裏社会インタビュー:計画倒産を手助けする「女恐縮屋」に話を聞いてみた

どうもどうも、特殊犯罪アナリスト&裏社会ライターの丸野裕行です。

こんな仕事をしていると、様々なことを生業にしている人と出会うことが多いです。

ところであなたは計画倒産のときに社長の代わりに矢面に立って、ずっと土下座をしてやり過ごすという商売があるのをご存知でしょうか?

今回はその商売、恐縮屋(または土下座屋)に従事している女性Nさん(43歳)に、誰も知らない恐縮屋の世界を語っていただきましょう。

熟女モノのAVに出るか、風俗に行くか、恐縮屋になるか

丸野(以下、丸)「まず初めに、恐縮屋になったキッカケを教えてください」

Nさん「まず、夫のやっていたアパレル会社が、リーマンショックのあおりを受けて倒産しました。夫は資金繰りに苦しんだ結果、暴力団のフロント企業が経営している金融屋さんからお金を借りていたんです。それで、ヤクザが乗り込んできました。私が身を挺して、夫を守ったことで、幹部の方が“熟女モノのAVに出るか、風俗に行くか、恐縮屋になるか”と聞かれたんです。恐縮屋なんて聞いたこともなかったんですが、他の選択肢よりも稼げるということで、私は恐縮屋を選びました。あとでその幹部・佐々木さん(仮名)に聞くと、私の肝の座り方に一目置いたそうです。それで恐縮屋に誘ったと……」

丸「恐縮屋なんて専門用語、普通に暮らしていて、聞くことないですよね」

Nさん「佐々木さんに説明を受けると、恐縮屋というのは計画倒産などをするときに社長本人を逃がして、従業員としてずっと“申し訳ありません”と土下座をし続けて、やり過ごす仕事。頭に血が昇った債権者は、殴る蹴るの暴力をふるうわけです。それを、債権者に扮した計画倒産側のスタッフが、ビデオ撮影しておいて、“これは傷害事件になるぞ!”“債権どころの騒ぎじゃなくなる!”と言って、債権者を脅して、債権を放棄させるんです。恐縮屋の仕事は、熾烈を極めます。仕事をスタートする前に現場を見せてもらったんですが、恐縮屋の男性は動かなくなるほど痛めつけられていました」

丸「まるで、拷問地獄ですね

Nさん「彼は、自分の商売で借金を作り、恐縮屋として返済していくことを決めたといいます。でも、数件の債権者会議をこなしたときにはもう、網膜剥離で右目がほとんど見えず、歯はすべてなくなり、肝臓がボロボロになっていました

丸「怖くなかったんですか?」

Nさん「それは怖いですよ。怖いけど、土下座一発で100万円以上のギャランティーがもらえるとなると、やらない理由はないですよね」

丸「えっ! そんなに!

Nさん計画倒産する会社の社長というのは、銀行なんかの金融機関から融資を受けていたり、取り込み詐欺でお金を溜め込んでいたりするので、裏で手を回すフロント企業のギャラは数千万単位になります。依頼した場合の料金形態は、着手金を含めて、債務額の25%というのが相場ですね。でも、ヤクザですから、それ以上に“社長、あなたの居所を債権者にバラすよ”“詐欺だから警察に密告する”と脅迫することもあるので、多く取れれば取れただけ恐縮屋のギャラはあがります。さすがに体を張ってますから……」

丸「恐ろしい世界だ

Nさん「そこまで言われれば、あっけなく自分が取り込んだ金額の半分くらいをフロント企業に渡してしまうようです。私は担当外のことに関与はしたことないですけど、やっぱりヤクザの仕事だな、と。ヤクザを頼ってきた素人さんが経営している中小企業とか中小企業がターゲットになりますね。頼む方もかなりリスキーな事態を想定しておかないといけません。この仕事は、“諸刃の剣”ですから

丸「デビュー戦はどんな感じでしたか?」

Nさん「はじめては、計画倒産した工場の従業員に扮した仕事でした。中規模工場『F精機』の倒産劇でした。恐縮屋が活躍する場というのはかなりミクロなシーンばかりです。大企業は、顧問弁護士などの倒産管財人がいるので、債権者の窓口はそちらになります。通常は、債権者会議を開く旨を張り紙で伝え、債権者たちを集めて、土下座開始です。債権者側には、佐々木さんがいて、債権者に暴力をふるわせるわけです」

丸「どんなヒドイ目に遭いましたか?」

Nさん「床にひれ伏して、“申し訳ありません! 従業員として、大変ご迷惑をおかけしました!”と謝ると、そこら中から怒声の嵐です。“社長を出せ!”“社長はどこに行った!”“ぶち殺すぞ!”という声が会場を包みます。すると、佐々木さんが“従業員のおまえが連帯保証人になって、金返せ!”と、ゾロゾロと私を取り囲みます」

丸「うわわわぁぁ、怖い……

Nさん「そうすると、佐々木さんが先陣切って、私の頭を小突きます。それからは他の債権者が平手打ちしてきたり、詰め寄ってきたり、体を触られたりしますね。基本的に女性には暴力をふるってはきません。一番怖いのは、女性の債務者です。ヒールで顔をけられ、ベルトのバックルを打ちつけられたことがあります。手荒な債権者代理なんかがくると、警察に告訴して債権者本人に損害賠償請求します」

丸「ヤクザが警察へ……ですか?」

Nさん「こちらは謝っているだけなので、それに手を出せば暴行罪になるのは当然です。警察は、私が所属するフロントの味方ですよね」

丸「ほほ~、まあ、そうですよね」

Nさん「あと多いのは、レイプされかけることですかね。カメラで映像を収めているサクラもまったく止める気配がないんです。とにかく、男性が挿入しようとしてくるところまではビデオを回します」

丸「寸前じゃないですか

Nさん「そうですね。サクラは非情です、カメラ回しているだけ。でも、そのおかげで、土下座料100万円を受け取りました。現金を手にしたときには、なんともいえない快感がありました。それからは場数を踏んでいく日々。一度なんかは、会議が長引き、無理がたたって高齢の債権者が急性心筋梗塞を起こしてそのまま亡くなったこともありました。依頼者にそのことを話すと、大きな声でケタケタ笑ってます。“あぁ、これでうるさいのがひとり減った”と言って……」

いかがでしたか?
彼女は夫の借金を1年3カ月で完済したそうです。

ちなみにコイン投資やFXなど多種多様な業界に、恐縮屋のテリトリーは広がりをみせる一方だということでした

(C)写真AC

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