美味しいコーヒーの淹れ方
コーヒーの味は、8割方焙煎(ばいせん)されたコーヒー豆そのものに依存し、残りの2割が淹れ方に依存すると言われます。淹れ方にこだわるよりもむしろ、自分の目と鼻で美味しいと思われる自家焙煎の豆を手に入れるべく色々な店の豆を試すことをおすすめします。美味しい自家焙煎のコーヒー豆であれば、極論すれば淹れ方が適当でも美味しくなります。上手に淹れられるようになれば更に2割増し、もしかしたら5割増しのバリスタ顔負けの美味しいコーヒーが淹れられるかもしれません。
コーヒー豆について
●自家焙煎のコーヒー豆は美味しい
焙煎したコーヒー豆は生鮮食料品です。えっと驚かれる方が多いでしょうが、購入後に一番適した保管場所が冷凍庫であることを知れば納得します。とれたての新鮮な野菜が美味しいのと同様、焙煎後一週間以内に自宅で入れるコーヒーがいかに美味しいかということはあまり知られていません。現在はインターネットでも手軽にコーヒー豆が買えるようになり、「激安!」とかいろいろうたい文句におどらされることがしばしばあります。安い豆というのは焙煎後時間がかなり経っていたり、質が悪かったり、要は安かろう悪かろうということです。京都や神保町でのカフェ巡りを体験して感じたのは、自家焙煎のコーヒー豆は美味しいということです。
では、何故自家焙煎のコーヒー豆が美味しいのでしょうか?
1.コーヒー豆を自家焙煎するということは、必要最小限の豆しか焙煎しない。
2.自家焙煎のお店はコーヒー豆に対する造詣が深く、質の良い豆を安定して仕入れることができる。
そういったこだわりの自家焙煎のお店で売っているコーヒー豆は値段が高いので驚きます。しかしよく考えてみて下さい。有名で美味しいとされるカフェで飲むのと同じレベルのものを自分で淹(い)れることは可能なのです。カフェで飲むコーヒー代を考えれば、自分で淹れるコーヒーのほうがコストパフォーマンスに優れていると言えます。スターバックスのコーヒーと家でいれるブルーマウンテン100%のコーヒーとの比較では、自宅で淹れるほうが安いという驚くべき事実が判明しています。もっともカフェの良さは雰囲気というものにかなり左右される要素があるので、一概に家で淹れるのが最高とは言い難い場合もあります。
コーヒーの味の良し悪しを左右するのは、何と言っても豆自体にあるのです。日本はコーヒー豆を栽培するのに適した環境ではないので、(徳之島で栽培されているという例はあるにはありますが)海外から輸入することになります。2005年01月21日の新聞では清涼飲料水のシェアでお茶がコーヒーを越えたと報道されています。しかしながら、世界中の一番質の高いコーヒー豆を手に入れることのできる国が日本であるということはまぎもない事実です。コーヒーを淹れるテクニックとかうんちくとか難しい話は抜きにして、誰にでも自宅で簡単に美味しいコーヒーを淹れることはできるのです。
まず実際に自家焙煎のお店を探してみることが、質の良い美味しいコーヒー豆を手に入れる近道だと思います。そんなお店は知らないよという方は、「自家焙煎珈琲店めぐり」というサイトで検索してみると意外と身近な場所にあったりします。
●少量ずつ豆のまま購入する
豆を購入するにあたって、注意すべき点がいくつかあります。
1.少量ずつ豆のまま購入する。
2.小規模な個人経営の店を選ぶ
3.焙煎した日付がラベルに入っている店を選ぶ
4.売れるサイクルの早い豆を選ぶ
4に関しては何度も通ってみても分からないこともありますが、1、2に関してはすぐに実行できます。3に関してはラベルにそこまで気を遣っている店は少ないのが現状です、思い切ってお店の人に尋ねてみるのもいいでしょう。
少量ずつ豆のまま購入するということが、鮮度の高いコーヒー豆を常に手に入れる簡単な方法です。しかし一人暮らしでなかなか豆を消費し切れないという方もいらっしゃるでしょう。店によってはあらかじめ詰められた200gの袋しか売らないということもありますが、100g、場合によっては50gずつから購入するのが良いでしょう。一週間で使い切る量を購入するのが理想的ですが、店が遠かったり買いに行っている暇がないということもありますので、最低でも二週間で使い切る量を購入し常温で保管し、購入後一週間経過したら冷凍庫に入れて保管するようにしてます。エスプレッソ用にお店で極細で挽(ひ)いてもらうということもありますが、基本的に豆はそのままで購入し、淹れる直前にコーヒーミルで挽きます。
小規模な個人経営の店では、時として滅多に手に入らないようなレア物が手に入る場合も!
先月自宅近くの行きつけの自家焙煎のお店で『The Exceptional Cup』なる品評会で賞を獲得したグアテマラの豆を手に入れました。あまりにも美味しいので続けて2回購入したほどです。よくよく店主に伺ってみると大規模なチェーン店や量販店では決してそのような逸品が出回ることはないと断言していましたよ。
美味しいコーヒーの淹れ方
●抽出器具について
ここではネルフィルターで淹れる際の抽出器具について紹介いたします。ペーパードリップで淹れる方が大多数ですが、私はネルフィルターでしか淹れたことがありません。ネルフィルターのメリットとしては、
1. ペーパーの臭いを気にせず、コーヒー本来の美味しさを抽出するのに最も適している。
2. 環境に優しい(毎回紙ゴミを出さない)。
ネルフィルターのデメリットとしては、
1. ネルフィルターを扱っている店が極端に少ない。扱っていたとしてもべらぼうに値段が高い。
2. ネルを使用前に煮沸、使用後に水洗いし、水に漬けて冷蔵庫に保管する手間がかかる(面倒ならばネルの水分を絞って冷凍庫で保管するというのも可)。
という点が挙げられます。
ネルフィルターの取り扱いは確かに厄介ですが慣れてしまえば、全く苦になりません。むしろ問題なのは安価なネルフィルターの確保です。京都の老舗イノダコーヒー本店の店頭でネルフィルターが安価に売られているのを見つけ、5個まとめ買いしたことがあります。関西方面の方に尋ねてみたら、予想通り自分と同じことをしているとのことでした。使用頻度にもよりますが、ネルフィルターの使用限度は約50回程です。長年金属のワイヤーのついたまま使用済みのネルフィルターを捨てるのを、地球に優しくないと心苦しく思っていました。最近ハリオ(HARIO)製のネルフィルターは布だけ交換できることを知りました。大きさは1~2人用、3~4人用で専用のドリップポッドを購入することをおすすめします。このハリオのウッドネックネルフィルターとドリップポッドは、コーヒー専門店で時々見かけることができます。
・コーヒーミル
お店では業務用の電動ミルで挽くのが一般的ですが、手動式のぐるぐる回すタイプのミルはインテリアとしても使えます。上に付いているネジと金具で出来上がりの豆のサイズを調節することができます。細かくすれば濃厚な味に、粗くすればあっさりとした味になります。粗挽きネルドリップという言葉にとらわれて最初は物凄く粗く挽いて不味いコーヒーを連発してしまいました(笑)。
・ケトル
素材はステンレス、ホーローなどがありますが、一番重要なのは注ぎ口が鶴の首のように細くなっているかどうかです。注湯する際に少しずつお湯を注ぐことが絶対条件なので、間違っても一般的なケトルは使わないで下さい。注ぎ口が細ければ問題ないのですが、コンロで加熱して取っ手の部分が熱くならない(木やシリコンなどの素材)ものが望ましいです。自分の持っているのはカリタ ドリップポット600Sという美しいフォルムが売りのものですが、取っ手が金属製なので多少不便です。
・ドリップポット
一人分を作るのであれば別になくてもいいという説もありますが、やはりあったほうが便利です。抽出したコーヒーの濃さを均等にするという中国茶などで言うところの茶海と同じ役割を果たしています。また、冷めてきたコーヒーを温める為にコンロ(弱火)にかけることができるなどのメリットもあります。ステンレス製の保温ポットを使うという手もあります。これなら温かいコーヒーをいつでも楽しめます。
・コーヒーカップ
こればかりは個人の趣味なのでお好きなものをお選びください。ひとつだけ言えることは、カップによってコーヒーの味の印象が随分変わるということです。以前はティーカップで代用していましたが、沖縄の渋い色合いの壷屋焼きのコーヒーカップに替えてから心なしか美味しく感じられるようになりました。コーヒーカップの厚さの薄いほうが味がシャープに感じられ、厚くなるとぼんやりとした感じになると言われますが、気に入ったものが一番いいでしょう。
●淹れる手順について
1.片手鍋にネルフィルターを漬けて置いた水を入れ、水を入れたケトルと共にコンロにかける。
2.豆をコーヒーミルで挽き始める。
3.片手鍋のお湯が沸騰してきたら、弱火にしてネルドリッパーを1~2分間煮沸する。
4.ネルフィルターをドリップポットの上部にセットし、片手鍋のお湯をポットに注いで温める。
5.ケトルの蓋を開けて湯温を下げる。
6.ドリップポットに入れたお湯をカップに移し、カップを温める。
7.ネルフィルターについたお湯が冷めてくるのを見計らって、上から押さえるようにして取り除く。
8.粉をネルフィルターに均一の高さになるように注ぐ。
9.ケトルのお湯を粉の上に少しだけ注ぎ、コーヒー豆を蒸らす(20秒~1分)。
10.ケトルのお湯を粉の上に“の”の字もしくは螺旋状に注湯する。注ぐというより粉の上にお湯を置くという感じでドリップするのがコツです。
11.これを2~3回繰り返す。粉がふくらんだ高さ以上に注がない。ネルフィルターの内側に粉の壁ができますが、これを壊さないように3分以内で注ぎ終える。
12.粉を捨てネルフィルターを水洗いする。間違っても洗剤は絶対に使用しないこと。
13.タッパーなどに水を張り、ネルフィルターを浸し、冷蔵庫に保管する。
以上は独学もしくは経験的に培った手順ですが、一連の動作を行なううえで重要なのは、
広い作業スペースを確保すること
狭い場所でやろうとすると必ず失敗します。綺麗に整理整頓された広いスペースで淹れれば見た目も美しく、バリスタ気分で迅速に気持ち良く作業をすることができます。
質の高い豆を選び、質の高い器具を用意すること
豆の量は目安として一人前10gとされていますが、一人前15gくらい使うことをおすすめします。質の高い豆をふんだんに使えば、蒸らしの段階での豆のふくらみ方が大きくなります。豆がふくらめばふくらむほど、美味しいコーヒーが飲めるぞという期待もふくらんでくるというものです。ネルドリップは先行投資をしてしまえば美味しいコーヒーが飲めるものです。毎日飲むのであればネルフィルターを定期的に交換するだけです。
ネルフィルターの片付け及び保管は淹れ終わった直後にすること
コーヒーが冷めてしまわないように5分以内に手早く片付けること。後でやろうと思うといやになってしまうばかりか、ネルフィルターの寿命を縮めることにもつながります。
※この記事はガジェ通ウェブライターの「mabumaro」が執筆しました。あなたもウェブライターになって一緒に執筆しませんか?
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