ガジェット通信 GetNews

見たことのないものを見に行こう
体験を伝える―『ガジェット通信』の考え方
面白いものを探しにいこう 本物を体験し体感しよう 会いたい人に会いに行こう 見たことのないものを見に行こう そしてそれをやわらかくみんなに伝えよう [→ガジェ通についてもっと詳しく] [→ガジェット通信フロアについて]
ガジェ通制作ライブ
→ガジェ通制作生放送一覧

プラットフォーム化が進む中国の信用スコアサービス「芝麻信用」 (ジーマ信用) の今(インターネットプラス研究所)

プラットフォーム化が進む中国の信用スコアサービス「芝麻信用」の今

今回はインターネットプラス研究所の澤田翔さんからご寄稿いただきました。

プラットフォーム化が進む中国の信用スコアサービス「芝麻信用」 (ジーマ信用) の今(インターネットプラス研究所)

中華フィンテックとして話題に上ることの多い、信用スコアサービスの「芝麻信用」 (Zhima Credit)。2015年のサービス開始から4年が経過した現在は、芝麻信用は出会い系サービスや行政手続きなどのセンシティブな領域でのサービスを取りやめ、政府の信用評価システムの枠組みから外れたこともあり、シェアリングエコノミーや少額融資などの領域でアリババのプラットフォームを強化する方向で動いています。

芝麻信用とは

芝麻信用は、中国のIT大手企業の阿里巴巴集団 (Alibaba Group、以下アリババ) の金融部門子会社であるアントフィナンシャル*1 (Ant Financial Service) が提供する個人の信用度のスコアリングサービスです。アントフィナンシャルはスマホ決済サービスで有名な支付宝 (Alipay) も提供していて、芝麻信用は支付宝の一機能という位置づけです。

*1:『アントフィナンシャル』
https://www.antfin.com/index.htm

スコアリングにはアントフィナンシャルが保有するビッグデータが利用されており、このビッグデータは支付宝が利用できるアリババ内外のサービス、一例としてアリババのネットショッピング (淘宝網*2 : Taobao, 天猫*3 : T-mall) 、携帯電話の通話料金や公共料金の支払など支付宝の決済サービス、さらには支付宝から利用できるショッピングの後払いサービスやキャッシングなどの情報がベースになっています。

*2:『淘宝網』
https://www.taobao.com/

*3:『天猫』
https://www.tmall.com/

算定された自分のスコアは月に1度更新され、アプリで確認することができます。支付宝内でお金を借りたり保険に加入するには、芝麻信用のスコアが一定以上であることが求められるほか、第三者が提供するサービスにおいて、ユーザが任意で芝麻信用のスコアを提示し、そのサービスで特典を受けることができます。

芝麻信用のスコア

図: 筆者の芝麻信用のスコア履歴。「信用はゆっくり積み上げていくものです。よい習慣を維持してください」とアドバイスされています

アメリカが発祥のクレジットスコア

アメリカではクレジットカードの利用状況や医療費、家賃などの支払い状況は信用情報を取り扱う企業 (クレジットビューロー) に集められます。Experian*4, Equifax*5, TransUnion*6, Innovis*7 といった企業が有名です。これらの企業は顧客ごとに300点から850点のクレジットスコア (FICOスコアとも呼ばれる) を算出し、債権者や銀行などはこの値を取引の判断材料に利用しています。

*4:『Experian』
https://www.experian.com/blogs/ask-experian/credit-education/report-basics/my-credit-report/

*5:『Equifax』
https://www.equifax.com/personal/

*6:『TransUnion』
https://www.transunion.com/credit-score

*7:『Innovis』
https://www.innovis.com/personal/creditReport

支付宝のデータを基に350点から950点の信用スコアが算出される芝麻信用は、まさにスマホ決済版クレジットスコアといえるものでしょう。

中国の社会信用システムと混同が進む日本の報道

日本では、2015年12月にZDNetに掲載された山谷剛史さんの「中国の社会信用スコア「芝麻信用」で高得点を狙うネットユーザー*8 」という記事がおそらく最初に掲載されたものでしょう。この中で特に話題になったのが「北京空港の専用出国レーンが通れる」「シンガポールやルクセンブルグのビザがとりやすくなる」というもので、スコアがよい人が行政からも優遇されるという部分がとりわけ強調されていました。

*8:「中国の社会信用スコア「芝麻信用」で高得点を狙うネットユーザー」2015年12月15日『ZD Net Japan』
https://japan.zdnet.com/article/35074894/

中国国務院が2014年に発表した「社会信用システム構築プラン」(原文: 社会信用体系建設規画綱要*9 ) と芝麻信用の混同も見受けられます。政府が構築する信用システムは、企業や個人がおこした税金の未納や破産などを一元管理するもので、支付宝も金融サービスである以上は破産などの金融事故情報にアクセスすることはありますが、芝麻信用が社会信用システムとして運用されているわけではありません。芝麻信用のスコアによって飛行機の搭乗を拒否されたり社会保険が得られなかったりすることはありません。

*9:「国務院関于印髪/発社会信用体係/系建設 規劃綱要(2014—2020年)的通知」『中華人民共和国中央人民政府』
http://www.gov.cn/zhengce/content/2014-06/27/content_8913.htm

それどころか、2017年以降、中国の国務院は政府の社会信用システムのパートナーからアリババを含む民間企業を除外しました。民間が主導のスコアリングシステムでは、競合プラットフォームのデータが集められず網羅性に欠けるという判断からです。

日本での報道は、中国政府のデータベースの一環として芝麻信用があるという誤解がまま見受けられます。例えば「ヤフーが始める「信用スコア」の光と影~すべての日本人が格付けされる日*10 」という記事では、「政府が持つ国民の個人情報もそこに投入されている」と書いてありますが、政府のデータとして利用されているのは最高人民法院の「信用失墜被執行者リスト」や裁判所の経済紛争の判決データであり、日本で自己破産や民事再生手続きを行った場合に官報で告知されるものと同等のものであり、金融機関であればどこも当たり前のように収集している情報です。(自己破産した人はどこの国でもクレジットカードがつくれなくなります。ただし中国の信用失墜被執行者はもう少し範囲が広く、養育費の不払いなど、裁判の判決を踏み倒した場合もリスト入りします)

1 2次のページ
寄稿の記事一覧をみる

記者:

ガジェット通信はデジタルガジェット情報・ライフスタイル提案等を提供するウェブ媒体です。シリアスさを排除し、ジョークを交えながら肩の力を抜いて楽しんでいただけるやわらかニュースサイトを目指しています。 こちらのアカウントから記事の寄稿依頼をさせていただいております。

TwitterID: getnews_kiko

  • 誤字を発見した方はこちらからご連絡ください。
  • ガジェット通信編集部への情報提供はこちらから
  • 記事内の筆者見解は明示のない限りガジェット通信を代表するものではありません。
スマホゲーム タラコたたき