだ新企画パビリオン〈S.Project〉、日本のMaruniも登場
〈S.Project〉と名付けられた新企画のパビリオン。従来のカテゴリーにとらわれず、家具・水まわり・照明などブランド横断で空間展示を行うなど多目的な場が見本市会場に用意され87社が出展した。
ここで4000平米もの巨大ブースで注目を集めていたのが、家具のB&B Italia社、照明のFlos社 ・Louis Poulsen社の合同展示(Design Holdingグループ)。B&B Italia社が久しぶりに見本市会場へ出展することもあって、来場者が押し寄せていた。
面白かったのは、ブースの壁にイラストで描かれた著名デザイナーたちと3社の代表作品。センサーを感知すると、デザイナーたちが動いてウィットのあるリアクションを見せてくれる。 黄色の丸ゾーンに手を置くと、センサーで動き出すデザイナー。インタラクティブなプレゼンテーションが今っぽい(写真撮影/藤井繁子)P.ウルキオラ女史(B&B Italia社)は、あまり似てないが……nendo佐藤くん(Flos社)はよく似てる!(写真撮影/藤井繁子)
外で遊んでから中の展示へ。B&B Italia社の家具を分解し構造を見せることで、クオリティの高さを解説するゾーンが興味深かった。V.V.デュイセンによる新作チェア『Pablo』も一枚の革で構成されているのが分かる(写真撮影/藤井繁子)
A.チッテリオがデザインしたダイニングも、M.アナスタシアデスがデザインした照明(Flos社)と合わせることで、また違った空間が生まれる。テーブル『Astrum』とチェア『Fulgens』はチッテリオ氏、照明『Arrangements』はアナスタシアデス氏の共演(写真撮影/藤井繁子)
M.アナスタシアデスの今年の新作照明(Flos社)も素晴らしかった。『Coordinates』=座標、と言う名のとおり縦横3次元の軸が交差するデザイン。ニューヨークのホテルFour Seasonsのレストラン用にデザインしたものを商品化(写真撮影/藤井繁子)
次も人気グループの出展、キッチンやバスルームなど水まわりの老舗ブランドBoffi社を中心に、家具の人気ブランドDePadova社などグループ4社で〈S.Project〉に出展。
メインデザイナーのP.Lissoniが、大きな池の上に建つようなブースをデザインした。Boffi社の新作『Round Fisher』かなり大きい丸のバスタブ(高さ45×直径190cm)コーリアン人工大理石コーリアン®製。シャワーはM.ワンダースのデザイン(写真撮影/藤井繁子)
DePadova社でも、リッソーニ氏デザインの丸いテーブル。今年は丸く収めたい?新作テーブル『FRENCH CONCESSION』(高さ73×直径250cm)リッソーニ氏は「花が咲くように」と表現。照明は人気の女性建築家E. オッシノによる『ELEMENTI』(写真撮影/藤井繁子)
そんな世界的なトップブランドが居並ぶ〈S.Project〉に、日本のMaruni(マルニ木工)も出展。昨年までのパビリオンから〈S.Project〉へ移動し、スペースも約2倍に拡大したMaruniの挑戦。深澤直人氏(右)デザインの『Roundish』アームチェアにクッションシートが登場(写真撮影/藤井繁子)
AI(人工知能)と、人・暮らしの関わり方を探るプロジェクトも
市内の展示(フオリ・サローネ)で筆者が興味をもったのは、Google社の体験型インスタレーション。
デザインが感情や健康に、どう影響するのかを探求するプロジェクトだ。Google Design Studioが建築事務所Reddymade Architecture、デンマークの家具ブランドMuuto社、そして米国のJohns Hopkins Universityと組んだ企画。
心拍数、皮膚温、運動、皮膚伝導性などのデータを測定するセンサーを備えたリストバンドを巻いて、10人1グループで入場。3つのインテリアデザインが異なる部屋に5分ずつ滞在する。
3つの部屋で参加者が感じた快適性や感情を、biological(生物学)データを分析して“最も心地よい”と感じた部屋を教えてくれる。(意外と自分が感じた部屋の印象と、データに現れた生理反応が違うことも多いそう。頭と体の反応が違うってこと?)左/3部屋から退出後、リストバンドを計測モニターに置くと、3部屋での反応データが現れる。筆者は真ん中の部屋が心地よく反応したと出た。インテリアの色や素材、デザインだけでなく、香りや音楽も影響している。右/一人一人の結果データを即、カードにプリントアウトし解説してくれる。その手際良さにも、IT企業らしさを実感し感動(笑)(写真撮影/藤井繁子)
Googleとしては、デザインの影響を可視化することで、さらに感性デザインを深く追求する事に役立てたいということだ。
Sonyは昨年同様、Tortona地区で企画展示。
〈Affinity in Autonomy -共生するロボティクスー〉というテーマで、人とロボティクスの関係性についての新しいビジョンを提案した。5つのセクションで構成された展示を進むと、センサーによって人を感知したロボットが反応する様々な形を体験できる。生命感をそなえたロボティクス『aibo』。名前を呼ぶと反応し、撫でると喜ぶ。ここでは感情が下のモニターに色彩で現れる、赤くなっているのは怒っているらしい(写真撮影/藤井繁子)
最後のセクションでは、ロボティクスが来場者に今回の展示に関するフィードバックを尋ねる。記入台が自動で人に寄ってきて、身長に合わせて台の高さが変わる(写真撮影/藤井繁子)
人とロボティクスの共演を、エンターテインメントで魅せたのがLEXUSのインスタレーション。
日本のテクノロジーアーティスト集団ライゾマティクス(Rhizomatiks)を起用(リオ五輪の閉会式や紅白歌合戦のPerfumeも手掛けた)。
暗闇で一人のダンサーと一緒に踊るのは……4輪の付いたパーテーションのようなロボットたち!?〈LEADING WITH LIGHT〉@Tortona地区Superstudio Piu会場。ダンサーの後ろを付いて回ったりするパーテーション・ロボット。そこにも光が投影され、空間にリズムが出る( 写真撮影/藤井繁子)
ダンス・ショーが終わると観客に光るボールが渡されて、照明にかざしてみる。照明が光るボールを追随するセンサーシステムを体験。
センサー技術によって人の動きにリアクションする、インタラクティブな体験型イベント展示が増えてきた。インスタレーションも“見て感動する”から、”やって見て感動する“時代になった。
日本からはインテリア以外の企業の参加も増えている。ダイキン工業がnendoと個展を行ったり、AGCやグランドセイコーは継続して出展、YAMAHAやLIXIL(INAX)が復活出展、住友林業は初出展など世界に向けたブランディングをミラノで行った。
年々、出展者・来場者共に増加し、世界のメディアが注目するMilan Design Week。
来年のミラノサローネは、2020年4月21日(火)~26日(日)と今年より遅い開催スケジュールと発表された。キッチン・バス見本市が併催の年。さらなる技術革新や新たなタレントと会えるのを楽しみに。Chao!
■「世界初のAI(人工知能)によって創られた椅子」Kartell社発表会の様子
>関連記事:ミラノサローネ2019の見どころは? “ダ・ヴィンチ没後500年”とモダンデザイン【Salone del Mobile.Milano(ミラノサローネ国際家具見本市)】
来年の会期:2020年4月21日(火)~26日(日)
>ミラノサローネ・オフィシャルサイト
>日本版 ミラノサローネ・オフィシャルサイト
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