一度決めたことを「守る」ことで、「失う」ものとは?ーーマンガ『インベスターZ』に学ぶビジネス

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一度決めたことを「守る」ことで、「失う」ものとは?ーーマンガ『インベスターZ』に学ぶビジネス

『プロフェッショナルサラリーマン(プレジデント社、小学館文庫)』『トップ1%の人だけが知っている「お金の真実」(日本経済新聞出版社)』等のベストセラー著者である俣野成敏さんに、ビジネスの視点で名作マンガを解説いただくコーナー。今回は、三田紀房先生の『インベスターZ』です。

『インベスターZ』から学ぶ!【本日の一言】

こんにちは。俣野成敏です。

名作マンガは、ビジネス書に勝るとも劣らない、多くの示唆に富んでいます。ストーリーの面白さもさることながら、何気ないセリフの中にも、人生やビジネスについて深く考えさせられるものが少なくありません。そうした名作マンガの中から、私が特にオススメしたい奥深い一言をピックアップして解説します。

©三田紀房/コルク

【本日の一言】

「要するに、ルールをつくる国とルールを守る国の違いだ」

(『インベスターZ』第6巻credit.49より)

大人気マンガの『インベスターZ』より。創立130年の超進学校・道塾学園にトップで入学した主人公・財前孝史は、各学年の成績トップで構成される秘密の部活「投資部」に入部します。そこでは学校の資産3000億円を6名で運用し、年8%以上の利回りを上げることによって学費を無料にする、という極秘の任務が課されているのでした。

日本は文化的に「出る杭は打たれる国」

道塾学園を創設した藤田家の、現当主に会いに行った財前は、ベンチャー企業に投資することを進言します。提案は受け入れられ、藤田家は財宝を処分してつくった15億円を財前に託します。ところがこの時になって、財前は自分がベンチャー投資について全く知らないことに気づきます。困った財前に向かって、投資部のキャプテン・神代(かみしろ)が「投資部のOBで、ベンチャー企業を経営している“リッチーさん”に会いに行け」と命じます。

リッチーさんは、ロケット開発を行う会社を経営しています。訪ねてきた財前に、リッチーさんは「“宇宙開発”というと、国が国家事業としてイニシアチブを取っているかのような印象があると思うが」と話し始めます。「実際は日本では規制が多すぎて、ロケットを満足に打ち上げられないのが実情」なのだ、と言います。「政府は、宇宙事業を本気でやる気がない。だから国のバックアップは期待できず、投資をする人もほとんどいない」のだ、と。

「対するアメリカは、宇宙事業へのバックアップは官民ともに手厚く、テキサス州のように、無許可でロケットを打ち上げられるところすらある。この違いは結局、欧米はルールをつくる国であり、日本はルールを守る国であるところからきている。日本は、はみ出すことをよしとしないお国柄なのだ」と言うリッチーさん。財前に向かって、「だからオレもアメリカに行く」と告げるのでした。

現在は「ルールをつくる側に分がある」時代

今のような変化の激しい時代は、ルールをつくる側に有利なのは確かでしょう。「ルールをつくる/守る」というのは、「ルールを現実に合わせようとするか」、それとも「現実をルールに合わせようとするか」の違いです。

例えば最近、生まれた新しいサービスと言えば、ホテル・旅館業界の民泊サービスAirbnb(エアービーアンドビー)や、タクシー業界での配車サービスUber(ウーバー)、もしくは仮想通貨などが挙げられるでしょう。世の中を便利にするこれらのサービスは、すべてアメリカが発祥です。

ルールをつくることを躊躇しない国は、ルールからはみ出すことも恐れないため、こうした革新的なアイディアが生まれやすいのかもしれません。一方、日本はどちらかというと、こうした新しい流れを歓迎するよりも、既得権者が拒絶する力のほうが強いように感じます。それはルールからはみ出ることを恐れる気質が関係しているのではないでしょうか。

ルールをつくるか守るかは、ビジネスのライフサイクルと関係がある

実のところ、時代ごとにルールをつくる気質と守る気質の、どちらが優位に立つのかは、“ライフサイクル”と関係があります。ライフサイクルとは、ビジネスの寿命のことで、商品・事業・業態・会社・業界等々、それぞれにライフサイクルがあります。サイクルとは、だいたい以下の通りです。

(1)創業期→何もない状態から、ビジネスが起動に乗るまでの時期のことを指します。ここで大部分のルールを、必要に迫られて作成します。

(2)成長期→立ち上げたビジネスが軌道に乗ると、成長を始めます。状況に応じてルールも調整したり、入れ替えたり、つけ加えたりする必要があります。

(3)成熟・衰退期→成長も山場を超えると、やがて成熟期から衰退期へと向かいます。ここでは、ルールを守ることがメインになります。

会社のライフサイクルに関しては、社内で新しい事業を立ち上げたり、別の業態と入れ替えたりすることによって、寿命を長くすることが可能です。例えば創業以来、140年の歴史を持つアメリカのGEは、エジソンが興した会社です。最初は電気照明会社としてスタートしましたが、現在では電力・航空機・ヘルスケアが主力の多国籍コングロマリット(複合企業)となっています。

ビジネスの基本戦略は、ライフサイクルに沿って行う

この文章をお読みの方はぜひ、自社や自部署、自社商品等のライフサイクルが今、どの段階にあるのかにも注意を向けてみてください。基本的な戦略を、ライフサイクルに沿って行うようにすると、スムーズに動くことが多くなるのではないかと思います。

上記(3)成熟・衰退期の段階でも、そんな中でも新たな(1)創業期の種を創る側に回ることができたら、新たなステージでルールを創る側に立つことになります。

マンガ『インベスターZ』に学ぶビジネス 第38 回

俣野成敏(またの・なるとし)

30歳の時に遭遇したリストラと同時に公募された社内ベンチャー制度で一念発起。年商14億円の企業に育てる。33歳でグループ約130社の現役最年少の役員に抜擢され、さらに40歳で本社召還、史上最年少の上級顧問に就任。『プロフェッショナルサラリーマン(→)』および『一流の人はなぜそこまで、◯◯にこだわるのか?(→)』のシリーズが、それぞれ12万部を超えるベストセラーとなる。近著では、日本経済新聞出版社からシリーズ2作品目となる『トップ1%の人だけが知っている「仮想通貨の真実」(→)』を上梓。著作累計は42万部。2012年に独立、フランチャイズ2業態5店舗のビジネスオーナーや投資活動の傍ら、『日本IFP協会公認マネースクール(IMS)』を共催。ビジネス誌の掲載実績多数。『ZUU online』『MONEY VOICE』『リクナビNEXTジャーナル』等のオンラインメディアにも寄稿。『まぐまぐ大賞(MONEY VOICE賞)』1位に2年連続で選出されている。一般社団法人日本IFP協会金融教育研究室顧問。

俣野成敏 公式サイト

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