犯罪者インタビュー:「高齢者の金をパクる悪徳介護職員」に話を聞いてみた

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入所順番を早めたければ謝礼をよこせ

F氏「事務の仕事を進めると不正の手法がかなり理解できるようになってきました。例えば、【オムツなどの日用品を入れる業者を指定してリベートをもらう】【入所者の家族から備品の購入や食事負担費などを水増し請求して差額を着服する】【入所者にどんどん酒を飲ませ、病院と組んで“慢性アルコール中毒”との診断を下し、架空入院させて、リベートをもらう】【慰問歯科医と組み、不必要な義歯を入所者に購入させる】などがあります」

「そんな方法まであるんですか」

F氏「一番手がかからない手口が【入所順番の操作】です。共働き夫婦などが抱えてしまった親の介護の問題。金がかかっても施設に入所させたいが、入所者の順番待ちは数十番待ちというのがザラです。そこで僕の出番です。順番待ちを割り込む術があることを匂わせると、だいたいの家族が謝礼を用意してくれます。金額は平均10万弱多いときで30万円ほどを封筒に忍ばせてきます」

「そんなに?」

F氏「事務作業に関わった頃から1年半の間に200万円程度の不正利得を得ました。この頃になると、介護職万々歳という感じでしたね」

遺言状を書かせ、遺産相続する

F氏「それでも僕の欲望は止まりませんでした。次に頭に浮かんだのは、身寄りのない元商店主の入居者である河合ミチ(83才・仮名)さん。旦那に先立たれてから、ずっと独りです。それに認知症の初期症状も見受けられました。なんとか遺産相続できないだろうか……。僕は仕事そっちのけで、次の日から河合さんに憑りつきました。積極的に食事介助や散歩に連れ出し、誕生日にはプレゼントまで……。“僕のこと息子と思ってください”と涙を誘って、家族としての絆を深めることに集中しました」

「それ、ヒドいですよ」

F氏「そしてそれから半年後、情に流された河合さんは遺言状を書いてくれました。土地建物含めた総資産……9,000万の遺言状を達筆でしたためてくれました。まぁ、まだ未だに河合さんは死を迎えていないんですがね。ホームの窓際で庭を眺め、まるで息子でも呼ぶように僕にむかって声をかけてきます。まぁそのうち死んじゃいますから、気長に待ちますよ

いかがでしたか?
老いの弱みにつけ込んだ悪行の数々を語ってもらいましたが、最後にニヤリと笑った顔は非常に恐ろしかったです。
しかし、恐らく彼のような人間を頼ることになると思います。これを読んだあなたも、年老いたときには……。

(C)写真AC
       

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(執筆者: 丸野裕行) ※あなたもガジェット通信で文章を執筆してみませんか

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