デュアルライフ・二拠点生活[4] 千葉県香取市 将来の移住を見据え、都心のタワマンから週末滞在型農園に土いじりに通う
共働きのYさん夫妻のお住まいは、超都心のタワーマンションの高層階。仕事のため利便性重視で山手線沿線の住まいを購入したものの、一生住むつもりではない。将来移住するならば野菜づくりの趣味くらいあったほうがいいと千葉県香取市に居住スペースと畑を借り、毎週末自分の畑の手入れに通う。いわばプレ移住デュアラーであるYさんのライフスタイルをご紹介しよう。連載【デュアルライフ(二拠点生活)レポート】
これまで、豪華な別荘が持てる富裕層や、時間に余裕があるリタイヤ組が楽しむものだというイメージがあったデュアルライフ(二拠点生活)。最近は、空き家やシェアハウスなどのサービスをうまく活用することで、若い世代もデュアルライフを楽しみ始めているようです。SUUMOでは二つ目の拠点で見つけた暮らしや、新しい価値観を楽しむ人たちを「デュアラー(二拠点生活者)」と名付け、その暮らしをシリーズで紹介していきます。
定年後の移住を視野に、趣味のアウトドアから土いじりにチャレンジ
東京都港区のタワーマンションの高層階に愛犬とお住まいのYさんご夫妻(写真撮影/内海明啓)
都心のタワーマンションに暮らし、ともに公務員として平日は仕事が忙しいというYさんご夫妻は、週末は千葉県香取市に借りた自分たちの畑で汗を流すという一面ももつデュアラーだ。お住まいは10年前に仕事のため利便性重視、資産価値が下がらないよう山手線駅最寄りで徒歩10分以内を条件に購入した港区のタワーマンション高層階。一方、今年4月から千葉県香取市が運営する滞在型市民農園「クラインガルテン栗源(くりもと)」を借り、ここにも自分たちの小屋と畑があるのだ。
休日は愛犬を連れてオートキャンプ、トレッキング、海や山などに出かけることが多かったお二人。「今は仕事があるから都心が便利でも、一生暮らすつもりはない」と、山か温暖な場所への移住を漠然と考えていた。東京都出身で特にほかに地縁があるわけではなく、八ヶ岳、鴨川、館山、などさまざまな場所にリサーチがてら出かけているうちに「定年後移住するなら、土いじりができたほうが楽しめそう」と思ったのが農業に興味をもつきっかけだったという。(写真撮影/内海明啓)
それまではベランダのプランターで野菜をつくる程度だったので、きちんと学ぼうと早速行動開始。まずは夫が一人で農業体験教室へ。千葉県千葉市まで隔週で1年通い、約25万円かけて農業の基礎を学んだのが3年前だ。その後、学んだことを実践する場を探し、たまたまテレビ番組で紹介されていた滞在型市民農園を知り応募するが落選。代わりに千葉県の山奥の畑を1年契約7万円で借りたものの、畑の規模も小さく植えるものも決められていて自由度もなく物足りなかった。そこで1年後のこの4月に再度応募し、約310平米の敷地に畑と宿泊も可能な休憩小屋がセットされたひと区画を借り、デュアルライフが始まった。畑110平米と休憩小屋35平米と庭のセットで約310平米ひと区画がY夫妻の専用スペース(写真撮影/内海明啓)
週末早朝に都心を出発し、愛犬と畑仕事に一日を費やし暮らしにメリハリ
クラインガルテン栗源は、畑スペースと休憩小屋のセットが全20区画、さらに共同の畑や集会所などの共用スペースもある香取市が運営するコミュニティだ。年間40万円と2.4万円の共益費(電気・ガスは別途)で、最長5年間借りることができる、いわばプチ農業体験スペース。農業に必要な肥料や耕運機などの工具も共用で用意され、地元の農家の方に農業指導をしてもらう機会もある。「道具を一からそろえる必要もなく、気軽にスタートできました。農業といえるほどの畑の広さではありませんが、季節ごとに植える物の場所や配分を計画するのが楽しいです」と夫。共同利用農業器具、ビニールハウス、洗い場など基本的なものは共用部分にそろっているため、初心者でも手軽に畑仕事をスタートしやすい環境だ(写真撮影/内海明啓)
現在のYさん夫妻の週末のライフスタイルはこうだ。愛犬を連れて土曜日早朝に都心を車で出発し、香取市に着いたら自分の庭で畑を眺めながら朝食。途中、昼食休憩をはさんで、午前と午後は畑仕事に集中。暗くなるまで作業をしたら、帰路の渋滞の様子を見ながら畑からの収穫物を持ってその日のうちにマンションに戻る。土曜日が雨なら日曜日、必ず週1回は訪れる。いざ畑仕事を始めると、それぞれの役割分担を黙々と集中してやる、というお二人。実は虫が苦手という妻の手つきもなかなかのもの(写真撮影/内海明啓)
自分たち専用の空間があることで、農地だけを借りていた昨年とは使い勝手が全く違うという。軽く調理して食事、農作業後のシャワー、休憩、必要な荷物を置いておくこともできる。「それでも、実はまだ宿泊したことはありません。その日のうちに都内に戻ったほうが、翌日も有効に使えるからです」。週末の楽しみができたことで、メリハリのある生活になったという。専用の室内は35平米とコンパクトながら約10畳のリビングと水まわり(キッチン・バス・洗面・トイレ)も一通りそろい、エアコン付き。休憩はもちろん、宿泊も可能な快適さだ(写真撮影/内海明啓)
移住お試し期間で畑やコミュニティを楽しみ将来の選択肢を広げる
Yさんの区画は全20区画並ぶクラインガルテン栗源のなかで一番共用スペース寄りのため、通りがかるほかの住人とも顔を合わす機会も多く、思いのほかコミュニケーションが増えたという(写真撮影/内海明啓)
毎週通うようになって、同じクラインガルテン栗源の住人たちとのお付き合いも始まった。畑仕事という共通の趣味があるため、年齢や職業や住んでいる場所など一切関係なく話が弾むという。「畑の先輩たちが多いので、親切にいろいろ教えてもらって助かっています」と夫。都心のマンション暮らしにはコミュニティがないし、移住していきなりディープなコミュニティに入れるかどうかの不安もある。そんななか、共通の趣味を通じた週末畑仕事のデュアルライフはまさにイイトコ取りで、コミュニケーションもライフスタイルも楽しんでいる。
農作物は生き物でどんどん育つため、連休でキャンプなどに遠出しても、その帰りには必ず通っているという。「大変ですが、世話する喜びもあります。農作物を上手に育てるコツは丁寧に世話することですから」と夫。今回の瑞々しい収穫物。初年から豊作で、家族では食べきれず職場やご近所の方々に配ったという(写真撮影/内海明啓)
農業の学校にまで通ったアウトドア派の夫に対し、実は虫が苦手だという妻。「虫は今も嫌いだけど、虫も農作業もだいぶ慣れました(笑)。作物は待ってくれないのでいつも追われて大変なことが多いですが、その分収穫の喜びは大きいですね」という。
移住を考えるために、自分たちに実際何ができて何ができないかを見極めたいというお二人。「定年はまだ先ですがそれに縛られず臨機応変に早めに探してもいいし、将来の可能性を広げておきたいですね」と夫。プレ移住デュアルライフによって、お二人の将来計画のイメージはより具体的になってきているようだ。お二人が畑作業中、愛犬は庭の一角に設けたドッグランで自由に過ごす。普段はマンション暮らしだけに土の上を走り回ることができてうれしそうだという(写真撮影/内海明啓)●取材協力
・滞在型市民農園 クラインガルテン栗源(平成31年度の募集は1月23日まで)
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