40代前半男性の所得の診断表(データえっせい)

40代前半男性の所得の診断表

今回は舞田敏彦さんのブログ『データえっせい』からご寄稿いただきました。

40代前半男性の所得の診断表(データえっせい)

 前回は,40代前半男性の所得の中央値を出しました。とても多くの方にご覧いただき,「職業別の未婚率」の記事を抜いて,本ブログのPV首位に一気に躍り出ました。90年代初頭に比して,所得が大幅にダウンしていることに驚かれたのでしょう。「自分もロスジェネなんでよく分かる」という声も多数でした。

 中央値(Median)というのは,値を高い順に並べたとき,ちょうど真ん中にくる値のことです。これより上なら半分より上,下なら半分より下,ということになります。2017年の40代前半男性の所得中央値は472万円ですが,私の所得はこれを下回っています。

 「自分の所得は半分より下」。これは分かり切ったことですので,さして驚きませんが,さすがに下位10%にも満たないとなると,気心も変わってきます。逆に中央値を上回っている人は,上位25%や10%のラインを超えているかしら,という関心があるでしょう。

 今回は,中央値とは別の分布値も出してみようと思います。そうですねえ。全体を6つのゾーンに分かつ,下位10%値,下位25%値,中央値,上位25%値,上位10%値を出してみましょうか。これにより,自分の所得が全体のどの辺かを知れる,やや詳細な診断表を作れます。

 中央値と同じく,他の4つの値も按分比例を使って計算できます。2017年の『就業構造基本調査』から,40代前半男性有業者(439万人)の所得分布を採取し,相対度数・累積相対度数の形に整理すると,以下のようになります。

http://www.stat.go.jp/data/shugyou/2017/index.html

診断A

 真ん中の相対度数(%)をみると,中ほどが厚いきれいなノーマル分布です。最も多いのは,所得400万円台となっています。一昔前の人からすれば「こんなに少ないの?」という印象でしょうが,今の当事者のわれわれからすれば何の違和感もありません。

 右端の累積相対度数から,下位10%値(累積相対度数=10)は200万円台前半,下位25%値(25)は300万円台,中央値(50)は400万円台,上位25%値(75)は600万円台,上位10%値(90)は800万円台の階級に含まれることが知られます。

 では按分比例を使って,目的の値を割り出しましょう。

下位10%値:
 按分比=(10.0-7.9)/(14.4-7.9)=0.324
 下位10%値=200万円+(50万円×0.324)=216.2万円

下位25%値:
 按分比=(25.0-20.9)/(37.4-20.9)=0.250
 下位25%値=300万円+(100万円×0.250)=325.0万円

中央値:
 按分比=(50.0-37.4)/(55.0-37.4)=0.717
 中央値=400万円+(100万円×0.717)=471.7万円

上位25%値:
 按分比=(75.0-70.0)/(80.7-70.0)=0.466
 上位25%値=600万円+(100万円×0.466)=646.6万円

上位10%値:
 按分比=(90.0-88.1)/(92.5-88.1)=0.439
 上位10%値=800万円+(100万円×0.439)=843.9万円

 こんな感じです。私の所得は中央値より低いのは前回の記事で分かりましたが,ここにて,さらに2つのライン(下位10%値,下位25%値)を得ることができました。うーん,自分の相対位置がより詳しく分かりました。

 これは全国の分布値ですが,言わずもがな,地域によって大きく違います。鹿児島で上位10%に入っていても,東京では中央値よりちょっと上という所ではないでしょうか。私は双方の生活を知っていますので,この温度差はよく分かります。

 同じやり方を適用し,47都道府県ごとに,40代前半男性の5つの所得分布値を出してみました。以下に,一覧表を掲げます。黄色マークは最高値,青色マークは最低値です。

診断B

 地域によって全然違いますね。所得600万円のアラフォー男子は,沖縄ではスターですが,東京では真ん中よりちょっと上という所です。沖縄で真ん中の人(290万円)は,東京ではプアの部類です。

 「私は全国の基準では**だが,今住んでいるX県では**だな」という読み方をすると,面白いでしょう。以下のようなグラフにして,自分の所得のヨコ線を引いてみるといいと思います。

診断C

 自分が属する,40代前半男性の所得水準の診断表を作ってみました。資料として使っていただければと存じます。

 大学の統計学の授業で,皆でコラボして,この手の作品を作るのもいいと思います。私は経験上知ってますが。カネの話となると,学生は目の色を変えて熱心に取り組むものです。

 按分比例は中高生でも理解できる概念ですので,学校の総合的な学習の時間の題材としてどうでしょうか。

 取り上げる題材というのは大事です。中学校の数学で,初歩的な度数分布の単元の際,面白くもない架空のテストの点数分布なんて出しても,生徒の目は引けません。自分の将来に直に関わる職業別の年収分布などを出すといいでしょう。そのデータは,官庁統計から簡単に引き出せます。教師たる者,政府統計サイト「e-stat」の使い方はマスターしておきたいものですね。
https://www.e-stat.go.jp/

 
執筆: この記事は舞田敏彦さんのブログ『データえっせい』からご寄稿いただきました。

寄稿いただいた記事は2019年2月4日時点のものです。

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